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2017年度「老人福祉・介護事業」の倒産状況

 2017年度(2017年4月-2018年3月)の「老人福祉・介護事業」倒産は、介護保険法が施行された2000年度以降、最多の115件に達した。
 倒産した事業者は、従業員5人未満が全体の60.8%、設立5年以内が39.1%を占めており、小規模で設立間もない事業者が倒産を押し上げる構図が鮮明になった。
 高齢化社会の到来で成長市場と期待されている「老人福祉・介護事業」だが、介護職員の人手不足が慢性化する中で業界内の淘汰が加速している。


  • 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む

2017年度の倒産115件、年度ベースで過去最多を記録

 2017年度の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は115件(前年度比7.4%増)で、前年度(107件)を上回り、年度ベースで過去最多になった。
 負債総額は147億4,100万円(前年度比38.7%増、前年度106億2,700万円)で、前年度より約4割増になった。これは負債10億円以上が4件(前年度3件)発生したことが影響した。ただ、全体では負債1億円未満が93件(前年度比8.1%増、前年度86件)と全体の8割を占めており、小規模事業者の倒産が大半だった。

老人福祉・介護事業の倒産 年度推移

深刻さを増す人手不足

 2017年度の「老人福祉・介護事業」の倒産を四半期別でみると、2017年4-6月が26件(前年同期比10.3%減、前年同期29件)、7-9月が31件(同6.0%減、同33件)と、前半は減少が続いた。だが、後半に入ると10-12月が40件(同29.0%増、同31件)、2018年1-3月が18件(同28.5%増、同14件)と年度後半に増勢に転じ、今後の展開に目を離せなくなってきた。
 倒産の増加要因としては、(1)同業他社との競争激化から経営力、資金力が劣る業者の淘汰が加速、(2)2015年度の介護報酬の実質マイナス改定による収益への影響、(3)介護職員不足の中で離職を防ぐための人件費上昇、などが挙げられる。
 特に、介護業界の人手不足は「国内景気が悪い時の採用は順調だが、好況になると人材が他業種へ流出する」など、景気と逆行する傾向がある。とりわけ、小規模事業者は業績低迷に、資金的な制約も抱えており、一層深刻さが増している。

業種別、最多は「訪問介護事業」

 業種別では、「訪問介護事業」の47件(前年度45件)を筆頭にして、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が44件(同39件)、「有料老人ホーム」が9件(同11件)、サービス付き高齢者住宅などを含む「その他の老人福祉・介護事業」が8件(同8件)などだった。

設立別、5年以内が約4割

 設立別では、2012年度以降に設立された事業者が45件(構成比39.1%)と約4割を占め、設立5年以内の新規事業者が目立った。また従業員数では、5人未満が70件(前年度比10.2%減、前年度78件)で、全体の6割(構成比60.8%)を占めた。小規模で資金調達力や社内体制が未整備のため、淘汰される新規事業者の実態が浮かび上がる。

原因別、「事業上の失敗」が約4割増

 原因別では、最多の販売不振(業績不振)が52件(前年度比22.3%減、前年度67件)と前年度を下回ったのに対し、「事業上の失敗」が26件(同36.8%増、同19件)と増勢が目立った。
 これは、安易な起業や本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いとみられる。

形態別、事業消滅型の破産が9割を占める

 形態別では、事業消滅型の破産が107件(前年度比4.9%増、前年度102件)と全体の9割(構成比93.0%)を占めた。一方、再建型の民事再生法は3件(前年度1件)にとどまり、業績不振に陥った事業者の再建が難しいことを反映した。

地区別件数、全国9地区すべてで倒産発生

 地区別では、全国9地区すべてで倒産が発生した。最多は関東の39件(前年度40件)で、次いで近畿22件(同25件)、中部17件(同8件)、九州15件(同16件)、北海道7件(同3件)、中国5件(同5件)、東北4件(同7件)、北陸4件(同2件)、四国2件(同1件)の順。前年度比では、北海道、中部、北陸、四国の4地区で前年度を上回った。


 厚労省の社会保障審議会・介護給付費分科会の諮問に沿って2018年度の介護報酬改定は、0.54%引き上げられた。ただ、プラス改定になったとはいえサービス種別によって明暗が分かれ、通所介護では事業規模やサービス提供時間に応じた基本報酬の細分化など「給付適正化」も進められる。さらに、医療と介護の連携が強化されたことにより今後は新規参入の障壁が高まることも予想される。「老人福祉・介護業界」の顧客は、身体介護や生活援助が必要な高齢者を中心にするため、採算重視だけでなく顧客が心身ともに満足できる良質なサービス提供が求められる。だが、最近は「収益優先」に追いやられて介護報酬の不正請求や法令違反などで指定取消処分を受ける施設や事業所が過去最多を記録している。こうした実態を背景に、経営体制の未整備や経営基盤の脆弱な事業者が「ふるい」にかけられる状況は避けられない部分でもある。「老人福祉・介護業界」は、サービスの質向上が課題だけに、引き続き今後の動向から目が離せない。

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