2012年度「コンプライアンス違反」企業の倒産 ~ 「粉飾」が減少し、脱税、滞納などの「税金関連」が増加 ~
2012年度(2012年4月-2013年3月)に法令違反や粉飾決算、談合、偽装などのコンプライアンス違反が一因となった企業倒産は141件だった。件数は前年度を下回ったが、違反内容別では脱税や滞納など「税金関連」が前年度を上回り、中小企業の苦しい経営の一面を浮き彫りにした。
- ※本調査の「コンプライアンス違反」倒産は、建設業法、貸金業法などの業法違反や金融商品取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給などをまとめた。
リスク管理の重要さが増す「コンプライアンス」
相次ぐ企業不祥事の反省から、「コンプライアンス(法令遵守)」が重要視されてきた。直接、法的な違反でなくても、「倫理や社会貢献などに配慮した行動」に反した社会的に不適切な行為は消費者、取引先などの信頼を失い、事業継続が困難になるケースも多い。企業にとってコンプライアンスは、リスク管理という視点からも経営の重要課題として浮上している。
2012年度の「コンプライアンス違反」倒産141件 前年度比17.0%減
2012年度にコンプライアンス違反が一因となり倒産した企業は141件だった。前年度(170件)より29件(17.0%減)減少した。年度上半期(4-9月)は前年同期比8.0%減(75→69件)だったが、年度下半期(10-3月)は同24.2%減(95→72件)と、年度後半にかけて減少幅が広がった。これはオリンパス、大王製紙など大手企業の相次ぐ不祥事で、社会的にもコンプライアンスへの意識が浸透したことが背景にあるとみられる。
負債10億円以上は29件
141件の負債総額は2,063億3,800万円(前年度比40.8%減、前年度3,491億3,000万円)で大幅に減少した。このうち、負債10億円以上の大型倒産は29件(前年度37件)にとどまり、構成比は20.5%だった。
主な倒産事例は、約10年にわたり税務申告書とは別に、取引金融機関別に粉飾した財務諸表を作成提出してきたワシ興産(株)(福井・負債404億円)と関連会社のワシマイヤー(株)(福井・同200億9,700万円)、法人税の脱税容疑で創業者・実質オーナーが逮捕されたソフトウエア興業(株)(東京・同180億円)など。
産業別 サービス業他が最多の44件
コンプライアンス違反倒産141件を産業別でみると、サービス業他が44件(構成比31.2%)で最も多かった。次いで、建設業25件、卸売業18件、製造業15件、情報通信業が11件、小売業10件、運輸業9件、不動産業7件、金融・保険業1件、農・林・漁・鉱業が1件だった。
最も多かったサービス業他では、ホテル、旅館などの宿泊業7件、ソフトウェア業6件、老人福祉・介護事業4件など。宿泊業では業績低迷が続いたところに、東日本大震災に伴なう消費自粛が加わり、売上不振から税金を滞納するケースがみられた。老人福祉・介護事業では、経営不振から介護報酬の不正請求などに手を染めたケースなどがあった。
違反内容別 脱税などの税金関連が46件
141件の違反内容別では、脱税や滞納などの「税金関連」が46件(前年度42件)で増加した。不正な会計処理を行い虚偽の決算報告の作成などの「粉飾」も13件(同29件)あった。このほか、公共事業などの競争入札で事前に業者間で入札価格や落札者などを決める独占禁止法違反の「談合」が5件(同8件)、詐欺・横領が4件(13件)などだった。なお、「その他」52件には、建設業法や医師法など業法違反、金融商品取引法や食品衛生法などの法令違反、増収賄、不法投棄などを含む。
最近は、企業の法令違反行為の発覚で取引停止や、金融機関の融資継続の条件としてコンプライアンスが要求されるなど、企業の社会的責任は以前にも増して重視されている。
だが、こうした環境のなかでも「コンプライアンス違反」企業は後を絶たない。粉飾決算に象徴される経営内容の不正報告や、脱税・税金滞納、不正受給などは業績不振の企業に多く、実態経済の「鏡」の側面もある。2012年度の「コンプライアンス違反」の倒産は前年度を下回ったが、この背景にはコンプライアンス意識の浸透も効果があったとみられる。