• TSRデータインサイト

成人誌が街から消滅の危機、大手コンビニも扱い中止へ

読者の高齢化も背景

 出版不況が言われて久しい。そんな中、成人誌が街から消滅の危機に瀕している。成人誌を扱っていた出版取次が次々に経営破たんし、読者は高齢化。インターネット配信の電子書籍の普及やコンビニの販売中止も追い打ちをかける。
書店の収益改善の問題や訪日外国人客の増加もあって、街で成人誌を見かけることはますます少なくなりそうだ。


成人誌を扱う書店減少の背景を、出版関係者は「大手取次は一定の規模がある書店しか取引しない。小さな店舗はコスト的に難しい」と説明する。そこに降って湧いたのがセブンイレブンやローソン、ファミリーマートが成人誌の販売を今年8月末で原則、中止という決断だった。
未成年や女性の目に触れさせない風潮に加え、「ラグビーワールドカップ2019」や「2020年東京五輪・パラリンピック」などで増加する訪日外国人への配慮も見え隠れする。
コンビニで扱われなくなると、成人誌を街で手にすることは難しくなる。

成人誌を得意とする出版取次の破たん

 成人誌を多く扱っていた出版取次の(株)太洋社(TSR企業コード:290893208、千代田区)が2016年3月、東京地裁から破産開始決定を受けた。
太洋社の破産後、小・零細書店は取次店の変更に難航した。そうした書店に救いの手を差し伸べたのが、日本雑誌販売(株)(TSR企業コード:291337848、板橋区)だった。ところが、日本雑誌販売も書店の販売低迷や廃業などで経営が悪化。ついに今年6月、破産手続きを弁護士に一任した。

成人誌低迷の背景

 出版関係者は、「長年、出版不況が叫ばれるなか、成人誌が一番早く事態が深刻化した。インターネット配信が広がり、まず若者が購入しなくなった」と不振の原因を分析する。
さらに、「読者の高齢化が顕著だ。50代以上の購読層の市場が急激に縮小した。(雑誌作成の)予算も削減され、質の悪い出版物も増えた」(出版関係者)と語る。成人誌を扱う書店の担当者は、「DVDやグッズに比べ本は利幅が小さい。成人誌の売場面積を縮小している」と書店側の事情を語った。
◇    ◇    ◇
成人誌の出版社は、デジタル化を進めている。週末の秋葉原で成人誌を探したが、簡単に見つけることはできなかった。成人誌の減少は、「印刷物」である雑誌や書籍、コミックの未来像かもしれない。
恥ずかしげに成人誌を裏返してレジで購入する若者の姿は、見かけなくなりそうだ。

未成年者禁止の張り紙(都内、一部加工)

未成年者禁止の張り紙(都内、一部加工)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ