• TSRデータインサイト

プレッツェル店「アンティ・アンズ」、富士急ハイランド以外の店舗をすべて閉店

 一世を風靡した米国発のプレッツェルチェーン店「アンティ・アンズ」。各地の駅ビルやショッピングモールなどに出店していたが、1月末で富士急ハイランド(富士吉田市)内の店舗を除いてすべて閉店した。若者を中心に人気を誇ったアンティ・アンズに何が起きたのか。東京商工リサーチが迫った。

新会社を設立、別業態に注力

 アンティ・アンズを運営するプレッツェルジャパン(株)(TSR企業コード:298288311、港区、以下プレッツェル社)によると、今後は新規出店の予定はなく、「当面、フランチャイズの富士急(ハイランド)のみ営業」と規模縮小を明らかにした。

 一方、プレッツェル社の経営陣らは2016年に別の飲食チェーン店を運営する会社を設立していた。17年以降、新業態の店舗を展開し、19年2月までに首都圏を中心に9店舗と出店を加速させている。この会社にプレッツェル社の従業員を移し、「順調な新業態の事業に注力する」(プレッツェル社)という。

一時は30店舗を展開

 プレッツェル社の運営するアンティ・アンズは、2010年に日本第1号店をオープンした。ショッピングモールやアウトレットモールなどに積極的に出店し、若い世代やファミリー層を中心に人気を広げていた。ピーク時の14年には北海道から九州まで全国約30店舗を展開していた。そして、プレッツェルブームが落ち着くと不採算店を見直した。17年末は20店(プレッツェル社ホームページより)で営業を継続していた。
だが、18年に入り多くの店舗が入居していた各地のショッピングモールとの賃貸借契約が終了した。「売上を確保できていた店舗も他のスイーツ店が優先出店し、契約が更新されないケースが相次いだ」(プレッツェル社)という。こうして19年1月までに首都圏の3店舗も閉店し、2月に入るとFC店の富士急ハイランド店を残すだけとなった。

テナントに厳しい契約形態

 路面店の出店契約は、一般的にオーナーとテナント間で借家契約が交わされる。だが、ショッピングモールは5年間の定期借家契約となるケースが多い。プレッツェル社の担当者は、「大手のファストフードやコーヒーショップのような人気店は別として、弊社のような業態はモールさんが更新を認めなければ5年で撤退するしかない」と淡々と説明した。
集客力の高い人気モールは、入居を希望するチェーン店が順番を待っている。さらにテナントには“旬”が求められる。一時的なブームではテナント更新は難しいようだ。
プレッツェル社は、「今後も事業を維持できる体制だった」と語る。その一方、「ショッピングモールに出店を進めたポートフォリオに反省すべき点があった」と語った。
一時期は首都圏の主要な駅ビルで目にしたアンティ・アンズ。「今後も市場から必要とされる機会があれば再び出店を検討したい」と担当者は前向きに話す。出店先との契約は、長期的な視野に立った店舗運営が必要なことが教訓となった。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月5日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)


 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

建材販売業の倒産 コロナ禍の2倍のハイペース コスト増や在庫の高値掴みで小規模企業に集中

木材や鉄鋼製品などの建材販売業の倒産が、ジワリと増えてきた。2025年1-7月の倒産は93件で、前年同期(75件)から2割(24.0%)増加した。2年連続の増加で、コロナ禍の資金繰り支援策で倒産が抑制された2021-2023年同期に比べると約2倍のハイペースをたどっている。

2

  • TSRデータインサイト

「転勤」で従業員退職、大企業の38.0%が経験 柔軟な転勤制度の導入 全企業の約1割止まり

異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした退職を、直近3年で企業の30.1%が経験していることがわかった。大企業では38.0%と異動範囲が全国に及ぶほど高くなっている。

3

  • TSRデータインサイト

女性初の地銀頭取、高知銀行・河合祐子頭取インタビュー ~「外国人材の活用」、「海外販路開拓支援」でアジア諸国との連携を強化~

ことし6月、高知銀行(本店・高知市)の新しい頭取に河合祐子氏が就任した。全国の地方銀行で女性の頭取就任は初めてで、大きな話題となった。 異色のキャリアを経て、高知銀行頭取に就任した河合頭取にインタビューした。

4

  • TSRデータインサイト

ダイヤモンドグループ、複数先への債務不履行~蔑ろにされた「地域イベントの想い」 ~

ライブやフェスティバルなどの企画やチケット販売を手掛けるダイヤモンドグループ(株)(TSRコード:298291827、東京都、以下ダイヤモンドG)の周辺が騒がしい。

5

  • TSRデータインサイト

2025年1-8月の「人手不足」倒産が237件 8月は“賃上げ疲れ“で、「人件費高騰」が2.7倍増

2025年8月の「人手不足」が一因の倒産は22件(前年同月比37.5%増)で、8月では初めて20件台に乗せた。1-8月累計は237件(前年同期比21.5%増)に達し、2024年(1-12月)の292件を上回り、年間で初めて300件台に乗せる勢いで推移している。

TOPへ