• TSRデータインサイト

第二地銀の「貸出条件緩和債権」が4割増

国内113銀行の2013年3月期のリスク管理債権合計は11兆2,631億円(前年同期比1.0%増)で、2年連続で増加した。業態別では、大手行(前年同期比2.7%増)と第二地銀(同1.4%増)で増加したが、地方銀行(同0.7%減)は減少した。また、リスク管理債権のうち、第二地銀の「貸出条件緩和債権」が前年同期比35.8%増と、他業態に比べ増加率が突出した。
また、113銀行の「貸倒引当金」は4兆6,684億円(同4.4%減)と、4年連続で減少した。ただ、2013年3月期で貸倒引当金を積み増した銀行は36行あり、前年同期の27行より9行増加した。
中小企業金融円滑化法(以下、金融円滑化法)が2013年3月末に期限切れを迎えたが、銀行は経営改善の遅れや再建見通しが厳しい取引先の債務者区分を引き下げ、不良債権処理への対応を進めている。
113銀行の「貸出金合計」は440兆8,991億円(同4.1%増)で、2年連続で増加し、貸出残高は2008年3月期以降の5年間で最高を更新した。

  • 本調査は国内113銀行の2013年3月期決算の単独決算ベースで、リスク管理債権(破綻債権、延滞債権、3ヶ月延滞債権、貸出条件緩和債権)を集計し、分析した。
  • 銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行8行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

リスク管理債権は2年連続で増加

国内113銀行の2013年3月期のリスク管理債権合計は11兆2,631億円で、前年同期(11兆1,507億円)を1,124億円(1.0%)上回った。貸出金に占めるリスク管理債権比率は2.5%で、前年同期(2.6%)より0.1ポイント改善した。リスク管理債権の内訳をみると、「破綻先債権」が4,677億円(前年同期比8.6%減)、「3ヶ月以上延滞債権」が1,125億円(同23.1%減)と減少。一方、「延滞債権」は8兆1,460億円(同0.5%増)、「貸出条件緩和債権」は2兆5,364億円(同6.2%増)と、それぞれ増加した。「貸出条件緩和債権」が増加した背景には、金融円滑化法の期限切れを前に、取引先の債務者区分の見直しを進めた可能性がある。

external_image

業態別 第二地銀の「貸出条件緩和債権」が突出

業態別のリスク管理債権合計は、地方銀行が4兆9,017億円(前年同期比0.7%減)と減少した一方、大手行は4兆6,536億円(同2.7%増)、第二地銀は1兆7,077億円(同1.4%増)と増加した。
リスク管理債権が増加した銀行は、大手行が8行のうち2行(構成比25.0%)、地方銀行が64行のうち30行(同46.8%)、第二地銀が41行のうち22行(同53.6%)で、113銀行のほぼ半数の54行(同47.7%)にのぼった。
第二地銀は半数以上の銀行がリスク管理債権を積み増した。なかでも、「貸出条件緩和債権」は前年同期比35.8%増で、大手行の同8.6%増、地方銀行の同3.3%減と比べ突出した。

本店所在地別 9地区のうち4地区で増加

リスク管理債権を銀行の本店所在地でみると4地区で増加、5地区で減少した。増加した4地区のうち、中国(前年同期比5.9%増)は9行すべてで増加し、増加率は地区別で最も高かった。次いで、関東(同2.8%増)、近畿(同2.6%)、四国(同0.5%増)の順だった。
一方、減少した5地区で、減少率が最も大きかったのは東北(同12.0%減)で、15行のうち12行で減少した。次いで、北海道、北陸、九州の順で、中部(同0.5%減)は微減だった。

増加率50%超が2行

リスク管理債権の増加率では、みずほコーポレート銀行(前年同期比59.8%増)が最も大きかった。同行のリスク管理債権は、製造業向け同495億円増(851億円→1,347億円)、海外店分及びオフショア勘定分が同435億円増と大幅に増加した。次いで、琉球銀行(同51.9%増)、栃木銀行(同49.4%増)の順。増加率の上位10行のうち、5行を第二地銀が占めた。

貸倒引当金 36行で増加

113銀行の2013年3月期の貸倒引当金(貸借対照表計上額)は、4兆6,684億円(前年同期比4.4%減)で、3月期では2010年3月期以降、4年連続で減少した。ただ、貸倒引当金が増加した銀行は36行と、前年同期(27行)より9行増加した。
113銀行の貸出金は440兆8,991億円(前年同期比4.1%増)で、2年連続で増加した。不良債権リスクの低い大手企業や自治体向けに加え、住宅・不動産向け貸出が押し上げたとみられる。
また、保証協会付き貸出などのリスクを抑えた貸出が後押しした可能性もあるが、プロパー貸出の状況などは資料から把握できない。貸倒引当金の減少は、倒産の減少やセーフティネット保証などの公的支援の拡充から、引当率の低い貸出が増えたことが要因とみられる。


2012年度(4-3月)の全国企業倒産は、4年連続で前年度を下回った。金融円滑化法やセーフティネット保証など、政策支援による抑制効果が大きかった。だが、金融円滑化法を活用した企業の中には、抜本的な経営改善が遅れている企業も数多い。
銀行の2013年3月期決算では、業績予想修正で「債務者区分の見直し」(関西アーバン銀行)、「貸倒引当金の積み増し」(豊和銀行)などを下方修正理由としてあげた銀行もある。銀行は金融円滑化法の終了後も支援を維持するが、これまでの支援は「下支え」だった。今後、求められるのは「成長」へのリスク負担だが、そこまで踏み出すには至っていないのが実情である。
さらに、円安進行による材料や燃料、電気代、人件費などコストアップが懸念材料として浮上してきた。景気拡大への期待感は高まっているが、中小企業を取り巻く環境は厳しく、資金調達が大きな課題に浮上してくる。こうした時期の「リスク管理債権」の動向は大きな意味を持つ。当面、銀行の与信リスクへの姿勢に目を離せない状況が続くことになる。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「リファラル採用」 企業の半数に広がる 定着率はリファラルが新卒、転職エージェントを上回る

東京商工リサーチは、採用に関する企業向けアンケート調査を実施した。人手不足やAI・DXの普及で転職市場の活況が続き、近年はリファラルやアルムナイ採用も広がっている。特に、リファラル採用は、転職エージェントの紹介より従業員の定着率が高いと考える企業が多いことがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

大手ホテル好調 客室単価と稼働率が同時上昇 客室単価はコロナ禍の2倍超、稼働率は83.3%

インバウンド需要と国内旅行の復活で、大手ホテルの客室単価と稼働率が、コロナ禍以降で最高を更新した。 ホテル運営の上場12社(13ブランド)の2025年度の客室単価は、1万7,818円(前年度比8.6%増)で前年度より1,424円上昇した。稼働率は83.3%(前年度82.3%)で、高水準を維持した。

3

  • TSRデータインサイト

経営責任を取る事業再生、ジュピターコーヒーは黒字化へ ~ ネクスト・キャピタル・パートナーズ 単独インタビュー ~

2025年度の企業倒産は1万505件(前年度比3.5%増)で、2年続けて1万件を超えた。 こうしたなか、20年を超すファンド運営で事業再生を数多く手掛けてきたのがネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)だ。浅野晃司・取締役執行役員に特色や取り組みを聞いた。

4

  • TSRデータインサイト

企業の7.8%で退職金「増額・導入」  「減額・廃止」企業は月給などへ、資産形成は自己責任

これまで「年功序列」や「終身雇用」が前提の日本の会社では、長く勤め上げてまとまった退職金を受け取ることが一般的だった。だが、東京商工リサーチ(TSR)のアンケート調査で、2023年以降の退職金制度は「増額・導入」が7.8%に対し、「減額・廃止」は1.9%だった。

5

  • TSRデータインサイト

サッカーW杯 日本代表を支える40社 売上1兆円以上8社 設立10年未満も

2026年6月11日、米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で、史上最大規模のFIFAワールドカップが開幕する。5月15日、日本代表メンバー26名も発表され、関心が集まるなか、スポンサーシップやパートナーシップなど、サッカー日本代表・日本サッカー協会を支援する企業40社を調査した。

TOPへ