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「ジャパンディスプレイ国内取引状況」調査

 融資資料の改ざん問題で関東地方整備局が行政処分を検討している(株)TATERU(TSR企業コード:872098940、渋谷区、東証1部)の宅地建物取引業法に基づく聴聞が6月21日、埼玉県内で開かれた。
関東地方整備局によると、TATERUは2018年7月頃までの約3年間にわたり、336件の売買契約を締結する際、買主が提出した融資書類を改ざんし金融機関に提出していた。
午後2時からの聴聞会は、TATERU側の代理人弁護士が間に合わず、約1時間以上を休憩にして到着を待つ異例の事態で始まった。

事実関係を全面的に認める

 TATERUの古木大咲・代表取締役社長は聴聞で、「(指摘された事実関係は)仰るとおり事実です。大変申し訳ございませんでした」とお詫びした。
関東地方整備局は、TATERUに宅地建物取引業法に基づく業務停止命令を出す方針だ。
一連の問題発覚で、TATERUは主力のアパートプラットフォーム事業の営業活動を自粛している。5月に発表した2020年12月期第1四半期(1-3月)の売上高は、前年同期から約7割減の46億6300万円。四半期純利益も60億4500万円の赤字を計上し、業績が急激に悪化。「継続企業の前提に関する重要な事象」を初めて記載した。
昨年12月にTATERUが発表した不正問題での特別調査委員会の調査結果によると、改ざんは「画像ソフトを使用し、数字を切り貼りして預金残高を書き換えていた」。
代理人弁護士は、「(先例をみても)業務停止処分ではなく、指示処分を求める。(不動産の売買部門以外も)業務停止処分となればオーナーも空室リスクが生じ、ローンの返済ができなくなるかもしれない」と弁明。さらに代理人は、業務停止処分を受けると「当社の存続が極めて厳しくなる」と破たんリスクまで言及した。

不動産向け融資審査の厳格化

 TATERUの預金残高データの改ざんの発覚を受け、融資していた西京銀行(本店・山口県)は4月、東京と大阪のアパートローン新規受付の停止を発表した。
投資用不動産の融資を巡っては、スルガ銀行が融資書類の偽造で2018年10月、金融庁から行政処分を受けている。また、今年5月、金融庁は投資用不動産向けに偽造された融資書類を見過ごした西武信金に業務改善命令を出している。
6月13日、東京地裁から破産開始決定を受けた(株)REFLECT PROPERTY(TSR企業コード:300388659、東京都港区)は、金融機関の不動産融資の審査が厳格化で投資家への販売が急激に落ち込んだ。このように金融機関を巻き込んだ相次ぐ不祥事は、不動産業界への信頼も根底から揺るがせている。

TATERUは今後、事業資金の確保に向け、販売用不動産の一括売却や連結子会社の株式譲渡など、経営再建への取り組みを急ぐ。
だが、改ざんによる信頼回復の道のりは険しい。先行きも流動的だ。経営環境が厳しさを増す中、身から出たサビとはいえ業務停止処分を受けるとTATERUの経営への影響は計り知れない。

TATERU関係者を待つ国土交通省の担当者(6月21日)

TATERU関係者を待つ国土交通省の担当者(6月21日)

 (株)ジャパンディスプレイ(TSR企業コード:294505385、以下JDI)の再建が迷走している。JDIは4月12日、台中連合から金融支援を受けると発表したが、台中連合の機関決定が当初スケジュールより遅延。5月30日、官民ファンドの(株)INCJ(TSR企業コード:033865507)などが、台中連合の支援を後押しするためJDIへの追加支援を決定した。しかし、6月17日に連合に参加していた台湾の電子部品メーカーTPK Holdings Co., Ltd.が金融支援から撤退する意向を表明した。
この間、JDIは白山工場の一時休業や1,200人規模の人員削減などのリストラ策を打ち出したが、JDIの取引先は情報収集に奔走する日々が続いている。
東京商工リサーチ(TSR)は、JDIと持分法適用の(株)JOLED(TSR企業コード:300600798)と直接取引のある1次、間接取引の2次の取引先数を調査した。取引先総数は仕入先合計が1,172社(重複除く)、販売先合計は143社(重複除く)だった。
JDIグループと直接取引している1次仕入先(199社)のうち、製造業が95社(構成比47.7%)とほぼ半数を占めた。1次仕入先の本社地は、東京都63社(構成比31.6%)を占め、一時休業が予定されている白山工場が所在する石川県は8社(同4.0%)だった。

  • 本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、ジャパンディスプレイとJOLED(以下、JDIグループ)の仕入先、 販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区、規模などを抽出、分析した。
  • 1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。

資本金別 1次仕入先は1千万円以上が約9割を占める

 JDIグループの取引先を資本金別でみると、1次仕入先(199社)では、1千万円以上5千万円未満が80社(構成比40.2%)で最も多かった。1千万円以上は176社(同88.4%)にのぼり、資本金が比較的大きな企業との取引が多い。

資本金別 ジャパンディスプレイ国内取引状況

従業員数別 1次仕入先は100人以上が3割超

 JDIグループの取引先を従業員数別でみると、1次仕入先(199社)では100名以上が66社(構成比33.1%)にのぼる。

JDIグループの取引先 1次先の最多業種は仕入・販売ともに製造業

 JDIグループの取引先を産業別でみると、直接取引のある1次仕入先(199社)では、最多は製造業の95社(構成比47.7%)で最も多い。以下、卸売業の39社(同19.6%)、サービス業他の27社(同13.5%)と続く。間接取引のある2次仕入先(998社)でも、最多は製造業で500社(構成比50.1%)だった。次いで卸売業の315社(同31.5%)、サービス業他の62社(同6.2%)。
販売先では、1次販売先(16社)のうち、最多は製造業の8社(構成比50.0%)。以下、卸売業の7社(同43.7%)、サービス業他の1社(同6.2%)だった。
産業を細分化した業種別でみると、1次仕入先の最多は、半導体製造装置製造業の12社(同6.0%)。次いで、受託開発ソフトウェア業の11社(同5.5%)、電気機械器具卸売業の10社(同5.0%)と続く。

産業別 ジャパンディスプレイ国内取引状況

取引先の本社地 1次仕入先・販売先ともに関東および大都市圏に集中

 JDIグループの取引先を本社所在の地区別でみると、1次・2次仕入先、1次・2次販売先ともに最多は関東で5割以上を占めた。
茂原工場のある千葉県は、1次仕入先が14社、2次仕入先が31社だった。また、白山工場を含めた「石川サイト」が所在する石川県は、1次仕入先が8社だった。

 JDIの金融債務にはINCJ(旧・産業革新機構)が連帯保証し、毎年夏に保証を含めたコミットメントラインの更改時期を迎える。JDIは、夏場に最大の得意先であるアップル社(米国)向けの製品の量産などで資金需要が活発になり、この時期はJDIの取引先からTSRに問い合わせが多く寄せられる。取引先の担当者は「夏の風物詩」と受け止めるが、例年こうした展開が繰り返されてきた。
だが、今年は様相が大きく異なる。「iPhoneXR」向けの「フルアクティブ」と呼ばれる狭額縁の液晶は、iPhoneの世界的な販売鈍化で受注が低迷。工場稼働率も低下し、そのたびに工場資産の減損を実施したものの、「総利益率(粗利率)はマイナス、自己資本比率は視力検査並みの水準」(JDIの取引先)と語られるほど悪化している。さらに、5月30日に公表されたINCJなどの追加支援は、対価として成長期待の高いJOLEDを手放すことを決めた。JDIの関係者は、引き続きJOLEDとはビジネスパートナーに変わりないことを強調するが、売れる資産の「売り尽くし」感は否めない。
「ジャパンディスプレイ」の商号で再出発した「日の丸」ディスプレイは、台湾と中国企業のコンソーシアム傘下に入ってでも企業存続の道を選んだ。だが、そのスキームも瓦解しつつある。
現社名となった2013年当時から、液晶産業の勢力図は大きく変わった。「日の丸であるが故に取引から撤退できない」、「事実上の政府支援がついており、通常とは異なる与信判断が必要」と漏らす取引先の担当者もおり、依然として国策会社のイメージが根底にあるようだ。
先行きが不透明なJDIの再建だけに、JDIは迅速かつ正確な情報開示が求められている。

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