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地域包括ケア「周知不足」ツクイ、津久井宏社長が課題提起(後編)

-現状、介護業界全体のトピックスは

介護保険法の改正は5年に1度、介護報酬の改定は3年に1度行われるが、今年、新たな改正介護保険法が施行され、新報酬制度もスタートした。(制度の開始から)18年が経ち、改めて“これまでの”介護保険制度を大きく見直す時期に来ていると感じる。時代に合わせアップデートすべき内容もある。次の改正、改定に向けた取り組みはすでに視野に入れている。

-具体的には

今回の介護報酬改定で、私たちが提案した要介護者の同居家族に対する家事の補助は、結局、厚労省から適用範囲外とされた。例えば、要介護のおばあちゃんと自立のおじいちゃんが夫婦2人で暮らしている世帯。おじいちゃんがいくら自立できても、足腰が弱くなると食事や洗濯に時間や相当の体力を要する。そういう場合でも、ヘルパーさんは基本、おばあちゃんの食事しか準備できない。“ついでに”おじいちゃんに同じ献立を提供すると、国は「おじいちゃんの分はすべて実費で、別々に料理を作ってください」という。洗濯等、他の家事でも同様だ。非効率で、利用者の視点にも欠けている。引き続きサービスの必要性を訴えていく必要がある。


-介護報酬改定での課題は

社会保障全般でみると、年金・医療・介護の三本柱で”三大消費項目”というイメージすら持たれている。「社会保障に(予算を)充てすぎ」という風向きは依然として強く、さらに介護は医療ほど専門性が数値化されていない分、理解を求めるのに難しい面がある。生活に即した問題であるのに、肩身は狭い。そこは日々の業務の中で、仮説と検証を繰り返し、データを積み上げていくしかない。

インタビューに応じる津久井宏社長

インタビューに応じる津久井宏社長

-道のりは険しいか

“公のお金”が入る分、私たちも皆さんに「なるほどね」とご納得頂けるストーリーを示さないといけない。これまでも相応の場面で大学教授など学識者を交え、効率性を鑑み、サービスの必要性を検証してきた。一つひとつ研究を積み重ね、「科学」として介護を育てていく。ただ、国と対立しても意味がない。しっかりした論拠を提示し、介護業界が一丸となって世論を味方につけないと前には進めない。

-地域包括ケアシステム(※)を積極的に展開している。現状での課題は

現在、北海道から九州まで全国23カ所で自社のエリアサービスコーディネーターを置き、地域包括ケアに携わっている。2025年までには80カ所まで拡大する方針だ。やはり地域で支援を必要とする高齢者の情報把握は、周知不足の面が否めない。いくら、(要支援者の)個人情報を医療機関などと共有しているとは言え、今、本当に支援を必要とする人が地域のどこにいるのか、もっと早く相談を受けていれば(認知等)症状が深刻化しなかったというケースもある。役所に行って初めて「こんな制度があったのか」と。ご本人や関係機関の機会損失を防ぐためにも、もっと地域包括ケアシステムとは何かを広く知ってもらうことが必要だ。


-周知不足の解消に向けた策はあるか

行政の事業である以上、周知するための機会や手段、予算は限られる。地方部だったら近所付き合いも残っていて目が届く分、高いレベルで要支援者を把握できる。でも、都市部は難しい。首都圏など近隣住民のつながりが希薄化しているような地域もある中で、行政担当者に(要支援者の)把握を任せるのも酷な話。テレビやラジオ番組での広報もなく、ご本人やご家族も「そんな制度知らないよね」となる。でも、逆に今の時代、友人知人の方が会話やSNSを通じて知識は共有できる環境にある。今、働く人の10人に1人が介護、医療関係者という状況になりつつある。草の根的な周知を行うしかないだろう。


-利用者側の視点に立った取り組みが目立つ

“現場視点”の社風が自ずとそういう風土を作っているのだろう。ツクイは役員の大半が現場経験者。なので、品質については非常にうるさい。デイサービスで提供する食事もすべて各個店の手作りだ。会社として地産地消を、と指示しているわけではないが、お客様の満足度を考えた結果そうなっている。これを外注の弁当にして、適温に温度管理して提供したとしてもやはりお客様にはウケないだろう。一食提供で、大量に作るわけでもない。だから購買コストも大きい。さらに、人手不足のこの時代、調理職員の確保も困難。でも、満足度を重視する以上、継続してやっていくほかない。


-「健康寿命」が近年フォーカスされている

個人差はあるが、高齢化に伴う要介護状態は1人当たり平均10年、というデータも出ている。日本では、これまではただ慣習的に「長生きしよう」という抽象的な話で済まされてきた。本当にそれでいいのか。どのように晩年を生きたいのかをご本人がしっかり意思表示しなければならない時代になった。在宅介護でも「家にいるときに、これができるように頑張っていきましょう」という動機づけをしっかりやらなければならない。
団塊の世代の人たちが75歳になるのが2025年。彼らが後期高齢者になったとき、自分自身で「私は医療を特化したい」、「健康寿命に特化させたい」と自分で情報をキャッチし、選択できるよう私たちもそういう選択肢にフィットした提案をしていきたい。

国の一般会計のうち、約3分の1を社会保障費が占める。人口高齢化で社会保障は年々増大している。一部では大幅な抑制を求める声もある。津久井社長は「介護は医療に比べて歴史も浅く、サービスが数値化されにくい」と介護報酬の置かれている現状をシビアに分析する。一方、現行の介護保険制度は「利用者の視点が不足」と国にも変化を望んでいる。取材の終盤、私たちに語りかけた「問題点は山積だが、一つひとつデータを積み重ね、私たちが国に改善を呼びかけるしかない」との一言は“現場をよく知る”津久井社長の立場から自ずと発せられた心の声ではないだろうか。
※地域包括ケアシステム:地域の高齢者の総合相談や介護予防、保健医療を支援する制度。拠点となる「地域包括支援センター」(市町村が設置主体、民間企業も運営受託を行っている)に社会福祉士らを配置し、支援が必要な高齢者の情報を管理する。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年12月14日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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