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「日立化成グループ国内取引状況」調査、1次仕入先は1028社、約9割が資本金1億円未満

 大手化学メーカーの日立化成(株)(TSR企業コード:291056903、法人番号:3011101018084、東京都千代田区、東証1部)は10月29日、「エポキシ樹脂封止材について、その一部製品において不適切な検査を実施していた」と、リリースした。同社は今年6月29日、「産業用鉛蓄電池の一部製品で検査成績書へ不適切な数値の記載等」を公表。7月上旬に特別調査委員会を設置し、この調査の過程でエポキシ樹脂封止材の不適切な検査が判明した。
 不適切な検査が判明したエポキシ樹脂封止材は、電子回路基板のICチップ保護に使われ、日立化成は世界トップクラスのシェアがあるという。
 東京商工リサーチ(TSR)では、日立化成と同社グループ(以下、日立化成グループ)と直接取引のある1次、間接取引の2次の取引先数を調査した。取引先総数は仕入先合計が4,577社(重複除く)、販売先合計は3,881社(重複除く)だった。
 日立化成グループと直接取引している1次仕入先(1,028社)のうち、製造業が530社(構成比51.5%)と半数以上を占めた。1次仕入先の本社地は、1位の東京都が243社(同23.6%)、2位の茨城県が214社(同20.8%)と拮抗している。日立化成グループと直接取引する1次仕入先は約7割、1次販売先は約5割が関東に集中している。
 また、資本金1億円未満(個人企業を含む)の中小企業は、1次仕入先社1,028社のうち、904社(構成比87.9%)。2次仕入先3,700社のうち、2,279社(同61.5%)と大半を占めた。
 2018年において2度の不正が発覚。今回判明した半導体素材は多くの製品に利用されている。取引先の多くは中小企業が占めており、今後の展開次第では取引先への影響も懸念される。


  • 本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、日立化成および同社グループの仕入先、 販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区、規模などを抽出、分析した。
  • 1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。
  • 日立化成のほか、2018年3月期の有価証券報告書に記載されている国内連結子会社12社、持分法適用会社1社(五井化成(株))の合計14社を対象とした。

日立化成グループの取引先 1次販売先の最多業種は自動車部分品・附属品卸売業

 日立化成グループと直接取引のある1次仕入先は1,028社。産業別では、最多は製造業の530社(構成比51.5%)。以下、卸売業の215社(同20.9%)、建設業の123社(同11.9%)と続く。
 産業別で最も多かった製造業(530社)の業種別では、自動車部分品・附属品製造業が23社(構成比4.3%)で最多。次いで、金属用金型・部分品・附属品製造業が17社(同3.2%)、電子回路基板製造業が16社(同3.0%)、他の電子部品・回路・デバイス製造と製缶板金業が各15社、プラスチック異形押出製品製造業と化学機械・同装置製造業が各13社の順。
 また、2次仕入先は1次仕入先の3.5倍の3,700社だった。産業別では、製造業が最も多く1,802社(同48.7%)。次いで、卸売業1,350社(同36.4%)で、この2産業で8割を占めた。
 販売先では、1次販売先は724社、2次販売先は3,274社だった。産業別の最多は、1次販売先、2次販売先ともに製造業で4割を占めた。
 販売先のうち、製造業の業種別では、1次が電子回路基板製造業42社(同14.2%)、自動車部分品・附属品製造業21社、プラスチック異形押出製品製造業16社の順。2次は自動車部分品・附属品製造業106社(同7.3%)、他の電子部品・回路・デバイス製造48社、電子回路基板製造業43社の順。

日立化成グループの取引先


 昨年から今年にかけ神戸製鋼所、SUBARU、日産自動車など、国内有力メーカーのデータ改ざんが明らかになったが、10月に入ってもKYB、川金ホールディングスなどで改ざんが発覚した。
 相次ぐデータ改ざんは日本製品全体への不信感を招き、技術大国を標榜する日本に大きな痛手になりかねない。
 今、企業規模を問わず、コンプライアンス(法令順守)の重要性が高まっている。不正が発覚するたび、各社はコンプライアンスやガバナンス確立を一様に答える。だが、相次ぐ不正の発覚で、「コンプライアンス」、「ガバナンス」が掛け声倒れに終わっている現実を直視し、真剣に企業としてのモラルが問われていることを知るべきだ。
 相次ぐメーカーのデータ改ざんは、工業規格品の品質保証へのダメージも大きい。同一品質を謳いながら、製品個体に品質バラツキの印象を与え、安易なデータ改ざんは商品価値を下落させる。さらに、メーカーは自社への信用棄損だけでなく、取引先、特に中小企業にも有形無形の悪影響が及ぶことを認識すべきだろう。

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