• TSRデータインサイト

2019年に周年記念を迎える企業、創業100周年は住友商事など全国で2160社

 2019年に創業100周年を迎える企業は全国で2,160社ある。100年前の1919年(大正8年)は第一次世界大戦の講和会議「パリ講和会議」が開かれ、戦後処理が話し合われた年である。
 創業100周年は、総合商社の住友商事(東京都)、「ホクレン」で知られるホクレン農業協同組合連合会(北海道)、光学機器のオリンパス(東京都)、大手運送のヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(東京都)、ゼネコンの前田建設工業(東京都)、セラミックメーカーの日本碍子(愛知県)、化学品メーカーのダイセル(大阪府)、ホームセンターのDCMホーマック、食品卸の国分関信越、建設機械のタダノなど、有力企業が顔を並べる。
 同400周年は、書店の帯伊書店(和歌山県)と清酒メーカーの堀口酒造(福井県)の2社。
同300周年は、焼酎の若松酒造(鹿児島県)、清酒メーカーの油長酒造(奈良県)の2社。同200周年は、容器メーカーの石塚硝子(愛知県)など25社。創業50周年は2万6,684社だった。

  • 東京商工リサーチの企業データベース(約310万社)から、2019年に創業100周年など「周年」を迎える企業(個人企業・各種法人を含む)を抽出し、分析した。50周年以外は、100周年単位でまとめた。
  • 2019周年企業数

    2019周年企業数

周年企業 最古の400周年企業は帯伊書店と堀口酒造

 2019年に創業から節目の年を迎える周年企業(50周年以外は100年単位)で、最古は創業1200年の宗教法人、次いで600年も宗教法人が周年を迎える。
 企業として最古の周年企業は、創業400年の帯伊書店と堀口酒造の2社。帯伊書店は和歌山県内で最古の書店。堀口酒造は福井県の名酒「鳴り瓢(なりひさご)」の酒蔵として知られる。
 次いで、鹿児島県内最古の焼酎メーカーの若松酒造、奈良県の清酒メーカーの油長酒造の2社が創業300周年で続く。
 200周年は、容器メーカーの石塚硝子(愛知県)、百貨店の藤崎(宮城県)、寝具販売の布屋商店(富山県)、清酒メーカーの宮尾酒造(新潟県)など25社。
 50周年は自動車部品のアイシン・エィ・ダブリュ(愛知県)、リース業の東京センチュリー(東京都)、芙蓉総合リース(東京都)、興銀リース(東京都)など、2万6,684社が迎える。

主な周年企業

産業別周年企業 製造業が周年企業の中心

  周年企業を産業別でみると、創業50周年は建設業が構成比40.5%(1万831社)で最多。次いで製造業の同15.2%(4,069社)、サービス業他の同13.7%(3,680社)の順。
 100周年は、トップが製造業の同29.6%(640社)で、建設業は卸売業、小売業に次ぐ4番目。200周年、300周年では、ともに製造業が中心だった。

主な周年企業

地区別 100周年は関東が最多の631社

 地区別では、50周年は関東が9,239社(構成比34.6%)で最多。次いで、近畿が4,282社(同16.0%)で続く。100周年も、トップは関東の631社(同29.2%)。次いで、近畿が468社(同21.6%)、中部が353社(同16.3%)の順だった。
 都道府県別では、50周年は東京都が3,247社(同12.1%)、大阪府が2,131社(同7.9%)と続く。100周年では、東京都が310社(同14.3%)、大阪府が245社(同11.3%)、愛知県が144社(同6.6%)の順。

地区別周年企業

周年企業数 30周年は3万1,220社

 このほかに創業30年から90年を迎える企業数を調査した。
 社数では、30周年が最多の3万1,220社。次いで、50周年の2万6,684社、40周年の2万5,006社と続く。
 60周年は30周年からほぼ半減し1万2,866社。70周年は1万1,424社と、60周年とほぼ変わらない。80周年は2,292社と一気に社数が減少した。80周年はノモンハン事件が勃発、太平洋戦争に向かう時代。90周年は2,316社と80周年を上回った。世界大恐慌で不況の中で花園ラグビー場が開場した。
 倒産企業の平均寿命は2017年で23.5年だった。戦争や災害、不景気などを乗り越え、100周年を迎える企業がほんの一握りであることがわかる。

地区別100周年企業

 幾多の艱難辛苦(かんなんしんく)に遭いながら、2019年に創業100周年を迎える企業は全国で2,160社ある。関東大震災、第二次世界大戦、オイルショック、バブル崩壊、リーマン・ショック、東日本大震災など、社会や経済の大波に立ち向かい、必死で乗り越えてきた。その秘訣は、苦難の道も歯を食いしばりながら耐えてきたことだろう。その先の200年、300年と節目を迎える企業は、さらに歴史を生きてきた証がある。
 1年間に10万社超が新たに設立されている。だが、1年で約8,000社が倒産し、約3万社が休廃業・解散している。業績だけでなく、事業承継も大きな問題だ。後継者難の倒産が増加しているが、100周年など長寿企業は世代を超えて事業を承継し生き残ってきた。
 周年企業の特徴としては、(1)企業理念が確立している、(2)後継者育成に努めている、(3)サステナビリティ(持続可能性)のため時代を先取りしている、(4)経営が長期的視野に富む、(5)時代に対応した柔軟性、などの長所を併せ持っているが挙げられる。
 周年企業は全国各地に多く存在する。「地方創生」が重要課題になるなか、業歴が長い企業は地域経済の核であり、地域の多様性を維持するうえで欠かせない存在でもある。その経営の「柔軟性」と「したたかさ」を学ぶ必要があるといえよう。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ