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18万社の倒産データからみた「倒産企業の社名調査」

 2000年以降に倒産した約18万社の社名(商号)をカナ読みすると「ア」「シ」「タ」で始まる企業が上位に並んだ。逆に、「ヲ(を)」で始まる企業は1社、「ン(ん)」はゼロだった。社名の文字数は「4文字」が最も多く、法人格では「前株(まえかぶ)」が4割を占めた。
 倒産企業と生存企業を比較すると、文字数では「4文字」が3.8ポイント、法人格別では「前有限(まえゆうげん)」が5.8ポイント、倒産企業の方がそれぞれ高かった。
 社名や法人格は自由に決定できるが、約18万社のデータ確率も参考になるかもしれない。将来の発展を夢見て起業した会社の「アシタ」は、社名から始まっているかも…。


  • 本調査は、東京商工リサーチが保有する企業データベースから、2000年1月1日~2016年10月31日までに倒産した法人17万9,577社と、生存企業131万2,043社の社名を分析した。
  • 文中及び表中の「ポイント差(P差)」は、倒産企業の構成比から生存企業の構成比を減じた数値を表示した。
  • 東京商工リサーチの倒産集計の定義は、負債額1,000万円以上の法人及び個人企業を対象に、法的整理(会社更生法、民事再生法、破産、特別清算)、私的整理(銀行取引停止処分、内整理)を集計している。

「倒産企業の社名分析」まとめ

(1)社名の頭文字は、カタカナの「ア」が最多。
(2) 社名のカナ読みで頭文字は「ア」、「シ」、「タ」の順で多い。
(3) 社名の文字数は4文字が最多。次いで、5文字、6文字の順。4~6文字で約6割を占めた。
(4) 社名のカナ読み文字数は、最も多かったのは8文字で、9文字、7文字の順。
(5) 法人格位置は、社名の「前」が7割(「前株」が4割、「前有」が3割)だった。

「倒産企業の社名判断」調査まとめ

社名の頭文字 カタカナの「ア」がトップ

 倒産企業の社名の頭文字は、カタカナの「ア」が7,203件(構成比4.0%)で最も多く、構成比ポイント差(P差)も0.8Pと最大だった。続いてカタカナの「エ」が5,552件(同3.0%、0.4P差)、漢字の「大」が5,183件(同2.8%、0.6P差)だった。アルファベットでは、「S」の412件(同0.2%、▲0.04P差)、平仮名は「み」の358件(同0.2%、▲0.03P差)が最多だった。

社名のカナ読み頭文字 「ア」が最多で、「シ」、「タ」の順

 社名のカナ読み頭文字で最多は、「ア」で1万1,442件(構成比6.37%)だった。次いで、「シ」が1万1,421件(同6.36%)、「タ」が1万726件(同5.9%)の順。「ン」は発生がなく、「ヲ」は1件と、好対照の少なさだった。
 生存企業との構成比ポイント差(P差)は「タ」が0.4P差で最も大きく、次いで「マ」0.39P差、「フ」0.37P差の順。一方、「ホ」は▲0.8P差と最小で、「カ」▲0.39P差、「イ」▲0.37P差と続く。

倒産企業のカナ読み社名の頭文字

社名の文字数 4文字が最多

 倒産企業の社名の文字数をカウントすると、「4文字」が5万4,444件(構成比30.3%)でトップ。構成比ポイント差も「4文字」が3.8P差と最大だった。一方、社名をカナ読みした場合の文字数は「8文字」が2万6,158件(同14.5%)が最多で、ポイント差も1.6P差と最大だった。

法人格の位置 「前」が最多

 倒産企業の法人格の位置では、社名の頭に付く「前株(まえかぶ)」、「前有(まえゆうげん)」など、法人格の「前」が13万2,151件(構成比73.5%)と7割を占めた。次いで、社名の後ろに法人格が付く「後」が4万7,383件(同26.3%)。社名の途中に法人格がある「中」はわずか43社(同0.02%)で、倒産企業は「前」が圧倒的に多かった。
 構成比ポイント差(P差)は、「前」が▲0.6P差と小さく、件数が少なかった「後」が0.7P差、「中」が▲0.01P差だった。倒産企業では「前」が圧倒的に多かったが、構成比ポイント差は「後」が大きかった。

倒産企業の法人格位置

法人格別 前株(まえかぶ)が約4割

 倒産企業の法人格別位置は、「前株(まえかぶ)」が7万1,460件(構成比39.7%)と最多だった。次いで、「前有(まえゆうげん)」が5万8,856件(同32.7%)、「後株(あとかぶ)」が4万1,168件(同22.9%)、「後有(あとゆうげん)」が5,385件(同3.0%)の順。
 構成比ポイント差(P差)は、「前有」が5.8P差で最大。次いで、「前株」の4.3P差、「後株」の2.8P差と続く。2006年5月施行の会社法で廃止された有限会社や、過去からある株式会社の構成比ポイント差が高くなっているのが特徴だ。

倒産企業の法人格別位置ランキング

 2002年10月の商業登記規則等の改正で、アルファベットやアラビア数字、「&」などの符号の一部も社名に使えるようになり、社名の幅が広がった。最近は、アルファベットや文字数が多い社名も増えている。
 太陽光発電を目的とする会社では、「○○1号」、「△△2号」などの社名もある。社名は企業の存在を表す象徴でもある。社名には設立の目的や社長の信念、時代背景など様々な思いが込められ、「社名」そのものが信用やブランドになっている企業も多い。それだけ社名は企業の顔で、会社の信頼を損ねる事態が発生すると大きなマイナス材料にもなる。
 企業の数だけ社名があり、簡単に統計だけで語ることはできない。だが、確率的に高い事象は、それだけ普遍性があるともいえる。縁起を担ぐか、偶然と捉えるか、受け止め方は千差万別だが、社名をふり返ることで事業を見つめ直す良い機会になるかもしれない。

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