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金融庁 経営者保証ガイドラインは「目利き力」向上に一定の効果

 4月11日、金融庁は「経営者保証に関するガイドライン」のアンケート結果を公表した。事業承継時に、新旧双方の経営者から保証を得る「二重徴求」では、「実質的経営者」の基準が地域銀行(以下、銀行)ごとに異なり、実務面で対応の難しさを浮き彫りにした。

経営者保証ガイドライン(以下、ガイドライン)は、2014年2月に始まった。経営者保証がリスクテイクの自粛を招いたり、早期の事業再生や事業承継を阻害している可能性があるとして、全国銀行協会と日本商工会議所が作成した。法人と経営者資産の明確な分離などを前提に、経営者の個人保証を外す。
ガイドラインに法的拘束力はないが、作成には金融庁もオブザーバー参加し、官民で普及に取り組んでいる。

ガイドラインのアンケート結果を公表した金融庁

ガイドラインのアンケート結果を公表した金融庁

 金融庁は、ガイドラインの普及状況の把握と、銀行との対話を深める目的で、2018年11月に105行を対象にアンケート調査を実施した。
アンケートでは、ガイドラインの活用促進が「顧客との信頼関係の強化に繋がった」との回答が全体の74%、「職員(行員)の目利き力の向上に繋がった」との回答が53%に達するなど、一定の成果がみられたとしている。
一方、ガイドラインの活用が「貸出金利の上乗せに繋がった」と回答した銀行は3%にとどまり、利益向上には必ずしも結びついていないようだ。

経営者保証の回収率 6割の銀行が1%未満

銀行は、「経営者の規律低下の防止」と「債権保全」の観点から、長年にわたり経営者保証を求めてきた。しかし、アンケートでは、貸出債権に対する経営者保証からの回収率は63%(回答32行)が1%未満にとどまり、必ずしも債権保全に繋がっていない。

「実質的経営者」の基準は各行まちまち

「二重徴求」で、旧経営者の保証を解除できない要因について、旧経営者が「(引き続き)代表権を持っている、または株式の一定割合を保有している」とする銀行が91%にのぼった。銀行は、代表権者の変更(追加)だけでなく、実質的な経営への関与度合いで保証を求めている実態が浮き彫りになった。
ただ、実質的に経営に関与していないと判断する基準については、「代表権がなく、株式保有割合が2分の1以下」、「旧経営者が法人から過度に借入していない」、「本社などへの訪問で旧経営者の経営への関与が伺われない」など、銀行によって異なっている。
商取引上の与信でも、まだ旧経営者の関与と資産状況はある程度留意が必要なようだ。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年4月15日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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