• TSRデータインサイト

楽天、「フリーテル」を5億2,000万円で買収

 9月26日、楽天(株)(TSR企業コード:294045082、東京都、東証1部)は、「フリーテル」ブランドで急成長していたプラスワン・マーケティング(株)(TSR企業コード:294809686、東京都、以下プラスワン)の国内MVNO事業(仮想移動体通信事業)を買収すると発表した。
 急速に拡大する格安スマートフォン市場は、新規参入が相次ぎ、業者数は約700社と群雄割拠の状態だ。楽天は買収で業界2位クラスに躍進するが、今後の業界再編の呼び水になる可能性も印象付けた。

買収対象事業の売上高は43億円

 楽天は11月1日付でプラスワンが展開する国内MVNO事業のうち、「freetel mobile」ブランドの通信事業、プリペイドSIM事業以外を買収する。対象事業の2017年3月期の売上高は43億2,900万円。楽天は買収を機に、「楽天モバイル」のブランド名で展開しているMVNO事業を更に拡大する方針だ。

買収対象事業は「債務超過」

 買収対象の資産は18億7,700万円に対し、負債は30億9,000万円で、純資産額は▲12億1,300万円の債務超過に陥っていた。負債のうち、29億7,700万円は流動負債で1年以内に弁済を迫られる可能性があった。楽天は買収で引き継ぎ債務の弁済義務を負うことになるが、「債務履行の見込みに問題はないと判断」と開示している。

楽天が承継する「フリーテル」事業

買収額は破格の5億2,000万円

 売上高43億2,900万円を稼ぎ出す事業の買収額は5億2,000万円で、売上高の12%に過ぎない。楽天は東京商工リサーチの取材に、「(買収金額は)両社で協議の上、決定した。(承継対象の)バランスシート内容も加味している」と語る。一方、プラスワンの担当者は「双方が協議し合意に至った。純資産の数値も判断基準の一つ」と話す。対象の事業資産の毀損が買収額を押し下げたことは明白だ。

プラスワンの今後

 プラスワンの2017年3月期(単体)の業績は、売上高が約100億円、最終利益が約▲55億円だった。今回の買収でこのうち43億円の売上高を失う。プラスワンは今後、モバイル端末の製造・販売を中心にした事業展開が見込まれる。買収対象の事業の従業員について、プラスワンの担当者は「両社で協議中である」と話す。
 一方、楽天は「MVNO事業を買収した後、楽天がプラスワンに出資する可能性は現時点ではない」と語るにとどめた。
 楽天とプラスワンの関係が今回の買収劇で深まるとは考えにくい。プラスワンが今後、独自に成長路線を描けるか注目される。

>

 TSR情報とは

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ