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2018年3月期決算「役員報酬1億円以上開示企業」調査(最終まとめ)

 2018年3月期決算で報酬額が1億円以上の役員を開示した上場企業は240社、人数は538人だった。社数は前年(223社)を17社、人数は前年(466人)を72人それぞれ上回り、社数・人数とも過去最高を更新した。240社のうち、三菱自動車工業、日本郵船、三井化学、田辺三菱製薬、あおぞら銀行など28社が、初めて個別開示に登場した。
役員報酬の最高額は、ソニーの平井一夫前社長(現会長)の27億1,300万円(前年9億1,400万円)。基本報酬やストックオプションのほか、社長退任に伴う株式退職金11億8,200万円などがあり、歴代5位の報酬額となった。開示人数の最多は、三菱電機の22人(前年22人)で、2015年から4年連続で20人台だった。
報酬額1億円以上の個別開示は2010年3月期から開始された。2010年3月期の開始以来、9年連続で1億円以上は役員は77人だった。

  • 本調査は、全証券取引所の3月決算の上場企業2,421社(日本海洋掘削、東栄リーファーライン、ソルガム・ジャパン・ホールディングス、省電舎ホールディングス、ブロードメディア、トレイダーズホールディングス、地盤ネットホールディングスを除く)を対象に、有価証券報告書から役員報酬1億円以上を個別開示した企業を集計した。上場区分は2018年7月3日時点。
  • 2010年3月31日に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正」で、上場企業は2010年3月期決算から取締役(社外取締役を除く)、監査役(社外監査役を除く)など役職別及び報酬等の種類別の総額、提出企業と連結子会社の役員としての連結報酬1億円以上を受けた役員情報を有価証券報告書に記載が義務付けられた。内閣府令改正は、上場企業の「コーポレート・ガバナンス」(企業統治)に関する開示内容の充実を目的にしている。

役員報酬1億円以上開示企業

役員報酬額 トップはソニーの平井一夫前社長の27億1,300万円で、歴代5位

 2018年3月期決算の役員報酬の最高額は、ソニーの平井一夫前社長(現会長)の27億1,300万円で、前年(9億1,400万円)より17億9,900万円増加、歴代5位の報酬額だった。報酬内訳は、基本報酬2億4,400万円、業績連動報酬6億4,700万円、ストックオプション4億900万円(付与数20万株)のほか、2018年4月の社長退任に伴う株式退職金11億8,200万円があり報酬額を押し上げた。
2位はソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長で20億1,500万円(前年24億2,700万円)、3位は同社マルセロ・クラウレCOOで13億8,200万円(前年開示なし)、4位は同社ラジーブ・ミスラ副社長で12億3,400万円(同)と、ソフトバンクグループの3人が名を連ねた。5位は武田薬品工業のクリストフウェバー社長の12億1,700万円(前年10億4,800万円)だった。上位5人のうち、4人は外国人役員が占めた。
過去の役員報酬には役員退職慰労金(引当金繰入額を含む)も目立った。しかし、ここ数年は過去の実績を評価する役員退職慰労金から、業績連動の報酬体系が強まってきている。

個別開示対象538人のうち、2年連続開示は372人(構成比69.1%)。372人のうち275人が前年より役員報酬額が増加し、減額は87人、同額は10人だった。また、2017年3月期決算で開示がなく、2018年3月期に開示されたのは166人(初登場136人)だった。 個別開示制度が開始された2010年3月期以降、9年連続で登場したのは77人(構成比14.3%)だった。
報酬額10億円以上は8人で、前年同期より3人増えた。また、2億円以上10億円未満は119人(前年94人)で25人増え、役員報酬の高額化が進んでいる。

2018年3月期 役員報酬額ランキング

企業別 三菱電機が22人で最多

 個別開示した240社のうち、開示人数が最も多かったのは三菱電機の22人。前年と同数で、4年連続で開示人数が20人台だった。次いで、日立製作所が18人(前年7人)、ファナック(同10人)、東京エレクトロン(同9人)が各10人、ソニー、大和ハウス工業、三菱UFJフィナンシャル・グループが各9人の順だった。グローバル展開する電機メーカーが上位に名を連ねた。
開示人数別では、1人の企業が126社(構成比52.5%、前年130社)と最も多く、2人が63社(同26.2%、同49社)、3人が18社(同7.5%、同15社)と続く。2人以上の複数の役員に対し1億円以上の役員報酬を支払った企業は114社(構成比47.5%)で、前年93社(同41.7%)より5.8ポイントアップした。
個別開示した240社のうち、2年連続で個別開示した企業は198社(構成比82.5%)。198社のうち、40社は前年より開示人数が増加、15社が減少。同数は143社だった。
また、前年に個別開示がなかったが、2018年3月期に個別開示を行ったのは42社だった。42社のうち、制度開始以降、初めて個別開示を行ったのは、三菱自動車工業、長谷工コーポレーション、JXTGホールディングス、日本郵船、コスモエネルギーホールディングス、三井化学、レオパレス21など28社。
9年連続で個別開示した企業は三菱電機など81社(構成比33.7%)。

 役員報酬の個別開示制度が開始された2010年3月期以降で、開示社数および人数ともに過去最高を記録し、人数は初めて500人を超えた。
役員報酬は基本報酬を主体とした体系に変化はないが、近年は業績を反映した賞与額アップ、業績連動報酬、ストックオプションなど、業績連動の報酬が増えている。
役員報酬の開示制度が開始されたことで、株主だけでなく、従業員、取引先など、ステークホルダーから「経営方針」「業績」「配当」「会社への貢献度」などで、報酬額の妥当性が判断されるようになった。ここ数年、企業において「コーポレートガバナンス」や「コンプライアンス」の重要性は増している。そのため、ステークホルダーへの報酬額に対する説明責任をより一層求められている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年7月19日号に「役員報酬ランキングTOP50」を掲載予定)


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