• TSRデータインサイト

「演劇集団キャラメルボックス」、観客動員数の落ち込みで破産を決意

「演劇集団キャラメルボックス」の運営母体で、6月19日東京地裁から破産開始決定を受けた(株)ネビュラプロジェクト(TSR企業コード:292931123、中野区、加藤昌史社長)の破綻原因は、観客動員の減少だった。東京商工リサーチ(TSR)が独自に入手したネビュラプロジェクトの「破産申立書」でわかった。

 申立書によると、キャラメルボックスは1986年の第1回公演以降、着実に観客動員数を伸ばしてきた。だが、2001年頃から観客動員数に陰りが見えた中、脚本・演出担当の成井豊氏の執筆も進まず、劇団外の作家の作品にシフトしていった。これが成井氏の脚本・演出で呼び込んでいたファンの離反を招いた。さらに、追い打ちをかけるように2008年のリーマン・ショック、看板俳優の上川隆也氏の退団もあり動員数は一気に減少した。上川氏の出演舞台が、会社の運営経費を賄う歪な収益構造だっただけに、同氏の退団は大きな痛手になった。
 また、多額の費用を投じて「夏への扉」(著・ロバート・A・ハインライン)の公演権を獲得したが、東京公演中に東日本大震災(2011年3月)が発生。観客動員は予定の3割にも届かず、公演数の増加などで挽回策を図ったが浮上できなかった。こうした状況から2018年末、成井豊氏が加藤昌史社長にキャラメルボックス休団の意向を伝えたという。
 協議を重ねた上で2019年5月末での休団を決定すると同時に、債務を履行できないことから破産申立を決断した。なお、ネビュラプロジェクトの関連会社2社も破産開始決定を受けていたことがTSRの取材で判明している。

 東京地裁から破産開始決定を受けた2社は、公演で使用する楽曲の著作権管理のキャラメルボックスエンタテインメント(株)(TSR企業コード:294501363、中野区、加藤昌史社長)、劇団員のマネジメントを行う(株)ネヴァーランド・アーツ(TSR企業コード:294617353、中野区、同社長)。負債は両社とも100万円に満たない。あくまでネビュラプロジェクトに依存し、一部門の色彩が強い経営だったとみられる。


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ