• TSRデータインサイト

2018年1-10月「和洋菓子店」の倒産状況は前年同期比1.2倍増、老舗菓子店の倒産が目立つ

 人気店や老舗の「和洋菓子店」の倒産が相次いでいる。2018年1-10月の「和洋菓子店」の倒産は52件(前年同期43件)に達し、前年同期を上回って推移している。倒産企業の中には業歴が長く、有名銘菓を製造していたところや、人気店として知られた店も数多くみられる。
 最近は、大手コンビニチェーンが展開する「コンビニスイーツ」の台頭で競合が激しく、原材料の上昇、後継者難や人手不足も重なり、「和洋菓子店」の経営環境は厳しさを増している。


  • ※ 本調査の「和洋菓子店」には、「生菓子製造業」、「ビスケット類・干菓子製造業」、「米菓製造業」、「菓子小売業(製造小売)」を含む。

倒産件数は前年同期の1.2倍増、最近10年で最多件数を塗り替える勢い

 2018年1-10月の「和洋菓子店」の倒産は、52件(前年同期比20.9%増、前年同期43件)と、全産業の倒産が低水準で推移するなか、ハイペースで推移している。この水準で推移すると2009年からの10年では、2013年(61件)を上回って最多件数になる可能性も出てきた。
 主な内訳は、菓子小売業(製造小売)が33件(前年同期比13.7%増、前年同期29件)、生菓子製造業が17件(同41.6%増、同12件)で、生菓子製造業の増加率の高さが目立つ。

和洋菓子店の倒産 年次推移

中元・歳暮需要の低迷と「コンビニスイーツ」の台頭などが影響

 「和洋菓子店」の経営が苦戦しているのは、消費者の嗜好の変化と無縁ではない。要因をいくつか列挙すると、(1)中心顧客の高齢化と若年層の儀礼的進物を好まない傾向による「中元・歳暮需要の低迷」、(2)手軽で品質の高い「コンビニスイーツ」の台頭、(3)和菓子では、「ようかん」、「まんじゅう」などの消費額が減少していること(総務省家計調査報告)、(4)老舗企業では、確立したブランド商品に依存する傾向が強く、環境の変化に対応できない硬直した経営に陥りがちなこと、(5)若者の和菓子離れ、などが挙げられる。

  若者を中心に手軽なコンビニスイーツの人気が高まり、顧客層を広げていることで、個人企業を中心に「和洋菓子店」は大きな影響を受けているとみられる。さらに、地方では人口減少も深刻で個人消費が伸びず、手堅い固定客を抱える老舗菓子店でも業績維持が難しい状況に陥っている。このため、顧客の嗜好に合わせた商品開発、サービス提供が求められるが、特に伝統を引き継ぐ老舗企業では、想像以上に変化することが容易ではないのが実情だ。大胆に客層の嗜好に合わせていくのか、ひたすら伝統の味を守り抜くのか、「和洋菓子店」の経営の舵取りの模索が続く。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ