• TSRデータインサイト

山形の老舗百貨店「大沼」、新スポンサーが経営権を取得

 300年余の歴史を持つ山形県唯一の百貨店「大沼」を運営する(株)大沼(TSR企業コード:210002948、山形県)は3月22日、臨時株主総会と取締役を開催し、新スポンサーが経営権を取得したと発表した。
 臨時株主総会では早瀨恵三社長らを解任し、執行役員だった永瀬孝氏が大沼の代表取締役社長に就任した。
 新生・大沼は、「もう一度、原点に帰り、自らの足元を厳しく見つめ直し、収益力、財務力の良化を早期に実現することに努めます」とのコメントを発表した。


大沼(今年2月撮影)

大沼(今年2月撮影)

スポンサーはMTMから新スポンサーへ

 

大沼は消費低迷や競争激化などで経営不振に陥り、事業再生ファンドを展開するマイルストーンターンアラウンドマネジメント(株)(TSR企業コード:296291099、東京都、以下MTM)が2018年4月、スポンサーとして経営権を取得した。
 しかし、MTMの大沼に対する出資金の還流問題やMTMの資金繰り悪化を背景に、大沼の再建が難航していた。
 こうしたなかMTMに出資金を融資していた金融会社が、MTMが返済遅延した融資債権を大沼の執行役員らが役員を務める大沼投資組合(株)(TSR企業コード:034250743、山形県)に譲渡した。この融資債権の担保が大沼の全株式だったため、経営権がMTMから大沼投資組合に移った格好だ。
 大沼投資組合はNN(株)の商号で設立され、大沼の元社長だった長澤光洋氏が代表取締役を務めていたが2019年3月14日に辞任。同時に商号を大沼投資組合に変更し、永瀬氏らが役員に就任していた。

 MTMの早瀨社長は3月25日、東京商工リサーチの取材に応じ、「(MTMは)大沼のスポンサーとなってから事業再生や活性化に取り組み、今月中に大沼へ資金投入するスキームを実行する計画だった」と話した。
 さらに早瀨社長は、「機密漏えいなどの妨害行為により、MTMの資金調達が不調になった不法行為が存在する。今回、大沼のスポンサーとなった大沼投資組合の経営陣が妨害行為に関与していると認識している。法的処置を含めた断固たる措置を取る」とコメントした。
  一方、大沼の担当者は「今回の一連の流れで大沼の長澤元社長や再生を手がける(株)創発ビジネスパートナー(TSR企業コード:028904478、東京都、代表取締役:野又恒雄氏)などに相談や支援をしてもらった。妨害が何を指すかわからないが、ありのまま正直に関係者へ話をさせていただき、応援を頂いた」と妨害を否定した。なお、大沼によると、野又氏は大沼の取締役に就任している。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年3月26日号掲載「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ