上場メーカー1,332社 53.4%で従業員数減少
2012年度決算の上場製造業1,332社の総従業員数(単独決算ベース)は、前年度より3,364人減少し、従業員数の減少企業は712社(構成比53.4%)と過半数を占めた。
業種では、2012年秋口まで続いた外国為替市場での超円高の影響もあって、輸出企業の多い電気機器や自動車産業での減少が目立った。これらのなかには、希望退職者の募集を実施した企業も含まれ、厳しい雇用状況を映し出した。
- ※本調査は、上場製造業1,332社を対象に、2012年度決算(2012年4月期~2013年3月期)の単独決算ベースの従業員数を抽出し、前年度と比較した。
上場メーカーの53.4%で従業員数が減少
2012年度決算(2012年4月期~2013年3月期)の上場製造業の総従業員数は、196万8,241人(前年度比3,364人減、0.1%減)と前年度を下回った。
個別企業では、前年度より従業員数が減少した企業は712社(構成比53.4%)と過半数を占めた。一方、従業員数が前年度より増加した企業は581社(同43.6%)で、前年度と同数が39社(同2.9%)だった。
従業員数1万人以上の上場メーカー 4割で従業員数減少
個別の従業員数では、最多がトヨタ自動車の6万8,978人(前年度比0.25%減)だった。次いで、パナソニックが5万7,597人(同11.6%増) 、デンソーが3万8,385人(同0.1%増)、東芝が3万5,786人(同2.6%減) 、日立製作所の3万3,665人(同2.3%増)と、国内有数のメーカーが上位を占めた。従業員数が1万人以上の上場製造業35社では、4割にあたる14社で従業員数が前年度より減少し、大手メーカーの従業員数の抑制・削減が続いていることがわかった。
従業員数減少数 電気機器と自動車産業が上位に
個別企業で従業員数が前年度より最も減少したのは、シャープの3,522人減(2万1,538→1万8,016人、前年度比16.3%減)だった。主な要因は、希望退職者募集による。次いで、ルネサスエレクトロニクスの2,777人減(1万3,108→1万331人、同21.1%減)、希望退職者募集や事業・生産構造改革が影響した。このほか、三菱重工業の1,383人減(3万2,494→3万1,111人、同4.2%減)、HOYAの1,325人減(4,454→3,129人、同29.7%減)と続き、上位は電気機器と自動車産業が目立った。
従業員数減少率 組織再編や希望退職者募集の実施企業が目立つ
従業員数の減少率が最も高かったのは、セルシードの前年度比71.6%減(60→17人)だった。主な要因は、希望退職者募集の実施による。次いで、篠崎屋の同63.8%減(94→34人)、主に水海道、小山工場の2工場の生産を、外部の新設協力工場に移管・委託したことによる。
ニチコンの同60.8%減(903→354人)、大町・富田・穂高工場をニチコン製箔(株)に、長野工場をニチコン長野(株)に分社化したことによる。このほか、アシックスの同45.7%減(1,464→794件)、エヌ・ピー・シーの同44.3%減(456→254人)など。これらは国内の組織再編や希望退職者募集などの実施が影響した。
従業員数増加 合併企業が目立つ
従業員数が前年度より最も増加したのは、新日鐵住金の8,352人増(1万6,158→2万4,510人、前年度比51.6%増)だった。主な要因は、新日本製鐵と住友金属工業が合併したことによる。
次いで、パナソニックの5,986人増(5万1,611→5万7,597人、同11.5%増)、主に子会社のパナソニック エレクトロニックデバイスおよびパナソニック エレクトロニックデバイス ジャパンを吸収合併したことによる。富士電機の1,480人増(9,421→10,901人、同15.7%増)、子会社の富士電機リテイルシステムズを吸収合併したことによる。従業員数が増加した企業は、経営効率を高めることを目的とした合併、合理化を目的とした事業統合や吸収分割による事業継承によるものが目立つ。
従業員数増加率 吸収合併の実施企業が上位に並ぶ
従業員数の増加率が最も高かったのは、主に、子会社のソディックプラステックを吸収合併したソディックの128.5%増(270→617人)。次いで、フジコーの64.8%増(202→333人)、子会社のフジコーサービスを吸収合併したことによる。このほか、新日鐵住金の51.6%増。荏原製作所の51.4%増(2,713→4,109人)、主に子会社3社を吸収合併したことに伴い、風水力事業を中心に増加した。テクノ・セブンの39.5%増(48→67人)、ソフトウエア事業部において採用人数の増加及び外部への出向者が減少したことによる。
総じて、経営効率化を図ることを目的に吸収合併を実施した会社などで従業員数増加率が高かった。
業種別状況 自動車、電機関連の従業員数減少が目立つ
業種別では、24業種のうち19業種で前年度より従業員数が減少した。減少数が最も多かったのは、自動車を含む輸送用機械器具製造(100社)の3,543人減(45万1,869→44万8,326人)だった。次いで、電子部品・デバイス・電子回路製造(61社)の3,296人減(6万5,959→6万2,663人)、業務用機械器具製造(60社)の2,008人減(9万7,513→9万5,505人)、非鉄金属製造の(33社)の1,508人減(2万9,391→2万7,883人)の順だった。自動車、電機関連で減少が目立ち、グローバル経済の進展による国際競争の厳しさと2012年秋口まで続いた歴史的な円高が影響した。
これに対し、増加数が最も多かったのは、鉄鋼業(52社)の7,706人増(6万5,460→7万3,166人)で、新日鐵住金の誕生が影響した。次いで、はん用機械器具製造(76 社)の3,775人増(11万388→11万4,163人)、化学工業(177社)の471人増(18万9,870→19万341人)の順だった。
まとめ
2012年度の上場製造業の総従業員数は、前年度を下回った。これらは、2012年秋口まで続いた歴史的な円高、不採算部門の事業譲渡、同業他社や子会社との合併に加え、希望退職者募集を実施した上場メーカーが49社(判明分)にのぼるなどの経営効率化の動きが影響した。この背景には、デフレ経済の長期化とグローバル経済の進展による国際競争の激化があり、工場の集約・閉鎖などを伴なうケースもあった。
しかし、アベノミクス効果による円安・株高で経営環境が一変し、上場メーカーでは業績が改善する企業が多くなってきた。2012年度の従業員数増加企業は、合併や経営統合などによるものが目立った。今後は純粋に事業拡大で従業員が増加する企業が多くなるかどうかに、アベノミクスの真価が問われるといえそうだ。