• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

【破綻の構図】ギフト共同仕入の(株)全通 ~ 加盟店減少と肥大化した不良債権が経営を圧迫 ~

 4月2日に事業を停止した(株)全通(TSR企業コード:291988130、江東区、髙橋睦社長)が6月20日、都内で債権者向け説明会を開催した。突然の事業停止から2カ月半。この間、代理人弁護士が債権調査を行っていたが、方向性は明らかにされていなかった。
事業停止後、全通から商品を仕入れていた地方のギフト販売業者が相次いで破綻し、関係者だけでなく注目を集めていた。
20日の説明会では、初めて再建を断念し清算を前提とした「任意整理」か「破産」を選択することを表明した。債権者の意向をもって方向性を判断するという。説明会で示された負債総額は22億3,375万円。債権者数は356社にのぼる。

全通は1983年、(協)ジャパンギフトチェーン(TSR企業コード:293511195、同所、以下JGC)と、組合加盟店の共同出資で設立された。JGCはギフト業界では唯一の協同組合として知られ、全国の中小のギフト販売業者らで構成されている。全通はJGCの共同仕入れ事業を担い、事実上はJGCと一心同体で、メーカーや問屋から一括して商品を買い付け、加盟店に供給していた。
全国津々浦々に存在する地場のギフト販売業者は、地域の結婚式場、葬祭業者、有力企業などに太いパイプを持つ。だが、規模や資金力で劣勢を強いられている。そこで全通の加盟店になることで、商品の仕入力や単価メリット、業務簡略化による経費節減が見込めた。
JGCと全通は、「1県に1加盟店」を目標に掲げ、ピークの1999年3月期の売上高は約60億円を計上。全国に約50社の加盟店を抱えるギフト業界の一大勢力に成長した。
ところが2000年代に入ると様相が一変する。ギフト需要が減少し、加盟店の業績悪化に伴い、全通の経営も一気に悪化をたどった。

全通が入居していたビル(4月撮影)

全通が入居していたビル(4月撮影)

ギフト冬の時代 従来型の業者は苦境に

背景には市場の縮小やギフトの多様化がある。少子高齢化社会の到来で、葬儀の数は増えても密葬や家族葬が増え、法事の引き出物の需要は伸びない。結婚式や各種式典も同様で、中元、歳暮の類はいうに及ばずだ。簡素化の風潮が広がり、市場は冬の時代を迎えた。
同時に、消費者の嗜好も変化し、ギフトも食事や温泉、乗馬など、かつてなかった体験型ギフトが浸透していった。さらに大手流通業者や感度の高いセレクトショップなどがギフト商材に本腰を入れ、加盟店の大部分を占める従来型のギフト販売業者では太刀打ちできなくなった。
こうした急激なニーズの変化で、全通の2017年3月期の売上高は34億9,000万円まで減少、約20年間で売上高は半減した。この間、「13社の加盟店が倒産し、12社が脱会した」(説明会)という。加盟店の減少で営業保証金の返還も相次ぎ、全通の資金繰りを悪化させた。

加盟店の資金支援で身動きとれず

全通は売上不振だけでなく、もう一つ大きな問題を抱えていた。加盟店に対する不良化した営業債権だ。
全通の成り立ち自体が互助会的な性格の協同組合を発端としていたため、取引条件は加盟店側が圧倒的に有利だった。加盟店から回収できなくても、全通は仕入先のメーカーや問屋への支払い義務がある。また、加盟店が経営不振に陥っても、即座に債権回収に動きにくい。むしろ資金繰り支援のため支払い猶予を求められ、取引を打ち切ることはできなかった。
それでも業績が好調だった時代は何とか吸収できたが、髙橋社長は「弱体化した加盟店への支援を続けた結果、不良化した営業債権は雪だるま式に増えた」と説明会で苦しい胸の内を吐露した。
説明会で配布された資料によると、全通が保有する売掛債権は帳簿上で6億1,039万円。しかし、実際に回収が可能なのは8,000万円程度にすぎない。大部分が長期営業債権の未回収や貸し倒れの未償却分だった。

相次いだ連鎖倒産

全通が事業を停止した同日、秋田県南部を拠点とする(株)交絢社(TSR企業コード:220027072、横手市)が、再度の資金ショートを起こした。その後、5月には協立商事(株)(TSR企業コード:940002094、鹿児島市)、打越商舗(株)(TSR企業コード:580002535、石川県七尾市)と、各地の中小ギフト販売業者が相次いで破綻した。
支援を受けていた加盟店は、全通の破綻で支えを失った。弱体化した加盟店がいかに全通頼みだったかを象徴している。こうした内情を隠すためか、全通は実際は赤字だったが、利益を水増しし、黒字の粉飾決算を作成していたことを明らかにした。

加盟店のための組織という趣旨で設立された全通は、いつしか不振業者の救済センターになっていた。発足時の呪縛から逃れられないまま、結局は自らの首を締め、300社以上の債権者を巻き込む倒産に追い込まれた。
残された加盟店への影響は大きい。全通という寄るべき大樹を失った加盟店は、新たな仕入ルートの開拓が必要だ。体力の乏しい中小業者には死活問題だ。中には廃業の選択も現実味を帯びるギフト業者も出てくるだろう。
ギフト市場が大きく変貌し、変化スピードも著しい。全通の倒産は従来型のギフト販売業者に暗い影を落とし、その波紋は今も広がっている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年6月28日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)


 TSR情報とは

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ