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「さくら野百貨店仙台店」の運営会社 (株)エマルシェの債権者調査

 2月27日、仙台地裁へ破産を申請した「さくら野百貨店仙台店」を運営する(株)エマルシェ(TSR企業コード:291677851、宮城県仙台市)の主要債権者の所在地は、東京都と宮城県に集中していることがわかった。業種は、「繊維・衣服等卸売業」や「織物・衣服・身の回り品小売業」など、アパレル関連の小規模事業者が多い。エマルシェのように地元経済をけん引している百貨店、大型商業施設が行き詰まった場合、中小規模の納品業者への影響が懸念される。
 エマルシェが運営する「さくら野百貨店仙台店」は仙台駅前の好立地で、宮城県内で知名度は広く浸透していた。しかし、東日本大震災による一時的な営業停止や競合店の進出などで、経営に行き詰まり破産を申請した。負債総額は30億9,189万円だった。
 最大の債権者は店舗不動産を所有する「さくら野DEPT仙台」で、未払賃料は18億5,103万円に達する。エマルシェは業態こそ百貨店だったが、不動産は賃借で長らく賃料支払いが滞り債務が膨らんでいた。
 東京商工リサーチが入手したエマルシェの「破産手続開始申立書」によると、申立書の「債権者一覧」に記載された債権者(企業)のうち、未払賃料を除く債権額100万円以上の商取引債権者(買掛仕入、営業委託、敷金、諸経費)は168社あった。このうち、東京商工リサーチの企業データベースとマッチした152社を対象に、債権者の属性を分析した。


  • エマルシェの破産手続開始申立書の「債権者一覧」から債権総額100万円以上の商取引債権者168社(重複排除)のうち、東京商工リサーチの企業データベースとマッチした152社の所在地、業種、資本金等を分析した。
  • 152社の債権総額は6億4,804万円。債権額は申請時時点で確定債権とは異なる。

都道府県別ランキング

 債権者の本社地を都道府県別でみると、社数が最も多かったのは東京都の68社(構成比44.7%)。次いで、宮城県の27社(同17.7%)、大阪府の18社(同11.8%)の順で、上位3都府県で全体の74.3%を占めた。
 債権総額では、東京都の2億8,667万円(同44.2%)が最大。次いで、宮城県の1億817万円(同16.6%)、大阪府の8,261万円(同12.7%)の順。 1社平均でみると東京都が421万円、宮城県が400万円、大阪府が458万円だった。

エマルシェの債権者 都道府県別ランキング

業種別ランキング

 業種別では、繊維・衣服等卸売業が36社(構成比23.6%)で最も多かった。次いで、織物・衣服・身の回り品小売業、繊維工業が各19社(同12.5%)で、上位3業種はアパレル関連業種だった。
 債権額では、繊維・衣服等卸売業の1億1,241万円(同17.3%)、織物・衣服・身の回り品小売業の1億992万円(同16.9%)の順となった。

エマルシェの債権者 業種別ランキング

資本金別

 資本金別では、1千万円以上5千万円未満が61社(構成比40.1%)で最多だった。
 次いで、1億円以上が48社(同31.5%)、5千万円以上1億円未満が30社(同19.7%)と続く。

業種別ランキング(宮城県)

 宮城県に本社を置く債権者27社を業種別でみると、不動産業、織物・衣服・身の回り品小売業、飲食料品製造が各3社(構成比11.1%)だった。
 債権額が最も大きかったのは、電気・ガス・熱供給・水道業の2,570万円(1社、同23.7%)。

資本金別(宮城県)

 宮城県内に本社を置く債権者を資本金別でみると、最多は1千万円以上5千万円未満の17社(構成比62.9%)。次いで、5百万円未満の5社(同18.5%)だった。
 債権額では、1千万円以上5千万円未満が最も多く5,391万円(同49.8%)だった。


 1月20日に日本百貨店協会が公表した2016年の全国百貨店売上高は、既存店ベースで5兆9,780億円(前年比2.9%減)と2年連続でマイナスとなった。また、売上高は1980年の5兆7,225億円以来、36年ぶりに6兆円を下回った。免税品などのインバウンド効果の一巡に加え、婦人向け衣料品の不振が影響した。
 東名阪のゴールデンルートを除く地方都市はインバウンドの恩恵が乏しく、日本百貨店協会によると、仙台地区の百貨店3店舗の売上高は11カ月連続で前年割れが続いている。
 エマルシェが運営していた「さくら野百貨店仙台店」は、2011年3月の東日本大震災で一時的に営業停止に追い込まれた。さらに郊外に相次いでアウトレットモールがオープンし、2016年には「エスパル仙台新館」、「仙台パルコ2」などの競合店も開業した。これに伴い有力テナントの転出もあり、集客力が落ち厳しい業績が続いていた。
 エマルシェの主要債権者はアパレル関連業種に集中している。扱い商品の主力だったのが要因だが、債権額上位の「繊維・衣服等卸売業」、「織物・衣服・身の回り品小売業」、「繊維工業」、「なめし革・同製品・毛皮製造業」で77社(構成比50.6%)と、ほぼ半数を占めている。このうち、資本金1億円未満は51社で、規模の比較的小さい企業が多かった。
 百貨店業界は冬の時代が長く、大手百貨店でも郊外や地方店舗の撤退や統廃合を急いでいる。すでに百貨店の業績不振の余波で倒産に追い込まれた企業も出ている。百貨店を中心に事業展開していた婦人靴販売大手の(株)シンエイ(TSR企業コード:290081955、東京都台東区)は、2016年7月に負債63億422万円を抱えて民事再生法の適用を申請している。
 エマルシェの債権者は他の百貨店とも取引をしている可能性がある。百貨店業界の業績不振の影響は中小の納入業者の経営にいずれボディブローのように効いてくるだろう。
 地域一番店の百貨店の集客力は、消費者の導線という観点で街の活性化に大きな影響力をもつ。それだけに百貨店の動向は、地方都市ほど影響が大きく、今後も注目していくことが必要だ。

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