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2017年「パチンコホール」の倒産状況

 2017年(1-12月)の「パチンコホール」倒産(負債1,000万円以上)は29件(前年比141.6%増)で、3年ぶりに前年を上回った。負債総額は291億9,500万円(同67.6%増)で2年連続で増加、4年ぶりに負債100億円超の大型倒産も発生した。
 出玉規制で射幸性を抑えた「パチスロ5号機問題」が落ち着いた2009年以降、倒産は減少した。だが、パチンコ出玉の上限を今までの約3分の2に抑える改正風俗営業法施行規則が適用される今年2月を前に、再び増加に転じた。減少する遊技客の奪い合いで中小ホールの経営は厳しさを増し、資金力のある大手ホールが新規出店や買収で攻勢をかけている。ギャンブル依存症への対策を狙う2月の規制強化が、今後の客足にどう変化を及ぼすか注目される。


パチンコホール倒産 3年ぶりに前年を上回る

 2017年の「パチンコホール」倒産は29件(前年比141.6%増)で、前年の2.4倍増と急増した。倒産が前年を上回ったのは3年ぶり。5号機問題の影響で倒産が144件とピークに達した2007年以降、2014年を除き前年を下回っていたが、2017年は大幅増に転じた。
 負債総額は291億9,500万円(同67.6%増)と、2年連続で前年を上回った。4年ぶりに負債100億円超の大型倒産が発生、負債総額を押し上げた。

パチンコホールの倒産 年次推移

休廃業・解散は3年ぶりに減少

 2017年の「パチンコホール」の休廃業・解散は41件だった。前年より8件減少(前年比16.3%減)し、3年ぶりに前年を下回った。休廃業・解散は2008年の86件をピークに、2012年以降は50件未満の推移が続いている。
 パチンコホールは、店舗への投資負担が大きく、店舗の環境次第で大手業者が新規出店より既存店の買収に動くケースもあり、休廃業・解散を後押しする環境も出来ているようだ。

負債額別、10億円以上が前年比50.0%増加

 負債額別では、負債1億円以上5億円未満が15件(前年比400.0%増、前年3件)で5倍増と急増、構成比も半数(51.7%)を占めた。また、4年ぶりに発生した同100億円以上の1件を含む同10億円以上も6件(前年比50.0%増)と大幅に増えた。
 ただ、同1千万円以上5千万円未満も5件(前年ゼロ)と増加し、中堅規模の倒産が目立つ一方で、小規模ホールの倒産もジワジワと増えている。

原因別、販売不振が2.7倍増加

 原因別では、「販売不振」が19件(前年比171.4%)と2.7倍増で、構成比も65.5%を占めた。次いで、グループ企業に連鎖した「他社倒産の余波」が5件(前年ゼロ)、店舗や機器の投資負担から資金繰りに窮した「過小資本(運転資金の欠乏)」が3件(前年ゼロ)発生した。

主な倒産事例

 (株)ゲンダイ(TSR企業コード:710167750、岡山県)は、ゲンダイグループの中核企業で、2006年には岡山県から関西地方に13店舗を展開、グループ売上高は約650億円を上げていた。だが、規制強化と市場縮小のなかで同業者との競合から業績が悪化。新規出店の資金負担も重く、遊技機器入替の決済資金を調達できずグループ2社(岡山、大阪)と同時に2017年1月、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。
 新栄商事(有)(TSR企業コード:260166812、群馬県)は、4店舗を展開し一時は年商60億円台を維持していた。近年は遊技人口の減少や大手同業との競合で業績の低迷が続いていたが、2018年2月の出玉規制を見越して事業継続を断念。2017年9月、前橋地裁で破産開始決定を受けた。


 パチンコ業界は、2018年2月から出玉上限を2,400個から1,500個に抑える出玉規制を柱とする改正風俗営業法の施行規則が適用される。経過措置により検定を通過した現行機は最長3年間の稼働が可能で、完全入替は2021年になる見込みだが、パチンコ依存症対策を目的とする本改正は遊技人口の減少に拍車をかけると危惧されている。
 これまでもパチンコ・パチスロの規制強化はパチンコホールの淘汰につながった経緯がある。特に、2004年の「パチスロ5号機問題」による客離れと機器入替負担で、2007年の倒産は144件と過去最多を記録した。
 2004年の「5号機問題」と同様に、この2月の出玉規制も客離れを招くか注目される。また、市場が縮小する中で規制をクリアした新機種への入替負担が、中小パチンコホールの経営に及ぼす影響を見極めることも必要だろう。業界のパチンコ依存症への対応は立ち遅れ感も否めず、風営法改正で従来の営業をどう変えていくか、経営のかじ取りが重要になってくる。
 今後、パチンコ業界は大手と中小の市場二分化に加え、倒産や休廃業、店舗切り売りやM&Aなど、様々な動きが出てくると予想される。

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