• TSRデータインサイト

2016年「主な上場企業 希望・早期退職者募集状況」調査

 2016年に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業数は、調査を開始した2000年以降で最少になった。輸出企業を中心とした好業績を背景としているが、一方で業績好調の時期に将来のビジョンに沿って事業の「選択と集中」の一環として人員削減に取り組むケースも出ている。


  • 本調査は、2016年に希望・早期退職者募集の実施を情報開示、具体的な内容を確認できた上場企業を抽出した。希望・早期退職者の募集予定を発表したが、まだ実施に至っていない企業、および上場企業の子会社(未上場)は対象から除いた。資料は原則として『会社情報に関する適時開示資料』(2017年1月12日公表分まで)に基づく。

募集人数、3年連続の1万人割れ

 2016年に希望・早期退職者募集の実施を公表した主な上場企業は18社(前年32社)にとどまり、調査を開始した2000年以降で最少になった。募集実施企業数は、円安が進行した2013年から減少傾向をたどり、2016年の総募集人数は5,785人(前年9,966人)と前年から4割(41.9%減)減少し、調査を開始以来、3年連続で1万人を下回った。

主な上場企業 希望・早期退職者募集状況

募集および応募人数100人以上、前年より半減の8社

 募集または応募人数をみると、最多は東芝の応募3,449人。次いで、サニックスの募集500人、ケーヒンの募集400人、大日本住友製薬の応募295人と続く。募集または応募人数が100人以上は8社(前年17社)で、前年より半減した。また、業種別では、東芝、岩崎通信機など電気機器と三陽商会など繊維製品が各3社で最多だった。


 2016年の上場企業の人員削減の動きは落ち着きをみせた。だが、一眼レフカメラ大手のニコンは、訪日外国人の爆買いの恩恵を受け業績は好調だったが、「爆買いを特需と考え、今のうちに既存事業の構造改革を進める」と、2017年に希望退職者募集を実施する。このニコンのケースは、業績不振で人員削減に取り組む受け身の希望退職募集ではない。将来のビジネス展開を見据えた事業の「選択と集中」で、筋肉質の経営体質に向けた「攻め」の希望退職募集とも言える。
 今後、ビジネスの舞台はますますグローバル化を避けられないだけに、業績だけでなく事業戦略をにらんだ「選択と集中」に踏み切る企業がさらに増える可能性がある。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ