倒産企業23万社のデータからみる 「アンラッキーデー」調査
2000年以降に倒産した23万社のデータから意外な共通点が浮かび上がった。倒産は景気動向や支援政策、個別企業の事情に左右される。だが、倒産企業のデータを分析すると、「5日」、「水曜」、「仏滅」に偏り、気温が快適なお天気ほど倒産が多いことがわかった。
- ※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する国内最大級の企業データベースから、2000年1月1日~2016年5月20日までに倒産(負債額1,000万円以上)した22万8,787社を抽出し、分析した。
- ※22万8,787社の倒産のうち、設立月日の判明は12万7,348件。天気は気象庁の「過去の気象データ」を利用し、対象地域は東京。
- ※倒産発生日は、TSRの「倒産の定義」に基づき、倒産日として集計した日を採用した。
倒産日 「5日」が最多
倒産した22万8,787社の倒産発生日(倒産日)は、「5日」が最も多かった。次いで、10日、6日、7日、4日と、上位5位までが月初に集中した。これは月末に手形が不渡りとなり、土日をはさみ3営業日目に銀行取引停止処分を受けた企業が多かったことが主因とみられる。ただ、手形取引はこの20年で急激に減少し、法的手続きが増加している。このため今後の倒産日は若干前倒しされる可能性もあるが、決済日の五十日(ごとおび、5日や10日など)は依然として多く、月初に集中する傾向は変わらないだろう。
「水曜日」と「仏滅」は要注意
倒産発生の曜日別では、「水曜日」が最も多かった。一方、土曜日、日曜日は非常に少なかった。
暦の中で最も有名な暦注の六曜では、「仏滅」が最も多かった。次いで、「赤口」が入り、幸せを連想させる「大安」は3番目に多く、ご利益はあまりなさそうだ。一方、最少は「友引」だった。
最大級のアンラッキーデー 倒産件数が平均の3倍以上
倒産発生日で「5日」、「水曜」、「仏滅」の3つの悪条件が重なったのは、2000年1月以降、次の4回あった。2002年6月5日、2003年3月5日、2006年4月5日、2008年3月5日の倒産件数は、いずれもその年の1日当たりの平均件数を3倍以上も上回り、「最大級のアンラッキーデー」だった。
やはり悪条件がこれほど重なると、目に見えないパワーが蓄積されるのかも知れない。
なお、倒産発生日が「13日の金曜日」は合計29日あったが、倒産件数が100件を上回ったのは2007年4月13日(101件)だけ。同年の1日当たり平均件数は38.6件で、3倍に届かない。
倒産発生日の天気 雨が降るほど倒産は増える
気象庁の気象データ(降水量、降雪、平均気温)と倒産の平均発生件数(倒産件数/日数、以下1日平均)をクロス集計で分析した。
降水量別では、「降水量なし」は1日平均37.9件だった。これを基準にすると「10mm未満」は38.3件に増加、「50mm以上」は41.6件にまで跳ね上がる。これから見る限り、雨量が増えるほど倒産発生率は高まる。降雪別では、「なし」は1日平均38.2件だったが、「あり」は35.2件と減少し、雪の日は倒産が少なかった。気温別では、最多は「10℃以上20℃未満」の1日平均38.6件で、快適な過ごしやすい日に倒産が増える。一方、「5℃未満」は32.6件、「30℃以上」は36.4件だった。倒産は雪が降るような寒い日は少ないが、快適な気温で増え、雨が多いほど増える傾向がみられた。
倒産企業の設立月日 「1日」が最多
倒産企業のうち、設立月日(企業誕生日)が判明した12万7,348件を分析。最も倒産が多い設立日は4月1日で2,362件(構成比1.85%)だった。年度初めの設立企業が多く、比率的に倒産も多い結果となった。次いで、6月1日の1,655件(同1.29%)、5月1日の1,579件(同1.23%)など「1日」設立企業が多かった。
一方、1月2日、4月29日、11月23日、12月31日に設立された企業倒産はそれぞれ1件のみ。これから起業を目指す人は、運を天に任せるなら倒産が少ない設立日を選ぶことも大切かも知れない。
倒産発生の月日 最多は6月5日、最少は1月2日
22万8,787件の倒産発生日は、6月5日が最も多かった。今年(2016年)6月5日は日曜だったため、目立った倒産はなかった。次いで、12月5日、3月5日、2月5日、9月5日の順で、「5日」が上位を独占した。
一方、正月や祝日は金融機関が休みでもあり、1月2日はゼロだった。次いで、5月4日(みどりの日)と11月3日(文化の日)が各2件だった。うるう年の2月29日は264件で、全体では15番目の少なさだったが、4年に1度しかないことを考慮すると比較的、倒産は多いとも言える。なお、裁判所は休日でも法的手続きを申請できるため、休日・祭日に関係なく倒産は起こりうる。
2000年1月1日以降に倒産した22万8,787社の分析で、倒産は曜日や日にち、六曜、お天気により意外に偏って発生することがわかった。
最も倒産しやすいのは「5日」、「水曜」、「仏滅」の3つのキーワードが重なった日で、その日は該当年の平均件数の3倍以上の倒産が発生する「最大級のアンラッキーデー」である。数年に一度の「最大級のアンラッキーデー」が次に襲来するのは、ちょうど1年後の2017年7月5日だ…。
2016年上半期(1-6月)の企業倒産件数は4,273件(前年同期比6.4%減)と沈静化が続いている。これは金融機関が中小企業のリスケ要請に柔軟に応じ、複合的な政策支援策で下支え効果を生んでいることが背景にある。この結果、2016年上半期の1日当たりの倒産件数は23.47件(4,273件/182日)と低水準になった。
「アンラッキーデー」がわかれば、事前に注意することは可能だ。だが、企業の課題はそれぞれの企業しか解決できない。技術開発力や競争力の強化など、経営体質の強化に日々努め、成長をたどることも可能だが、経済のグローバル化の中で中小企業はどこで躓くか誰もわからない。そんな時は予想天気図を眺めながら、「アンラッキーデー」の厄除けで乗り切ることが気分転換になるかも。