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上場企業2,375社の平均年間給与 製造業、電気・ガス業で前年比減少

上場企業2,375社の2013年3月期決算の平均年間給与は598万1,000円(前年比1万円増)だった。調査を開始した2010年3月期以降、3年連続で増えたが、伸び率は0.1%増(前年1.3%増)と鈍化した。業種別では、最も高かったのが電力会社を含む電気・ガス業の693万2,000円、最も低かったのは小売業の489万3,000円だった。上位50社をみると、放送と金融・保険(各9社)、総合商社(7社)で半数を占めた。また、不動産では三井不動産、三菱地所、東急不動産の3社、広告代理店では電通、博報堂DYホールディングスの2社がランクインして、業界大手の高水準を裏付けた。一方、建設業、小売業は1,000万円以上の企業が1社もなく、業種間でまだら模様をみせた。

  • 本調査は、2013年3月期決算の全証券取引所の上場企業を対象に有価証券報告書の「従業員の状況」から平均年間給与を抽出した。2010年3月期決算から比較可能な企業を対象にし、変則決算企業は除いた。業種分類は証券コード協議会の定めに準じ、純粋持株会社の業種は、傘下の主力事業を( )内に表示した。

平均年間給与の「増加企業」は1,248社 前年より192社減少

上場企業2,375社のうち、平均年間給与が前年より増えたのは1,248社(構成比52.5%、前年1,440社)、減少が1,116社(同46.9%、同922社)、横ばいが11社(同0.4%、同13社)だった。
平均年間給与が「増加した企業」は、前年より192社、13.3%減少した一方で、「減少した企業」は前年より194社、21.0%増えた。平均年間給与が「増えた企業」の構成比は、前年の60.6%から8.1ポイント低下し、長引くデフレや2012年秋口まで続いた歴史的水準の円高で先行きが不透明な中、経費削減が人件費にも及んでいたことを浮き彫りにした。

業種別 製造業、電気・ガス業で減少

業種別で平均年間給与が最も高かったのは、電力会社を含む電気・ガス業の693万2,000円(前年比3.5%減)で、最も低かったのは小売業の489万3,000円(同0.6%増)だった。
主な電力会社では、中部電力が801万4,000円、中国電力793万8,000円、関西電力782万8,000円、東京電力619万6,000円だったが、電力会社10社すべてで前年を下回った。
全体では、10業種のうち7業種で前年を上回った。増加は、サービス業(1.4%増)、不動産業(1.4%増)、金融・保険業(0.6%増)、小売業(0.6%増)、運輸・情報通信業(0.5%増)、卸売業(0.5%増)、建設業(0.1%増)。一方、減少は電気・ガス業(3.5%減)、水産・農林・鉱業(2.4%減)、製造業(0.2%減)の3業種だった。

金額別では1,000万円以上が41社 600万円未満が全体の55.7%を占める

平均年間給与の上位3社は、トップがエンターテインメント・コンテンツ事業などを統括する純粋持株会社のスクウェア・エニックス・ホールディングスの1,925万8,000円。2位が日本テレビホールディングスの1,491万6,000円、3位が東京放送ホールディングスの1,484万5,000円の順。上位10位までに、放送は純粋持株会社や準キー局が4社、大手商社も三菱商事1,419万3,000円など4社がランクインして、放送、総合商社の突出ぶりが目立った。
これに対し、建設業と小売業の最高は、建設業が日揮の973万2,000円、小売業はWDIの947万8,000円で、依然として業種間の格差は大きいようだ。
前年比較の増加率が、最も高かったのは東急コミュニティーの72.7%増(340万5,000円→588万2,000円)、2013年3月期から正社員(契約社員を除く)だけの算定方法に変更したことが影響した。2位が燃料商社を傘下に抱えるミツウロコグループホールディングスの53.8%増(815万8,000円→1,255万2,000円)。3位がeディスカバリ事業(電子証拠開示支援事業)を展開するUBICの43.7%増(457万4,000円→657万5,000円)の順だった。
年間給与の金額別構成比では、1,000万円以上が41社、700万円以上1,000万円未満が394社、600万円以上700万円未満が615社、500万円以上600万円未満が748社、500万円未満が577社。600万円未満の構成比が55.7%を占めた。なお、最高金額のスクウェア・エニックス・ホールディングスと最低となった企業の平均年間給与は7.5倍の開きがあった。

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