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「足利銀行・常陽銀行取引企業」調査

 10月26日、地方銀行の足利銀行(栃木県)を傘下にもつ足利ホールディングス(栃木県)と常陽銀行(茨城県)が経営統合について検討していることが明らかになった。足利銀行は栃木県内で、常陽銀行は茨城県内でそれぞれのトップの地方銀行である。総資産は、足利銀行が5兆8,473億円(単体、2015年3月期時点)、常陽銀行が9兆359億円(同、同)で、両行合計では14兆8,833億円となる。コンコルディアFGを形成する横浜銀行(2015年3月期総資産15兆2,043億円)と東日本銀行(同2兆1,045億円)の総資産合計17兆3,089億円、ふくおかFGを形成する福岡銀行(同11兆5,353億円)・熊本銀行(同1兆5,538億円)・親和銀行(同2兆5,868億円)の総資産合計15兆6,759億円に次ぐ国内3位の総資産規模となる。
 両行の店舗数は合計255店舗(足利銀行103店舗、常陽銀行152店舗、2015年3月末時点)。金融界の地殻変動が起きつつあり、今後は地銀だけでなく他業態を巻き込んだ金融再編に繋がる可能性が出てきた。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象398万社)から、足利銀行・常陽銀行をメーン取引としている企業を集計、分析した。取材が可能な企業をデータベース化している。また、メーンバンクが数行ある場合は、最上位行をメーンバンクとして集計している。

両行をメーンバンクとする企業は3万588社

 足利銀行をメーンバンクとする企業数は1万4,459社、常陽銀行は1万6,129社で、合計3万588社。
 足利銀行をメーンバンクとする企業は、栃木県内が最も多く(1万1,138社、構成比77.0%)、茨城県内の企業は519社(構成比3.5%)にとどまる。一方、常陽銀行をメーンバンクとする企業は、茨城県内が最多で(1万4,006社、構成比86.8%)、栃木県内では392社(構成比2.4%)にとどまる。神奈川県、千葉県に本社を置く企業で両行をメーンバンクとしている企業は少ない。

都道府県別取引企業

産業別 貸出先構成は相似

 足利銀行をメーンバンクとしている1万4,459社の産業別内訳は、最多が建設業の4,721社(構成比32.6%)と3割を占めた。次いで、飲食業や宿泊業などを含むサービス業他が2,837社(同19.6%)、製造業2,058社(同14.2%)、小売業1,927社(同13.3%)、卸売業1,398社(同9.6%)の順。
 一方、常陽銀行をメーンバンクとしている1万6,129社の産業別では、最多が建設業の6,045社(同37.4%)、次いでサービス業他2,787社(同17.2%)、小売業2,167社(同13.4%)、製造業1,915社(同11.8%)、卸売業1,550社(同9.6%)と続く。
 両行とも展開する地域の産業構造が似通っているため、貸出先の産業別構成も共通点が多く、効率の良い経営が期待できるが、反面、新規取引先の創出は難しい側面を合わせ持っている。

産業別取引企業

まとめ

 2014年11月、横浜銀行と東日本銀行が経営統合の方向で最終調整に入っていることが報じられた。それから約1年後に北関東に基盤を置く足利銀行と常陽銀行が経営統合の検討を行っていることが明らかになった。足利銀行、常陽銀行ともに栃木県・茨城県を代表する県内のトップ銀行同士。今回の調査で、両行をメーンバンクとする企業は北関東に多い一方、南関東では少ないことが判明した。このため、今後は南関東やその他地域でのシェア創出が課題になってくる。
 金融庁は、地銀再編に積極的な姿勢を示しており、今後も有力地銀同士の統合が続くとみられる。再編により、人口が増加する地域などへは地方銀行の出店加速が見込まれる一方、旧来の営業エリアでは重複店舗の統廃合がなされる可能性もある。地方での過度な店舗数の減少は、金融機関と地元企業の関係性を希薄化させ、「目利き力」が低下し地元経済に悪影響を及ぼすことが懸念される。

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