• TSRデータインサイト

「円安」関連倒産 2014年は前年より2.0倍増の282件

 2014年12月5日の外国為替市場は一時1ドル=121円台まで円安が進み、2007年7月以来、7年4カ月ぶりの円安水準になった。日銀の追加金融緩和の決定以降は円安に拍車がかかっている。
急速な円安は輸出企業には収益を押し上げるメリットもあるが、海外からの輸入に頼るエネルギー、資源、食料品など幅広い分野では物価を押し上げ中小企業の体力を消耗させている。
倒産全体は中小企業への年末資金の円滑化が図られ抑制されたが、2014年12月の「円安」関連倒産は22件(前年同月比69.2%増、前年同月13件)と9カ月連続20件以上で推移している。原油価格の急落などでガソリン、鋼材など価格が下落している商品もあるが、範囲は限定的にとどまっている。このため円相場の推移次第では、体力を疲弊している中小企業の倒産を後押しすることが懸念される。

円安関連倒産月次推移

2014年は282件 前年より2.0倍増

 2014年(1-12月)の「円安」関連倒産は282件(前年比102.8%増、前年139件)で、前年比2.0倍増で推移した。過去の「円高」倒産との比較では、2010-11年の「円高」関連倒産が2年間で136件だったのに対し、2013-14年の「円安」関連倒産は2年間で421件と、単純比較で3倍に膨らんでいる。円相場は、円高時の2011-12年の2年間で約12円変動したが、今回の円安は2013-14年の2年間で約30円変動しており、急速な為替変動が中小企業の経営を直撃したことを示している。

41都道府県で発生 全国に広がる「円安」関連倒産

 2014年の地域別では、41都道府県で「円安」関連倒産が発生した。地区別では、関東108件を筆頭に、中部45件、近畿31件、九州24件、東北21件、北海道17件、北陸13件、中国13件、四国10件と全国に広がっている。
産業別では、最多が運輸業の100件(前年比44.9%増、前年69件)。人件費上昇などで体力が弱体化したところに年央までの燃料価格の高止まりが影響した。次いで、製造業が58件(同87.0%増、同31件)、卸売業50件(同316.6%増、同12件)、サービス業他27件、小売業が18件と続く。
形態別では、最多が破産の203件(同100.9%増、前年101件)と2倍増。次いで、取引停止処分が59件(同126.9%増、同26件)、民事再生法が12件(同20.0%増、同10件)の順だった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ