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2017年全国「社長の住む街」調査

 2017年の全国「社長の住む街」社長数トップは、2014年の前回調査に続いて東京都「港区赤坂」だった。企業数が圧倒的に多い東京や大阪の大都市圏の中でも、「職住近接」の傾向が強まり都心の街が順位を上昇させた。一方、地方都市では前回より順位を下げるところが目立ち、人口流出や産業の低迷をうかがわせた。社長数を人口で割った“社長比率”でも大都市圏で高く、地方で低くなる傾向が表れた。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース約297万社の代表者データ(個人企業を含む)から、社長の居住地を抽出しランキングにまとめた。前回調査は2015年4月発表。なお、社長居住地の最小単位は「町」ベースで、「丁目」の区別はしていない。
  • 同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高が高い企業を優先し重複企業を集計対象外とした。

社長が多く住む街トップは東京都「港区赤坂」、「新宿区西新宿」が2位に浮上

 全国297万社の中で社長が多く住む街のトップは、前回と同じく東京都「港区赤坂」の2,488人。戦後、銀座と並ぶ高級繁華街として栄え、外資系企業や大使館の社員・駐在員など外国人の多い街として華やかなイメージを持つ。
 2位は、東京都「新宿区西新宿」の2,132人。前回の3位から順位を上げた。日本屈指のターミナル新宿駅の西側一帯の地域で、あらゆるアクセスの中心として高い利便性を誇る。
 3位は、東京都「港区六本木」の2,052人。前回5位から2ランクアップした。トップの赤坂と隣接し外資系企業や大使館が多く所在する傍ら、東京有数の繁華街でもある。

2017年社長の住む街ランキング(町村ベース)

話題の東京都「江東区豊洲」がランク急上昇

 10位以内では、「江東区亀戸」が1,700人で前回と同じ9位の座を守った。江東区は江戸時代からの住宅地域として発展してきたが、現在は東京中心部への交通アクセスが便利な場所として大型マンションが相次いで建設されている。また、学問の神様・亀戸天神で知られる亀戸は、住宅や町工場、商店が混在した地区で、「職住近接」の中小企業社長が多い。
 11位以下では、“高級住宅街”の代名詞、東京都「大田区田園調布」の前回18位から25位へのダウンと対照的に、つくばエクスプレスの開業で利便性が増した「荒川区南千住」(前回21位→18位)、都心に近いウォーターフロント「中央区勝どき」(同26位→22位)、築地市場の移転で注目の「江東区豊洲」(同43位→27位)の順位上昇がみられた。共通して都心へのアクセスが良く、大型マンションの建設が相次ぎ、人気急上昇のエリアだ。

東京・大阪の大都市圏周辺地域が上位に

 東京都以外では、51位(前回47位)に神奈川県「三浦郡葉山町」の1,090人。葉山御用邸で知られる風光明媚な保養地として知られ、著名人の自宅や別荘などが多く、海水浴場や葉山マリーナなどのマリンスポーツ施設がある。
 54位(同48位)には、福岡県「筑紫郡那珂川町」の1,073人。自然環境に恵まれ、県庁のある福岡市の中心部から至近距離に位置し、ベッドタウンとして都市化が進んでいる。
 78位(同98位)は大阪府「大阪市西区南堀江」が920人で前回から20ランクと大幅にアップした。2000年前後から若者向けの商業店舗が並ぶ街として人気を集め、大阪都心への職住近接を強みとした高層マンションの再開発も進んでいる。
 僅差で続く80位(同74位)には、福岡県「糟屋郡志免町」の919人。福岡空港に近く、福岡市のベッドタウンとして住宅が開発された。また2つの工業団地があり、機械、金属工業を中心に従事する人も多い。
 92位(同86位)には、神奈川県「横浜市青葉区美しが丘」の860人。東急電鉄が開発する田園都市として広い街路や遊歩道を配し東京都心へのアクセスも良く、1980年代にヒットしたテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」の舞台にもなり町のブランドイメージが高い。

「都心回帰」の流れは変わらず

 全国の社長のうち、約2割が住む東京都の街が上位を占めたランキングは当然の結果といえる。上位の顔ぶれからは、(1)職住近接、(2)交通アクセスの良さ、(3)買い物が便利であること、(4)繁華街や文化施設にも近いこと、(5)災害リスクの低さなどを重視する「都心回帰」の動きに変わりがないことがうかがえる。

2017年社長の住む街ランキング(市区郡ベース)

市区郡別 東京都世田谷区が3万8,705人でトップ

 さらに範囲を広げて市区郡別でみると、最多が東京都世田谷区の3万8,705人。次いで、東京都港区2万5,082人、東京都大田区2万1,981人、東京都練馬区2万1,108人の順で4位までが2万人を超えた。東京都特別区では前回調査と同じ順位が大半の中、新宿区(5位)と渋谷区(6位)がそれぞれ1ランクアップしており、ここでも「職住近接」志向の強まりがうかがえる。

東京都以外の市区郡別では、前回より順位の下げ幅が大きい

 東京都以外では、14位の埼玉県川口市が1万4,046人、17位の鹿児島県鹿児島市が1万1,370人、20位の千葉県船橋市が1万699人、21位に町工場が多い大阪府東大阪市が1万618人、22位の千葉県市川市が1万591人と続き、23位の兵庫県西宮市1万583人までが1万人超で上位に並んだ。
 以下、27位に千葉県松戸市(前回28位)、28位に香川県高松市(同25位)、30位に石川県金沢市(同26位)、33位に兵庫県姫路市(同29位)、36位に栃木県宇都宮市(同32位)、37位に大分県大分市(同35位)と続くが、2ランク以上のダウンとなったところが多い。
 大都市圏内の街が順位を上昇または維持するのと対照的に、人口流出や産業停滞に悩む地方都市の現状を反映している格好だ。

市区郡別“社長比率”も大都市圏が高く、地方では低い傾向が

 社長数を人口で割った“社長比率”を市区郡別でみると、トップは東京都港区で10人に1人(10.0%)が社長との結果が出た。2位には社長数では89位と東京都23区で最少だった千代田区が8.7%でランクイン、3位は東京都渋谷区(8.6%)だった。社長数では10位までを全て東京都23区が占めたが、社長比率では大阪市中央区(5位、6.2%)、大阪市西区(9位、4.8%)、大阪市天王寺区(10位、4.6%)の3区が食い込んでいる。
 また、社長数で10位までに入る東京23区の社長比率は最も低い足立区でも2.5%だったが、東京都以外の社長数上位10市区郡では、社長比率が2.5%を上回った市はゼロだった。社長比率においても大都市圏で高く、地方では低くなる傾向が表れた。

2017年社長の住む街ランキング(都道府県庁所在地)

都道府県庁所在地の“社長比率” 大都市圏の中核市が上位に

 47都道府県庁所在地の社長比率順位では、東京23区が唯一3%台の3.8%でトップだった。次いで、大阪市2.7%、福岡市2.38%、名古屋市2.33%、京都市2.29%と続き、上位は各都市圏の中核市が占めた。
 大都市圏以外では福井市が6位(2.24%)、甲府市が7位(2.23%)、徳島市が10位(2.17%)に入った。東京商工リサーチが今年行った「全国社長の輩出率、地元率」調査において、徳島県が輩出率1位、山梨県が6位、福井県が11位の結果が出ており、社長比率との相関がみられた。
 社長比率が最も低かったのは山口市(1.1%)で、山口県には人口で上回る下関市があり、県内において県庁所在地に偏らない人口分布が影響しているのかもしれない。2番目に社長比率が低かった津市(1.43%)も、三重県内では四日市市が人口を上回っており、同様の影響とみられる。

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