• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

再生ファンド「MTM」の早瀨社長、現状を語る

 家電量販店の「ラオックス」やゴルフクラブメーカーの「本間ゴルフ」など、多くの事業再生の実績があるマイルストーンターンアラウンドマネジメント(株)(TSR企業コード:296291099、千代田区、以下MTM)。最近では山形県の老舗百貨店「大沼」や岩手県の旧中三盛岡店を引き継いだ商業施設「ななっく」、箱根の老舗旅館「俵石閣」など、各地の有力な百貨店やホテルの再生を手がけている。
昨夏から、MTMの様々な情報が流れていた。MTMの早瀨恵三社長は東京商工リサーチ(TSR)の単独インタビューに応じ、現状と今後の展望を語った。
早瀨社長は、「(今は)言えないことが多い」と慎重に言葉を選びながら口を開いた。百貨店「大沼」については、「店舗運営側とMTMで意思疎通がうまくいかず、再建が遅れている」と不振を認めた。今後のファンド運営については、「百貨店の再生案件の新規をやりたい」と、現状の脱却に向けた展望を語った。


事業再生の遅れの理由

MTMが支配権を持つ主な再生案件は、百貨店の(株)大沼(TSR企業コード:210002948)、商業施設のななっく(株)(TSR企業コード:172604915)、箱根の旅館・俵石閣の俵(ひょう)石(せき)ホテルアンドリゾート(株)(TSR企業コード:300294689)、「ザ・ニューホテル熊本」を運営する熊本駅前ビル(株)(TSR企業コード:910198098)など。兵庫県の百貨店(株)ヤマトヤシキ(TSR企業コード:670003867)は共同投資案件だ。
早瀨社長によると、MTMの事業再生に向け投資残高は現在60億円超。このうち、MTMの自己投資が20~30億円で、投資家から資金を得ているファンドは30~40億円程度という。
早瀨社長は、「詳細は控えるが、環境が変わり、人員を縮小した」とMTMの現状を話した。
問い合わせの多い不動産の情報は、「事務手続き上の問題」と説明。大沼については、「事業改善プログラムを用意しているが、実行できていない。大沼の幹部とMTMの連携がうまくいかず、機能不全に陥った時期もあった」と不振の理由を述べた。
ななっくについては、「我々は盛岡を重要視している。建物(の規模が)が大きく収支は取り辛いが、再開発などを進めたい」と積極的に再生にしていく姿勢を示した。
俵石閣は、「今年1月からホテル運営を他社に任せ、持株比率も6割まで落とした。稼動率も上がっており、改善していくだろう」と経営の枠組みの変更を明らかにした。
熊本駅前ビルは「売却の方針」。ヤマトヤシキは「(再生を)主導しているラオックスと連携して進めていく」と答えた。

早瀨社長は、「我々の方針ははっきりしている。地方都市に拠点を設け、浮上させることが狙いだ。今後は百貨店の再生、特に新規案件に力を入れたい」と力を込めた。
経営不振に陥っている地方の百貨店は多い。だが、事業再生に実績を残しても、現場には現場の事情もあり、計画通りに再建が進んでいない案件もある。
MTMがこれまでの事業再生の経験をどう活かし、今後に向かうのか注目される。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年2月1日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

 TSR情報とは

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ