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創業70周年を迎えた「はとバス」 中村靖社長、独占インタビュー(後編)「運転手不足が業界全体で深刻、解消が急務」

-特徴的なツアーがメディアで話題だが
 話題になるツアーの実現には、高い企画力、取引先との信用が強く必要とされる。70年積み重ねてきた信用、信頼でできる部分が大きい。(創業70)周年企画では「相撲部屋朝稽古見学とトコトン東京スカイツリー(力士を囲んでちゃんこ体験)」や、「昼ホスト(クラブ)」を体験できる「夕方までのシンデレラ」、「首都圏外郭放水路特別見学」など弊社独自のユニークなツアーを提案している。人気の工場夜景見学は弊社から始まったことだが、川崎市と手を組んだからこそできたことだ。

-1番人気のツアーは
 やはり、弊社「基本の“き”」である定期観光だ。30分間隔の運行で、ちょっと空いた時間に乗れる気軽さが支持を受けている。オープントップバス「オーソラミオ」は、1800円で東京タワー、レインボーブリッジ、お台場、皇居など観光地の定番をぐるっと回る。バスの屋根がない分、春には桜、秋には紅葉をダイレクトに感じられる。季節ごとの東京の魅力も味わっていただけるツアーだ。

-課題と対策は
 ドライバーの減少が業界全体で最大の問題だ。高まるバスツアー需要に対応し、バス台数を増やしたいが、ドライバーがいないためできないのが本音。他社も同様だ。
 若者で運転免許を取得しない人も多いなか、大型二種はかなりハードルが高いなど、ドライバー減少には複数の背景がある。大型バス運転士は年々減少している。今、求められるのは大型二種免許を取りやすい環境を整備するということ。安全が前提だが、若い世代でも安全に運転できることが立証され、ある程度の実績があれば観光バスドライバーとして認める、そう風を変えていくしかない。
 女性ドライバーの育成も急務だ。女性の場合は施設整備も欠かせない。現在、弊社には観光バスの女性ドライバーは1人しかいない。もっと活躍できる層の拡充が必要だ。

オープントップバス「オーソラミオ」の都内ツアー(はとバス提供)

オープントップバス「オーソラミオ」の都内ツアー(はとバス提供)

-バス観光の見通しは
 今後も少子化、人口減少の傾向は続くが、堅調に推移するとみている。地震や大雨などの自然災害で一時的な影響を受ける可能性はあるが、需要は底堅い。一方で、2年前(2016年1月)の軽井沢のスキーバス事故のような事例が発生すると業界全体に悪影響を及ぼし、利用者は落ち込む。当時は弊社も影響を受けた。そうなると市場全体がシュリンクしてしまう。そうならないためにも「安全」は何ものにも代えがたい。

-インバウンドの状況は
 外国人観光客の利用割合は英語圏と中国がメイン、次いで台湾。東南アジアからの利用はまだ限られているが、先般策定した「10年ビジョン」で、「フィリピンやベトナム、インドネシアなどアジア諸国の人々をひきつける存在に」と目標を掲げた。外国人観光客に対する取り組みでは、外国語パンフレットの作成のほか、フェイスブック(FB)でのPRも強化している。日本語版登録者数約2万人に対し、外国語版(英語、中国語)登録者数は約10万人。日本の観光会社としての「はとバス」を認知してもらい、外国人利用者の拡大に繋げていく。

-インバウンド取り込みの課題は
 何と言っても決済系。外国のお客さまは現在、電子決済が主流だ。中国だとウィーチャットとアリペイ。我々の想定を上回るスピードでトレンドが進んでいる。遅くても2020年2月には決済を含めた新システムが完成するが、本音を言うともっと早く進めたかった。
 言語対応も急務だ。弊社では国家資格の全国通訳案内士の資格を持つガイドがおり、外国語専用コースで活躍しているが、対象コースが限定されている。2015年にはGPSを使った自動ガイダンスシステム「TOMODACHI」も更新し、8カ国語対応に広げた。だが、すでに(対応)言語数の不足感がある。次のシステム改定では、数十か国語の段階まで拡げる必要がある。
 ツアー内容の見直しも急務だ。個々のリクエスト、ベジタリアンのお客さまに向けた食事内容もホームページ予約段階で受け付けられるようにしたい。

-利用者の裾野拡大は
 年代的に20~30代の利用者が少なく、潜在需要があるとみている。一方、40代以上は競争が激化している。若年層には人気の郊外での果物狩りに代表されるような波及の望めるツアーを深化させ、シャインマスカット、スカイベリーなどの人気品種でプレミアム感を出す。40代以上には化粧室付きの高級バスを使うなど、質を重視して訴求する。

-100周年に向けての思いは
 基本は「安心」「安全」が第一。その方針はずっと変わらない。その上で時代のニーズを取り込み、必要な投資を積極的に行う。将来的には乗り物自体も時代とともに変わっていくかもしれない。ただ、満足とか感動の価値は今後さらに高まっていくとみている。
 東京は奥多摩の山もあるし、都市の近くに海も川もある。しかも豊かな四季を感じられる。観光資源は他の地方にも負けないほど大変豊富にある。地方や外国からのお客さまはもちろんのこと、ぜひ東京に住む人にも、東京の良さに改めて気づいてもらい、自分の住むまちに感動してもらえるよう機会を提供していきたい、そう思っている。

 設立から70年。「はとバス」は、周年イベントや記念ツアーも目白押しだ。2017年には年間利用者が約90万人と、100万人(東京観光コース)の大台に期待が膨らむ。だが、ドライバー不足は深刻で、中村社長は「安全を前提に、女性、若者が大型二種免許を取得しやすい環境を」と訴える。
 東京五輪を控えて訪日外国人の数は今後も伸長が期待される。それに備えた言語や決済対応などのシステム改定を急ピッチで進めている。ただ、中村社長は「大切なのは人の強み」を強調する。「省力化できるところはIT化していくが、安心、感動はお客さま第一の精神が生み出せること。人材の育成と確保は、今後も変わらず弊社の最重要テーマ」と語る笑顔が印象的だった。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年11月14日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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