• TSRデータインサイト

2017年「水産加工業」の倒産状況

 2017年(1-12月)の水産加工業の倒産は43件で、前年を6件(前年比16.2%増)上回った。倒産件数が前年を上回ったのは2015年(46件)以来、2年ぶり。
 負債総額は91億8,000万円(前年比10.2%減)で、前年より減少した。件数増に対し、負債が減少したのは、負債5億円以上10億円未満は2件(前年1件)と微増だったが、負債1億円未満が17件(構成比39.5%、前年比70.0%増)と大幅に増えたため。
 地区別では、9地区のうち、北海道(前年比33.3%増)、四国(同300.0%増)、九州(同80.0%増)の3地区で増加。東北と中国の2地区は減少、関東、近畿など4地区は同件数だった。
 企業倒産の底ばい状態が続くが、水産加工業は水揚げ量の変動や、諸経費のアップなどコスト変動に加え、人手不足による人件費上昇や人手確保などの深刻な課題も次々に押し寄せている。


  • 調査対象の「水産加工業」には、海藻加工業、水産練製品製造、塩干・塩蔵品製造、冷凍水産物製造、冷凍水産食料品製造などを含む。

負債1億円以上5億円未満が5割

 2017年の水産加工業の倒産は43件で、前年を6件上回った。倒産全体が1万件を割り込む低水準で推移するなか、前年より16.2%増で推移した。
 負債総額は91億8,000万円(前年比10.2%減)で、2年連続で前年を下回った。負債10億円以上の大型倒産は前年と同数の1件、負債5億円以上10億円未満は2件(前年1件)と微増だった。
 ただ、負債1億円以上5億円未満は23件(同25件)と微減にとどまったが、負債1億円未満が17件(構成比39.5%)と約4割を占め、構成比が前年比12.5ポイント上昇したことで負債総額の減少につながった。

水産加工業の倒産 年次推移

地区別、北海道、四国、九州で前年を上回る

 地区別件数では、全国9地区のうち、北陸を除く8地区で倒産が発生した。このうち、北海道(6→8件)、四国(1→4件)、九州(5→9件)の3地区で前年を上回った。
 一方、減少は東北(5→3件)と中国(2→1件)の2地区で、前年同数が関東9件、中部3件、近畿6件の3地区だった。
 都道府県別では、増加が北海道、福島県(0→1件)、千葉県(0→3件)、神奈川県(0→2件)、兵庫県(2→4件)、愛媛県(0→1件)、高知県(0→2件)、佐賀県(0→3件)、熊本県(0→2件)の9道県。減少は8都府県、同数は30府県だった。
 47都道府県のうち、27県(構成比57.4%)は倒産の発生がなかった。

形態別、清算型の破産が8割

 形態別では、企業の解体・消滅である「清算」型の破産が最多の36件(前年比16.1%増、前年31件)だった。次いで、特別清算が5件(前年3件)、取引停止処分が2件(同1件)と続く。
 事業を継続する「再建」型の法的手続きである民事再生法と会社更生法は発生がなかった。

従業員数別、10人未満の小規模企業が約8割を占める

 従業員数別では、5人未満が23件(前年比21.0%増、構成比53.4%)と、小規模企業が半数以上を占めた。次いで、5人以上10人未満が10件(同66.6%増、同23.2%)、10人以上20人未満が7件(同12.5%減、同16.2%)、20人以上50人未満が3件(同25.0%減、同6.9%)と続く。
 従業員数10人未満は33件(構成比76.7%、前年25件)で、小規模企業の倒産が全体の約8割を占めた。

主な倒産事例~不漁により業績悪化などが要因~

 (株)ヤマイチ合坂商店(TSR企業コード:040037819、北海道)は、水産加工販売業者として地元で水揚げされるタコ、ホッケ、秋サケ、サンマなどを取り扱っていた。関連会社経由で中国などに輸出も手掛け、イカが豊漁だった2013年12月期は過去最高の約16億200万円を売上げていた。しかし、イカの水揚げ量の落ち込みから連続減収となり、冷蔵設備の新設投資も重荷となり工場を操業停止した。
 翔ジャパン(株)(TSR企業コード:142322369、宮城県)は、冷凍水産物加工業者として宮城県石巻市に工場を構え、銀鮭とさんま加工を中心に手掛けていた。2013年8月期の売上高は6億6,782万円を計上したが、仕入原価の高騰で採算が悪化。同期末で1億2,076万円の赤字を計上し、債務超過に転落していた。2016年8月期は売上高が10億6,482万円まで回復したが、売上増による事業拡大に資金繰りが追いつかず事業継続を断念した。


 水産加工業は、漁獲量の減少で原材料の仕入価格が上昇している。一方、販売価格への転嫁は難しく、業績改善が進まない企業も少なくない。
 農林水産省が2017年9月に公表した「水産加工統計調査(平成28年)」によると、2016年の食用加工品生産量は163万347トンと、前年に比べ3.0%減少した。2007年の193万546トン以降、生産量は減少傾向にあり、ここ10年で約8割(84.4%)に縮小するなど業況は年々、厳しさを増している。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ハンバーガー店の倒産、最多更新 ~ 材料高騰、大手と高級店の狭間で模索 ~

年齢を問わず人気のハンバーガー店が苦境だ。2024年は1件だった倒産が、2025年は8月までに7件に達し、過去最多の2014年の年間6件を上回った。

2

  • TSRデータインサイト

2025年「全国のメインバンク」調査 ~GMOあおぞらネット銀行 メイン社数の増加率2年連続トップ~

「2025年全国企業のメインバンク調査」で、GMOあおぞらネット銀行が取引先のメインバンク社数の増加率(対象:500社以上)が2年連続でトップとなった。

3

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。

5

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

TOPへ