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「日系企業の中国天津市進出状況」調査

 8月12日、中国天津市で危険化学物質を貯蔵する物流企業の倉庫で大規模な爆発が発生した。報道によると事故原因の解明が遅れ、爆発による大量の有害物質の流出も疑われている。時間とともに企業活動への影響は薄らいでいるが、進出している日系企業の状況などを調査した。
東京商工リサーチが独自に保有する国内企業データベースと、提携するDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート、本社・米国)が保有する世界最大級の海外企業データベースを活用し、日系企業の中国天津市への進出状況を調査した。これによると中国天津市には日系企業の拠点は205カ所あり、支配権最上位の日系企業数は161社だった。

  • 本調査は、Dun & Bradstreetが提供する「WorldBase」と東京商工リサーチが保有する企業データベースを活用した。「WorldBase」より中国天津市の事業拠点(以下、拠点)を抽出し、拠点を管轄する企業の支配権(議決権・所有権)を50%超有している企業を特定。特定された企業がグループにおける頂点企業ではない場合、同様の方法でグループ最上位企業を特定。特定されたグループ最上位企業が日本に所在する場合、日系企業とした。このため、支配権が50%以下の場合は集計対象外とした。
  • 業種分類は、米国連邦政府が開発し世界的に広く普及しているSICコード(Standard Industrial Classification Code)の1987年版を採用した。

調査結果のポイント

 ・日系企業は中国天津市に161社が進出、205拠点を構えている
・全体の約7割が製造業
・リーマン・ショック(2008年)以降、拠点開設は低水準である
・議決権最上位企業数が最も多い都道府県は東京都

業種別:輸送用機械器具製造業が約2割

 天津市の日系企業205拠点のうち、業種別では製造業が147拠点(構成比71.7%)で最も多く、内訳は輸送用機械器具製造業が最多の40拠点(同19.5%)だった。中国の自動車関連産業の集積地と言われる天津市に日系自動車関連メーカーが数多く進出していることがわかった。一般機械器具製造業の24拠点(同11.7%)、電気機械器具製造業の19拠点(同9.2%)と続く。
卸売業は28拠点(同13.6%)、サービス業は15拠点(同7.3%)だった。
銀行業や保険業など金融業は4拠点、飲食業と不動産業はそれぞれ1拠点にとどまり、日系企業の中国天津市への進出は製造業に偏重している。

業種別天津市進出拠点数

開設年別:2000年以降に開設された拠点が6割

 2000年以降の開設は123拠点で、全体の6割を占めた。なかでも2003年は25拠点、2004年は26拠点と開設が多く、この2年だけで全体の約4分の1を占めている。リーマン・ショック(2008年)以降は開設が鈍化し、2009年は1拠点、2010年は2拠点にとどまった。その後、2010年代に入ると拠点の開設数は復調しているが、それでも1けた台の推移である。
※設立年不明が12拠点存在するため、合計は205拠点にならない。

支配権最上位企業の本社:東京都がトップ

 205拠点の支配権最上位企業は161社で、日系企業1社当たり1.27拠点だった。支配権最上位企業の本社は東京都が最も多く57社(構成比35.4%)だった。次いで、大阪府の26社(同16.1%)、愛知県の25社(同15.5%)と続く。この3都府県で全体の67.0%を占めている。京都府も大手メーカー中心に7社が拠点を開設、5位にランクインした。地区別では、北海道がゼロ、中国が1社、九州と東北が各2社で、天津市への進出は大都市の製造業が中心で、地方に本社を構える企業は中国天津市への進出が鈍いことがわかった。

 日系企業は中国天津市に205拠点を構え、うち製造業が7割を占めていることがわかった。天津市に置かれた拠点の大半は2008年のリーマン・ショック以前に開設されたもので、ここにきてようやく増加の兆しもうかがえるが、まだ本格化には至っていない。リーマン・ショック以前は、安い人件費と豊富な労働力を背景に製造業の進出が相次いだ。さらに、製造業だけでなく流通業でも人口13億人を有する有望な市場として消費の魅力は大きい。
しかし、昨今の人件費高騰や景気減速、天津市の爆発事故などもあり、中国のカントリーリスク、いわゆる「チャイナリスク」が急速に注目されている。東京商工リサーチの調査では、上場企業3,613社のうち、約2割にあたる694社がチャイナリスクを事業上のリスクと認識している(10月5日発表)。また、2015年上半期(4-9月)のチャイナリスク関連の倒産件数は43件で、前年同期の30件から大幅に増加した(10月8日発表)。
4月以降、「チャイナリスク」関連倒産が増加している。中国は世界第2位の経済大国に成長したが、中国ビジネスは経済成長に伴い当初のメリットが希薄化している部分も出てきている。今後は、様々な角度から巨大市場の将来性とチャイナリスクを分析し、有望市場でのビジネスに取り組んでいくことが必要だろう。

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