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2016年「電力事業者」の新設法人調査

 2016年(1-12月)に新しく設立された法人 (新設法人)12万7,829社のうち、電力事業者は前年比18.1%減の1,791社だった。調査を始めた2009年以降、初めて2年連続で前年を下回った。
 1,791社のうち「太陽光」、または「ソーラー」を利用エネルギーとする新設法人は、1,045社で前年から約3割(28.7%)減少した。再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)の固定価格買取制度(FIT)の中でも太陽光の値下がり幅は大きく、経営環境の激変で太陽光発電ビジネスへの参入意欲が急速に失われていることがうかがえる。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象327万社)から、2009-2016年に新しく設立された法人データのうち、日本標準産業分類に基づく中分類から「電気業」を抽出し、分析した。

2016年の「電力事業者」の新設法人数 前年比18.1%減

 2016年(1-12月)に全国で新設された電力事業者は1,791社(前年比18.1%減)だった。2011年の福島第一原子力発電所の事故で再生可能エネルギーが注目され、急速に新設法人数が増えていたが、FITの見直しなどで2015年に初めて前年を下回り、2016年も2年連続で減少した。

電力事業者 新設法人年間推移

利用エネルギー別 太陽光関連が前年比28.7%減少

 2016年に新設された電力事業者1,791社のうち、利用エネルギー別に分類すると主な事業内容が「太陽光」、「ソーラー」(以下、太陽光)の新設法人は1,045社(前年比28.7%減)で、前年より3割減と減少が際立った。
 風力は242社(同22.2%増)、地熱は126社(同18.8%増)など、太陽光以外の利用エネルギーは増加している。ただ、設置コストの兼ね合いなどで太陽光の減少を補う勢いは見当たらない。

電力事業者 新設法人年間推移 利用エネルギー別

都道府県別 29都道府県で前年比減少

 新設数トップは、東京都の566社(構成比31.6%)。次いで、愛知県の60社(同3.3%)、大阪府の58社(同3.2%)、福岡県の57社(同3.1%)と続く。47都道府県のうち、増加16県、横ばい3県、減少28都道府県だった。
 増加率が最も高かったのは、新潟県の116.6%(6社→13社)。新潟市に10社、長岡市に2社が新設された。減少率トップは、山梨県のマイナス78.5%(42社→9社)。2015年は「有限責任事業組合」が20社が新設されたが、2016年は2社にとどまった。

資本金別 「1百万円未満」が約5割

 資本金別では、「1百万円未満」が888社(構成比49.5%)で、約5割を占めた。これを含めた「1千万円未満」が1,575社で、全体の約9割(同87.9%)と小規模資本での参入が多いのが特徴。「1千万円以上」は142社(同7.9%)にとどまった。

法人格別 合同会社が大幅減

 法人格別での最多は、合同会社の957社(構成比53.4%)だった。ただ、前年より20.2%の大幅減少で、最多を記録した2014年の1,821社から半減(47.4%減)した。
 合同会社は、株式会社よりも設立コストが安く、決算公告も不要で、株主総会を開催する義務等がない。FIT導入以降、太陽光関連の事業者が発電設備ごとに同一住所地に複数の合同会社を設立するケースが相次いだが、太陽光ビジネスのブーム終焉から大幅に減少した。

法人格別 電力事業者 新設法人

 2012年7月に導入された再生可能エネルギーの固定価格買取制度で、太陽光を中心とした電力事業への新規参入が相次ぎ、「太陽光バブル」を生み出した。しかし、買取価格が段階的に引き下げられたことに加え、2016年5月には改正再生可能エネルギー特別措置法も成立(2017年4月施行)。電力会社と系統接続の合意が認定要件になり、参入条件が厳格になった。こうしたことを背景に「太陽光離れ」が顕著で、電力事業者の新設数は2年連続で減少した。
 政府は、エネルギーミックス(電源構成の最適化)の観点から再生可能エネルギーの普及拡大を目指している。ただ、太陽光偏重を問題視しており、買取価格の太陽光優遇は今後さらに縮小される可能性がある。
 長野市は「太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を改定し、2017年8月以降に着工される案件には「設置が適当でないエリア」などを設定する。
 電力事業者の新設数を押し上げていた太陽光は、政府の優遇策が縮小し、設備が設置される自治体では近隣住民とのトラブル回避に向けたルール整備が進んでいる。一方で、太陽光以外のエネルギーに太陽光の減少を補う勢いはみられない。こうしたことを背景に、2017年の電力事業者の新設数が再び増勢に転じるか動向が注目される。

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