• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

2017年3月期決算「主要152信用金庫 総資金利ざや」調査

 「逆ざや」の信金が3.4倍に急増、地域に密着した信用金庫でも「総資金利ざや」の縮小が進んでいることがわかった。主要152信用金庫の2017年3月期決算では、8割にあたる130信金で「総資金利ざや」が前年同期より縮小し、「逆ざや」は24信金(前年同期7信金)にのぼった。
 今年8月に東京商工リサーチが発表した銀行114行の同調査では、2017年3月期に「逆ざや」に転じた銀行は9行だったが、信用金庫は18信金が利ざや計上から「逆ざや」に転じるなど、「マイナス金利」導入以降の低金利下にあって、信用金庫の資金運用は一層厳しさを増している。


  • ※本調査は、2013年3月期本決算から5期連続で、「総資金利ざや」、「資金運用利回り」、「資金調達原価率」が判明できた主要152信用金庫を対象に、2017年3月期決算での「総資金利ざや」を調査した。「総資金利ざや」は、「資金運用利回り」-「資金調達原価率」で算出されている。資料は各信用金庫のディスクロージャー誌から抽出した。

資金全体の収益力を示す「総資金利ざや」

 信用金庫の「総資金利ざや」は、貸出金や余裕金等の運用収益力を表す「資金運用利回り」から、預金などの資金調達コストを示す「資金調達原価率」を差し引いた数値。運用・調達全体の状況を利回りの差で表したもので、経営効率や収益力をみる指標の一つ。この数値がプラスだと資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示す。

「総資金利ざや」の中央値は0.07%、調査開始以来で最低

 152信金の2017年3月期では、「総資金利ざや」の中央値(全データを昇順または降順に並べた場合に、真ん中に位置する値)は0.07%だった。前年同期(0.13%)より0.06ポイント低下し、調査開始の2013年以降では最低にとどまった。このようにマイナス金利の導入後で初の通期決算となった2017年3月期は、「総資金利ざや」の落ち込みが目立った。
 「総資金利ざや」の分布状況では、最も多かったのが「0.0%以上0.1%未満」の67信金だった。次いで、「0.1%以上0.2%未満」が30信金と続く。

主要152信用金庫 3月期決算 利ざや中央値推移

主要信金の8割で「総資金利ざや」が縮小

 主要152信金の「総資金利ざや」の前年同期との比較では、2017年3月期は130信金(構成比85.5%)で前年同期より縮小した。一方、前年同期より「総資金利ざや」が拡大したのは19信金(同12.5%)にとどまり、前年同期と同じが3信金だった。

「逆ざや」は3.4倍増に

 「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は、2017年3月期が24信金にのぼり、前年同期(7信金)より3.4倍に急増した。
 3月期決算での「逆ざや」は、これまで調査開始の2013年が5信金、14年が4信金、15年が5信金、16年が7信金と緩やかな増加で推移してきたが、2017年は一転して著しい増勢をみせた。
 こうした「逆ざや」の急増は、銀行を含めた金融機関の貸出競争の厳しさに加え、2016年2月に導入された「マイナス金利」導入の影響が窺え、信金の本業収益の深刻な低迷を反映した。

98%の信金で「資金運用利回り」が低下

 また、貸出金や余裕金等の運用収益力を表す「資金運用利回り」は、2017年3月期では149信金(構成比98.0%)で前年同期より低下し、ほとんどの信金で運用難に直面している。
 2017年3月期での「資金運用利回り」の分布状況をみると、「1.0%以上1.2%未満」が81信金で最も多かった。次いで、「1.2%以上1.5%未満」が43信金と続く。
 なお、資金運用利回り「1.0%未満」の3月期決算の推移では、2013年はゼロだったが、14年に1信金、15年3信金、16年が10信金と2桁になり、17年はさらに20信金に拡大して信用金庫の資金運用が最近とみに難しくなっていることを浮き彫りにした。


 信用金庫は、営業地域が限定されているなかで、地元の地銀や同業などとの貸出金の金利競争が激しさを増し、経営のホームグラウンドである地域経済の疲弊が経営環境の厳しさに追い打ちをかけている。主要152信用金庫の2017年3月期決算では、「総資金利ざや」の逆ざやは24信金に増え、調査を開始した2013年以降で最多を記録した。マイナス金利の導入もあり、貸出金利息や資金の運用益が落ち込んだことが影響した。
 関係者からは「貸出での低金利競争など消耗戦から抜け出さないと経営体力を失い、地域を支えるコミュニティーバンクの機能が果たせなくなる」との危機感も高まっていて、金利だけに頼らない新たな営業モデルの模索が今後も続く。同時に、このまま厳しい収益環境が続くと、業界の広範囲な再編・合併も避けて通れなくなるとみられる。

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「鳶工事業」が苦境、倒産が過去最多ペース ~ 16年ぶり100件超、職人不足とコスト対応がネック ~

「建設現場の花形」と言われる鳶職人の世界に逆風が吹く。足場から鉄骨、支柱工事など建設現場で欠かせないが、倒産が過去最多ペースだ。有効求人倍率は7.94倍と深刻な人材難の鳶業界にあって採用難と高い技能、経験が若者の育成に足かせになっている。鳶工事業の倒産を分析した

2

  • TSRデータインサイト

「渋谷区」が倒産最多、2年連続も視野 ~ 倒産企業の半数が業歴10年超、新設法人は伸び鈍化 ~

街の主役は若者から大人へ。再開発で変貌を遂げる「シブヤ」に異変が生じている。 渋谷区に本社を構える企業倒産(1-8月)は、全国の市区郡別で最多の123件に達した。昨年(2025年1-12月)は161件で2007年以来、18年ぶり全国ワーストだった

3

  • TSRデータインサイト

2025年度の書店の利益、前年度の4.6倍に拡大 黒字企業が7割も、「増収増益」は13.4%

「本離れ」が言われて久しいが、書店経営が回復に転じた。全国の主な書店304社の2025年度の売上高合計は、6,121億4,000万円(前年度比1.6%増)、利益合計は40億2,600万円(同365.4%増)で、売上高は微増だったが、利益は前年度の4.6倍に急回復した。

4

  • TSRデータインサイト

翻訳業が苦境、利益は3年で7割減 ~ AIと競合で破産したケースも ~

AIが翻訳業界にドラスティックな変化を迫っている。日進月歩で精度が向上するなか、言語間の壁が低くなっている。この余波が翻訳業界に広がり、業績は3期連続で減収減益に追い込まれた。

5

  • TSRデータインサイト

「畳製造業」 伝統産業に忍び寄る市場変化と後継問題 売上は3年連続で低迷、業歴100年超の老舗が2割超

9月24日は「畳の日」。全国畳産業振興会が4月29日と9月24日の年2回定めている。日本の住文化の伝統を引き継ぐ畳のすばらしさをアピールすることが目的だが、畳製造業が長期低迷に陥っている。 全国の主な「畳製造業」256社の2025年度の売上高合計は402億7,700万円(前年度比1.3%減)だった

TOPへ