• TSRデータインサイト

「建設業界、M&Aのピークは2021年」日本M&Aセンター三宅卓社長 独占インタビュー(前編)

 M&Aの市場が拡大を続けている。2017年の日本のM&A件数は3,050件(2018年版中小企業白書、(株)レコフデータより)と過去最高となった。後継者がいない中小企業の事業承継や事業規模の拡大、海外進出への足がかりなど、ニーズは様々だ。
 東京商工リサーチ(TSR)は、中堅・中小企業に特化したM&A仲介の(株)日本M&Aセンター(TSR企業コード:292665962、千代田区、東証1部)の三宅卓社長に業界の課題と今後の展望を聞いた。

-現在の業界のトレンドは?
 2つの大きな波が来ている。1つは事業承継型のM&Aの波。団塊の世代が70歳を超え、後継者不在率が66%を超えている。今、まさに後継者問題に差し迫っている企業が爆発的に増えている。それにも関わらず、後継者がおらず、10年間で83万社が減少するという調査もある。約400万社のうちの83万社。このため、国や経済産業省をはじめ、地方創生を合言葉に中小企業を救っていこうという動きがある。こうした状況で事業承継型が非常に増えているというのが1つの大きな波だ。

-もう1つの波は?
 もう1つは「就業人口が激減する」というもの。20~64歳が、2000年に約8,000万人いたのが、2025年に6,600万人、2060年には4,400万人にまで減少するという。働く人が約半分になる。ということは、モノを買う人も半分になってしまう。「家を買う」、「車を買う」、「洋服を買う」など、その行為は20~64歳が中心。モノを作る人が半分、モノを買う人も半分になるということは極論を言えばGDPが半分になる。輸出・輸入を考慮する必要はあるが、GDPは少なくとも激減する。そうすると企業の数も激減する。実際には、強いところが弱いところを買収する形で「業界再編」が起こるだろう。すでに再編が多く起こっているのは、ドラッグストア、調剤薬局を皮切りに、建設業、IT・ソフトウェア関連。さらに食品業。これらの業界は再編の波が起こっている。しばらくはこの波が続くだろう。

日本M&Aセンターの業績推移(単位:百万円)

日本M&Aセンターの業績推移(単位:百万円)

-M&Aが顕著な業種は?
 建設業だ。ただ、東京五輪のあと1年ぐらいが(M&Aの)ピークだと思う。M&Aが盛んで、建設業だけでなく周辺業種も含めて非常に活況を呈している。今は仕事があり、技術者が足りないので買収ニーズが強い。一方、後継者不在による譲渡ニーズも強い。譲渡を希望する場合、買い手が豊富にいるので会社は売りやすい。だが、東京五輪が終わって1年ぐらいの後処理期間を挟んだ後は、民間も公共もかなり冷えむと予測する。仕事が減るため、建設業界のM&Aは激減していくだろう。「売る」のも、「買う」のも、東京五輪プラス1年ぐらい。2021年ぐらいまでがピークだろう。

-建設業以外でM&Aが顕著な業種は?
 製造業も多い。これから自動車関連業界のM&Aが増えていくと思っている。自動車の電動化が進めば使用する部品が減る。海外移転も進んでいく。メーカーが海外に行っても、下請けは簡単に海外移転できない。海外展開している企業の傘下に入るのも有効な手段となる。ただ、自動車産業はまだこれから。
 ソフトウェア会社は業態が古く顕著だ。オフィスコンピュータ時代の人がソフトウェア会社を作って、今、65歳とか70歳になっている。こういう人たちは、新しいスマホの時代に対応できなかったり、クラウドに対応できないということで非常に困っている。片やフィンテック企業やクラウド系の会社は技術者不足なので、そういう会社を買収し、「技術者を手に入れたい」、「得意先を手に入れたい」と思っている。M&Aも熾烈になっている。
 また、就業者人口が激減している中で、働き手が得られない業種は、M&Aの増加が顕著だ。例えば、レストランチェーンや居酒屋チェーンなどの外食産業や運送、印刷は人手が確保できない。M&Aが増えている。

-病院・介護業界のM&Aの背景は?
 病院の背景は2つあり、1つは後継者不足。ご子息が医師になっている場合も多いが、後を継がないことも多い。というのも、病院経営と医療の追求は両立しづらいからだ。息子が医者になっていても、医療の道を進みたいという意思が強い場合は、「高度医療をやりたい」とそのまま大学に残ったり、「自分で(患者さんの)ケアをやりたい」とクリニックを開業するケースも多い。
 もう1つは、経営が難しくなっている点。レセプト(診療報酬)点数が下がっている。一方、病院は設備投資が増えている。清潔感のある病院じゃないと患者が来ない、高度医療機器、CTとかMRIも必要になっている。設備投資は増える一方で、診療報酬が下がっているので経営は厳しい。2つのこと(経営と医療)を両立させることは非常に難しい。
 医師は“医療のプロ”ではあるが必ずしも“経営のプロ”ではない。昔は、診療報酬が十分に入ってきたので、医療のプロであれば経営も伴っていた。きちんとした医療をしていたら自然と儲かって両立できていたが、今は難しい時代になった。今は経営の能力も問われる。両立は難しいと判断し、経営能力のある大手の傘下に入って、「医療に特化していきたい」というケースがある。反対に大手は病院を多数買収してスケールメリットを出していかないと、なかなか採算が合わない。こうした背景で病院(のM&A)は増えている。
 介護も同様だ。人手不足やヘルパーの賃金が低いなど劣悪な環境。車両やロボット化など積極的な設備投資が必要となり、スケールメリットを追求していかなくてはならない。

(三宅社長、近著「後悔を残さない経営」を手に/TSR撮影)

(三宅社長、近著「後悔を残さない経営」を手に/TSR撮影)

(次号へ続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月1日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃 ~ 踏み切れない抜本再生、施主の権利保護も重要 ~

コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。

2

  • TSRデータインサイト

倒産と無縁の税理士業界に異変、2026年上半期は4件発生 粉飾は詐欺罪も、コンプラ違反と健康問題がリスクに

過去、税理士事務所の倒産は半年で、概ね1~2件にとどまっていた。景気状況に相関せず、倒産と無縁の税理士業界だったが、2026年上半期(1-6月)はすでに4件発生した。

3

  • TSRデータインサイト

エブリライブの元従業員、「突然の解雇」に困惑

6月初旬から連絡が取りにくくなっているライブ配信のエブリライブ(株)(東京都港区)が、同時期に大半の従業員を解雇していたことがわかった。  解雇を通知の際、エブリライブ側は従業員に「破産予定のため」と説明したという。解雇された元従業員が東京商工リサーチの取材に応じた。

4

  • TSRデータインサイト

2026年上半期「医療機関」倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、「後継者難」は最多

医療機関の倒産が止まらない。2026年上半期(1-6月)に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は、38件(前年同期比15.1%増)と大幅に増加した。上半期では、2006年以降の20年間で、2024年と2025年の33件を上回り、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準となった。

5

  • TSRデータインサイト

愛媛県のいよぎんHDと愛媛銀が経営統合へ  メインバンク取引社数 金融Gでは国内21位に

愛媛県内にある企業のメインバンクシェア57.5%(県内メインバンク取引社数1万966社)の伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングスと、県内2位で18.5%(同3,542社)の愛媛銀行が、7月24日開催の取締役会で経営統合を付議することを発表した。

TOPへ