東証1部・2部上場メーカー416社 2013年3月期第3四半期「為替差損益」調査 ~ 為替差益1,599億円 前年同期の約7倍に好転 ~
2012年12月に新政権が誕生した以降、円安と株高に転じた。2月6日には2010年5月6日以来、2年9カ月ぶりに1ドル=93円79銭の円安水準を記録した。
円安で上場メーカーの収益は大幅に好転、東証1部・2部上場の主なメーカー416社のうち、2013年3月期第3四半期(4-12月期)に為替差益を計上したのは214社(構成比51.4%)で、前年同期の30社から7倍に急増した。為替差益の総額も1,599億4,500万円と前年同期の226億3,700万円から約7倍に拡大。円高修正が輸出メーカーの収益好転に直結していることがわかった。
一方、同期に為替差損を計上したのは84社で前年同期の300社から大幅に減少、為替差損の総額も332億5,500万円と、前年同期の2,730億5,400万円から約9割(87.8%減)も減少した。
大半の上場メーカーは、2013年3月期下期(10-3月)の想定為替レートを1ドル=75~79円、1ユーロ=95~100円に設定しており、急激な円安進行で為替差益の恩恵を受けた格好となった。
だが、自動車は新興国を中心に需要回復と円安で収益改善した一方、電機、半導体、精密などは為替差損を計上した企業も目立ち、市況低迷とドル、ユーロの為替変動で明暗を分けた。
- ※本調査は、東京証券取引所1部、2部に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー(3月決算)を対象に、第3四半期(4-12月期)の決算を集計した。
2013年第3四半期 為替差益額は前年同期の約7倍
上場メーカー416社のうち、2013年3月期第3四半期に為替差益を計上したのは214社(前年同期30社)、為替差益額は1,599億4,500万円(同226億3,700万円)と、それぞれ約7倍増だった。
416社のうち、214社(構成比51.4%)と半数が為替差益を計上した。市場別では、東証1部が180社(前年同期29社)、差益総額1,561億7,300万円(同226億2,600万円)。東証2部は34社(同1社)、差益総額は37億7,200万円(同1,100万円)で、両市場とも好転が鮮明だった。
一方、同期に為替差損を計上したのは84社(同300社)に減少、為替差損額も332億5,500万円(同2,730億5,400万円)と大幅に圧縮した。
為替差損を計上した84社は、市場別では東証1部72社(同248社)、差損総額328億8,900万円(同2,621億300万円)。東証2部は12社(同52社)、差損総額3億6,600万円(同109億5,100万円)だった。
想定為替レートが判明した上場メーカー94社のうち、66社(構成比70.2%)は2013年3月期の下期想定レートを歴史的な円高を背景に1ドル=75~79円に設定していた。だが、2012年11月以降の急激な円安進行で為替差益が大幅に膨らんだ。ただ、ユーロ市場を主力とするソニー、JVCケンウッド、富士重工業などは、対ユーロの想定レートが対ドルほど開かず恩恵は乏しかった。
為替差益額トップ 任天堂の222億2,500万円
2013年3月期第3四半期に為替差益を計上した214社のうち、差益計上額の最高は任天堂の222億2,500万円だった。前年同期は537億2,500万円の為替差損を計上したが、一転して為替差益を計上した。次いで、トヨタ自動車が133億6,600万円(前年同期:為替差益10億7,400万円)、三菱自動車工業が115億5,500万円(同:為替差損60億7,100万円)の順で、上位3社が100億円以上の為替差益を計上した。
214社のうち、前年同期に為替差損を計上したのは196社(構成比91.5%)で、輸出メーカーへの円安効果が大きかったことがわかる。
差益改善の上位10社は、任天堂759億5,000万円、日産自動車245億9,900万円、三菱自動車工業176億2,600万円、三菱重工業174億7,100万円、クボタ130億3,000万円、トヨタ自動車122億9,200万円、SMC108億4,400万円、マツダ102億2,600万円、富士通85億3,500万円、ローム78億6,900万円。
214社のうち、70社が業績修正
2013年3月期第3四半期に為替差益を計上した214社のうち、2013年1月以降に通期業績修正を発表したのは70社(構成比32.7%)あった。70社のうち、売上高の上方修正が21社、下方修正が37社、修正なしが12社。また、最終利益の上方修正は35社、下方修正は34社、修正なしが1社。なお、売上、最終利益ともに上方修正は18社、下方修正は29社だった。
通期売上・最終利益ともに上方修正した18社を業種別にみると、輸送用機器8社、機械4社、電気機器3社、その他製品2社、精密機器1社だった。上方修正の理由で、円安効果などの為替相場の変動をあげたのは10社(構成比55.5%)と半数を超えた。
一方、下方修正した29社の業種別は、電気機器14社、機械9社、輸送用機器4社、精密機器、その他製品が各1社だった。下方修正の主な理由は、16社(構成比55.1%)が中国などアジア市場の需要減速や世界経済の低迷をあげており、業種により円安でも深刻な需要減をカバーできない苦境の一端を垣間見せている。
円安進行は、グローバル展開を積極的に進める自動車には追い風になっているが、経営再建を進めるシャープ、パナソニックなど電機、半導体などには寄与度合いが低く、業種により明暗を分けている。新政権の打ち出す金融、財政、成長戦略のアベノミクスへの期待感先行で、株高、円安が進んでいる。だが、世界経済の停滞から2013年3月期通期決算を下方修正する上場企業も355社あり、円安が業績に寄与するにはしばらく時間を要すると思われる。