• TSRデータインサイト

都道府県別赤字法人率 全国平均75.2%

2011年度の赤字法人率は4年ぶりに前年度を下回った。「東日本大震災」の発生が2010年度末だったが、震災からの復興の立ち上がりが早かったことや復興需要も寄与したとみられる。
ただ、地区別では東北の赤字法人率だけが上昇した。特に、被災3県(宮城、岩手、福島)の上昇が目立ち、震災の深刻な影響を浮き彫りにした。産業別では、震災後の消費自粛、節約志向から小売業の比率が最も高かった。

  • 本調査は、2013年6月公表の国税庁統計年報(平成23年度版)の法人税に基づき、2011年度の都道府県別の赤字法人率(普通法人)をまとめた。赤字法人率は、普通法人を対象に赤字(欠損)法人数÷普通申告法人数×100で算出し、小数点第3位を四捨五入した。なお普通法人は、会社等(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、協業組合、特定目的会社、相互会社)、企業組合、医療法人などを含む。

地区別 東北を除く8地区で低下 東北は前年度より1.2ポイント悪化

都道府県別では20都府県で全国平均を上回った。このうち赤字法人率が最も高かったのは、徳島の81.0%で5年連続の首位。次に宮城80.5%、長野79.5%と続く。前年度まで上位3県の顔ぶれは3年連続変わってなかったが、2011年度は震災の影響から宮城が、前年度19位から2位に急上昇した。以下、群馬78.7%、静岡78.2%、栃木78.0%と続く。
一方、赤字法人率が最も低かったのは5年連続で沖縄(66.0%)だった。公共工事の依存度が高い地元建設業では、赤字決算だと公共事業の受注が難しくなるため、黒字捻出に重点を置く地元事情も影響した。次に青森68.3%、佐賀69.8%、長崎69.8%、福岡70.9%と続く。
地区別では、四国の77.3%が最も高かった。次に中部77.2%、関東76.0%、東北75.8%、中国75.0%、北陸74.1%の順。前年度比では、9地区のうち8地区で前年度を下回るなか、東北だけが前年度より1.2ポイント上昇(74.6→75.8%)した。

前年度比 宮城が80.5%で4.2ポイント上昇

赤字法人率の前年度との比較では、42都道府県で比率が低下した。こうしたなか、宮城が前年度より4.2ポイント上昇(76.27→80.52%)で最も比率が上昇した。次に、岩手が2.3ポイント上昇(73.99→76.32%)、福島が0.8ポイント上昇(77.02→77.83%)と続き、宮城、岩手、福島の震災の被災3県が比率上昇の上位に顔をそろえ、震災の影響の深刻さを物語った。

赤字法人数 東北被災3県の増加率が突出

赤字法人数の増加率では、宮城が前年度比14.8%増(26,446→30,376社)で最も高かった。次に、岩手が同9.8%増(11,846→13,018社)、福島が同3.8%増(26,161→27,179社)と、ここでも被災3県が名を連ねた。一方、赤字法人数の減少率では石川が同3.4%減(17,979→17,354社)、福井が同2.8%減(12,571→12,215社)、長野が同2.7%減(34,140→33,219社)だった。
2011年度の全国の普通申告法人数は前年度比0.1%減だったが、都道府県別の増加率では、宮城が8.8%増で最も高率だった。次に岩手6.5%増、福島2.8%増、沖縄1.8%増、滋賀0.6%増と続く。被災した東北3県の増加率が群を抜いているが、普通申告法人の増加率より、赤字法人の増加率が上回り、震災の傷跡はここにも深く刻まれている。

産業別赤字法人率 最高は小売業の78.9%

産業別の赤字法人率では、10産業のうち運輸業を除く9産業で前年度を下回った。個別では、小売業が78.9%(前年度比0.5ポイント低下)で最も高かった。震災後の消費自粛、節約志向が響いた。次に製造業77.5%(同1.2ポイント低下)、農・林・漁・鉱業76.2%(同0.6ポイント低下)、建設業76.0%(同1.0ポイント低下)、情報通信業75.5%(同0.4ポイント低下)、サービス業他75.1%(同0.3ポイント低下)と続き、前年度より上昇したのは、燃料価格が高止まりが影響した運輸業の71.2%(同0.6ポイント上昇)だけだった。

2011年度の赤字法人率調査では、震災からの業績回復、持ち直しが全国的に進むなかで、被災した東北の復興の遅れが際立つ結果となった。赤字法人率は4年ぶりに前年度を下回ったが、地方経済の回復への足取りは鈍く、依然として4社に3社が赤字という厳しい状況だった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ