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破綻の構図 エコー商事(株)~積極的な店舗展開が経営を圧迫した「ジャンボおしどり寿司」

 神奈川県を中心に回転寿司店「ジャンボおしどり寿司」を展開しているエコー商事(株)(TSR企業コード:350439559、法人番号:1020001003643、横浜市港南区、柏木克彦社長)が4月2日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債は15億3,032万円だった。
「ジャンボ」な寿司ネタで、価格は一皿120円~760円。100円均一の回転寿司店とは一線を画し、業績を伸ばしていた。だが、過去の投資や積極的な出店の失敗によって多額の借入金を抱え、2014年10月中小企業再生支援協議会に支援を要請。経営改善に着手し、黒字計上に漕ぎつけたが、金融債務の削減は難しく民事再生法の適用で再建を図ることになった。

 エコー商事は1982年1月、築地市場の仲卸人だった柏木克彦社長が設立した。「ジャンボおしどり寿司」の屋号で、三島店(静岡県)を皮切りに、神奈川県内の郊外に出店、最盛期の2007年12月期には売上高約30億5,800万円をあげていた。
築地市場の買参権(都知事の承認を得て卸業者から直接購入できる権利)を持っていて、独自の仕入で魚介を安く仕入れることができ、自社所有のトラックを使った物流システムなどで、新鮮なうちにすばやく提供できた。また、職人がお客の目の前で寿司を握るパフォーマンスなども特徴的だった。

出店攻勢を強める

 店舗は「狭くて、忙しい」というイメージを払拭。ファミリー層をターゲットに「ゆったり落ち着き、くつろげる空間」の店舗づくりを目指した。好立地に店舗を次々と出店し、集客力の高い商業施設にも店舗を開設していった。
次第に県内で知名度も高まり、2007年12月期には売上高が30億円を超えるまでに成長した。この間、2005年にはとんかつ店の運営にも進出していた。

ジャンボおしどり寿司(日野本店)

ジャンボおしどり寿司(日野本店)

新規出店が裏目となり金融債務が膨張

 ジャンボおしどり寿司が出店攻勢を強めていく頃、外食産業は低価格路線が広がっていた。寿司業界でも100円均一の回転寿司などが台頭し、新規出店も計画通りに業績を上げることが難しくなった。新規参入したとんかつ店も軌道に乗らず、苦戦が続いていた。
打開のため、お好みの寿司を選択してテイクアウトできる専用レーンの開設や、ランチメニューの開発など、大手寿司チェーンとの差別化に注力したが、逆に大手寿司チェーンと低価格店の挟み撃ちに遭った。
こうした積極的な新規出店や、それを見込んだ有価証券投資は金融機関からの借入で調達したため、金融債務が大きく膨らんでしまった。結果、この投資が失敗に終わり過大な債務だけが残された。

自主再建へのこだわり

 業績悪化から脱却するため、2009年11月頃から不採算のとんかつ店や赤字店舗の撤退、給与カットなどの人的リストラにも取り組んできた。
この効果は徐々に業績に表れ、2011年12月期には営業黒字を計上できるまでに改善したが、多額の借入金の削減は遅々として進まなかった。
このため、2014年10月に神奈川県中小企業再生支援協議会の支援を得て、金融機関から金利引下げやリスケの支援を受けた。一方で、同社はさらなる経費削減を実施し、最終利益も黒字を計上できるまでになった。だが、最大の課題だった金融債務の圧縮はできず、返済猶予も限界にきていた。
こうした状況から、支援協議会はエコー商事に最終提案として「第二会社方式」による再建案を提示したが、エコー商事はあくまでも自主再建にこだわった。背景には、板前を中心に従業員との信頼関係が非常に厚く、以前に会社の買収話が浮上した際も、強い反対を示したことがあったからだ。柏木社長は、再建には社員の人心掌握が最重要と考えており、支援協議会からの再建案は従業員の思いに対峙し、とうてい受け入れることはできなかった。
多額の借入金を削減するメドが立たず、苦境に陥っていたエコー商事に、追い打ちを掛けるように、立場店(横浜市泉区)が2017年1月に大家との契約満了で閉店することになった。旗艦店として全社で最も売上が大きかった同店の閉鎖は、自主再建のバックボーンを失うことを意味した。

足かせとなった借入金

 2017年12月期の売上高は約17億円で、営業利益は864万円の黒字を計上していた。これに対し、支払利息は2,659万円に達し、利益償還できる状況になく、経常利益は357万円の赤字だった。返済原資を生み出せない事業が生き残ることができないのは自明の理だ。事業を継続するには、過去の失敗で累積した多額の借入金の削減がどうしても必要だった。

 4月5日開催の債権者説明会では、一部債権者から再生に協力する声が上がった。また、仕入れに支障が出る場合、支援を約束する取引先もあるという。
イメージが大切な飲食業界では、「倒産」の烙印が客足に重大な影響を及ぼす。一部債権者からは仕入れに支障が出た際、支援する旨の声も上がったが、今後も新鮮な食材を安定供給できるのか。消費者が抱くマイナスイメージへの影響は不透明だ。
民事再生が認可され、金融債務を軽減できても大手が台頭する回転寿司業界の厳しい競争に晒されることになる。人手不足の時代に従業員が定着するには、職場環境だけでなく、賃金も大きなウェイトを占めている。ハンディを背負った「ジャンボおしどり寿司」が生き残るには、様々な課題が待ち受けている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年4月25日号掲載予定「破綻の構図」を再編集)

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