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2016年「全国社長の輩出率、地元率」調査

 2016年の都道府県別の社長「輩出率」は、徳島県が3年連続でトップだった。また、社長が出身地の都道府県にとどまる「地元率」は沖縄県が94.1%と他を圧倒、調査開始以来、7年連続のトップを守った。
 出身地の上位は東京都、北海道、大阪府、愛知県など、大都市圏や中核都市が上位を占めた。
 社長の「地元率」は、地理的条件が影響した沖縄県や北海道を除き、愛知県や広島県、静岡県の比率も高かった。地域内に自動車産業など裾野の広い基幹産業を抱えており、社長「地元率」にも影響していることがうかがえた。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース296万9,431社(2016年12月時点)の代表者データ(個人企業を含む)のうち、公開された出身地を抽出、集計した。なお、同一人物が複数の企業で社長を務めている場合、売上高が高い企業を優先し重複企業を集計対象外とした。集計対象外企業は20万4,853社。
  • 都道府県別の社長数は人口に左右されるため、出身都道府県別の社長数と人口(総務省「人口推計」2016年10月1日現在)を対比し、2016年の社長「輩出率」を算出した。

都道府県別 社長輩出率

社長「輩出率」、徳島県が3年連続トップ

 「輩出率」トップは、3年連続の徳島県で1.36%(前年1.37%)。県民性は堅実・実利を尊び、質素・倹約のストレス発散が「阿波踊り」との説もある。現在、ブロードバンド環境に取り組み、先端産業・ベンチャー企業集積を目標に掲げている。
 徳島県の人口は74万9,014人(2017年1月1日時点)。18年連続で減少し、戦後初めて75万人を割り込んだ。関西圏に近く、住民の転出が転入を上回る状況が続き、社長「輩出率」トップには人口動向が関わっている可能性もある。

首都圏のベッドタウンは「輩出率」が低率

 2位は山形県の1.28%。「辛抱強くて、堅実」な県民性に加え、江戸時代から商工業が活発な土地柄で、絹織物「米沢織」や「山形鋳物」など伝統工芸品が数多くある。
 東京商工リサーチが9月にまとめた「全国明治創業企業調査」で、山形県は明治創業率が最高の1.9%と全国平均(0.7%)を大きく上回り、老舗企業が目立った。ただ、1985年に126万人だった人口は、2016年10月には111万人に縮小し、人口減少が進行している。次いで、香川県1.19%、秋田県1.16%、愛媛県1.04%の順。
 一方、輩出率が低いのは47位に埼玉県(0.26%)、46位に千葉県(0.27%)、45位に神奈川県(0.33%)と首都圏のベッドタウンが続く。

社長の出身地、最多は東京都、最少は鳥取県

 都道府県別の社長出身地は、トップが東京都。次いで、北海道、大阪府、愛知県、神奈川県、福岡県、広島県と、大都市や中核都市が続く。
 一方、最も少なかったのは鳥取県。次いで、滋賀県、佐賀県、島根県の順。トップの東京都と最少の鳥取県はともに7年連続となった。

地区別の社長「輩出率」、四国が7年連続トップ

 地区別の社長「輩出率」が、2016年で最も高かったのは、四国の1.12%(前年1.16%)で7年連続のトップを維持した。
 次いで、東北0.93%(同0.95%)、北海道0.92%(同0.98%)と続き、トップ3は前年と同じだった。以下、北陸0.85%(同0.92%)、中国0.85%(同0.89%)、九州0.76%(同0.80%)、中部0.67%(同0.70%)、近畿0.54%(同0.56%)、関東0.47%(同0.49%)の順。

都道府県別 社長地元率

社長の「地元率」、沖縄県が7年連続トップ

 地元出身者が地元企業の社長を務める社長の「地元率」では、トップは沖縄県が94.1%(前年94.2%)で7年連続のトップを守った。地理的条件に加え、産業構造が公共投資・観光・基地の「3K」に依存し、「製造業の不毛の地」とも揶揄されてきた。他県からの企業進出が少なく、雇用の受け皿も不足するなかで、全国平均より高い失業率が地元の開業率を引き上げているが、最近は医療福祉や観光客の増加に伴い飲食業などのサービス業の創業も目立つ。
 また、血縁のつながりが強く、支援が得やすい土地柄も創業を促進しているのかもしれない。

「地元率」、裾野の広い基幹産業の有無も影響

 「地元率」の上位は沖縄県に次いで、愛知県89.6%、北海道88.0%、広島県86.9%の順だった。愛知県や広島県は、裾野の広い自動車産業などの基幹産業を抱えている。周辺に取引先や関連企業が集中し、下請け等の取引先では先代の跡を継ぎ社長に就くケースも多い。
 一方、「地元率」が最も低かったのは奈良県の66.9%。次いで、長崎県67.9%、佐賀県68.2%、と続く。全国平均は79.8%で、21道府県で平均を上回った。

地区別の社長「地元率」、北海道が88.0%で断トツ

 地区別の「地元率」では、北海道が88.0%でトップ。次いで、中部84.2%、四国81.9%、北陸81.4%、東北81.3%、中国80.6%、関東78.0%、九州77.0%、近畿75.3%と続き、9地区のうち関東と近畿を除く7地区で前年より比率が上昇した。


 政府は国内全体の活力を上げることを目的に「地方創生」を主要政策に掲げている。しかし、地方は少子化と高齢化の同時進行で、活性化の源になる人口減少に歯止めがかからないところが多い。この状況が続くと、地方と大都市の地域格差、経済格差はこれまで以上に拡大していく。
 2016年の社長「輩出率」は、概して人口減少に苦慮する地域で高い傾向がある。これは比率算出の分母である県内人口が縮小し、相対的に輩出率が高止まりの状況が透けて見える。
 「地方には仕事がない」として大都市に人が集まるが、地方でも「人手不足」が表面化している。賃金水準の地域格差も拡大していて、地方の実態を直視した創業支援や、地域で根ざした次世代産業の創出など、官民手を携えた人材流出を防ぐ有効な手立てが急務になっている。
 こうした対策が機能すると、名実ともに社長「輩出率」が地方の活性化を測るバロメーターの一つになるだろう。

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