• TSRデータインサイト

米国の高級百貨店、バーニーズ・ニューヨークに破産報道

 ニューヨークに本店を構える老舗高級百貨店、バーニーズ・ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK, INC.、DUNS:100172422、本社:米国ニューヨーク州、以下バーニーズNY)が破産法の申請を検討していると欧米の複数のメディアが報じ、話題となっている。
バーニーズNYは1923年創業の老舗で、ニューヨークに複数店舗を構えるほか、米国主要都市に28店舗を展開。高いブランド力を誇るが、ECサイトとの競合による不振や、拠点のニューヨークの家賃高騰で経営不振に陥っているという。

今回の報道は「『破産法申請を検討している』と複数の関係者が明かした」という内容にとどまり、真偽は不明で動向は流動的だ。ただ、法的手続となれば日本の民事再生にあたる合衆国連邦破産法第11条(チャプター11)が有力視される。
バーニーズNYは、過去にも多店舗化の失敗で経営不振に陥り、1996年にチャプター11を申請している。その後、株主の変遷を経て、営業を継続してきた。

バーニーズJPはセブン&アイHDが子会社化

日本でのバーニーズブランドによる百貨店事業は(株)バーニーズジャパン(TSR企業コード:292436289、以下バーニーズJP)が展開している。ただ、ライセンス経営のため、バーニーズNYと直接の資本関係はない。
バーニーズJPは、(株)伊勢丹(現:(株)三越伊勢丹、TSR企業コード:295714654)とバーニーズNYの事業提携により誕生した。1990年に新宿に日本1号店をオープンしたのを皮切りに、現在は銀座、六本木、横浜、神戸、福岡の6店舗とアウトレット店6店舗の直営12店舗を展開している。
アメリカと同様、高級路線でファッション感度の高い層から支持を得て事業を拡大。この間、株主は当初の伊勢丹から変遷をたどり、2015年に(株)セブン&アイ・ホールディングス(TSR企業コード:296398926)が100%子会社化したことでも話題となった。

バーニーズNYが破綻した場合の影響は・・・

バーニーズJPの広報担当者は東京商工リサーチの取材に対し、「(バーニーズNYの破産法申請の報道は)現時点で確定的な事実ではなく、バーニーズNYから特段の連絡もない。また、コメントする立場でもない」とコメント。その上で、「バーニーズNYとは仕入や販売などの商品取引はなく、年に1度のライセンス料の支払いのみにとどまる。(仮に法的手続きを申請したとしても)経営に大きな影響を与えることはない」と話した。
一方、2019年2月期のバーニーズJPの売上高は前年度比2.2%減の208億1,000万円。損益は9年ぶりに経常赤字(▲5,800万円)を計上、最終赤字は償却関連とみられる特別損失も加わり10億2,900万円まで膨らんだ。
ECサイトなどに押され、店舗型百貨店が苦境に立たされているのはアメリカも日本も同じ構図だ。セブン&アイグループの信用を背景に、他の百貨店とは一線を画す独自の地位を築いているが、本業で今後どのように巻き返すか注目が集まっている。

バーニーズ・ニューヨーク銀座本店

バーニーズ・ニューヨーク銀座本店(撮影・東京商工リサーチ)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年7月19日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ