全国企業倒産状況

2024年7月の全国企業倒産953件

7月の企業倒産953件 年間1万件も視野に


 2024年7月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が953件(前年同月比25.7%増)、負債総額は7,812億600万円(同381.8%増)だった。
 件数は、2022年4月から28カ月連続で前年同月を上回った。7月としては3年連続で前年を上回り、2013年(1,025件)に次ぐ高水準となった。
 負債総額は、前年同月の約5倍(4.8倍)の大幅増で、今年最大となった。7月では2012年(7,241億円)以来、12年ぶりに7,000億円台に乗せた。航空機開発製造のMSJ資産管理(株)(旧:三菱航空機(株))が負債6,413億円を抱えて7月4日、東京地裁に特別清算を申請し、負債を押し上げた。同社で負債総額の8割以上(構成比82.0%)を占めた。負債5億円以上10億円未満は31件(前年同月比55.0%増)、同1億円以上5億円未満は206件(同34.6%増)と中堅規模も増えたが、同1億円未満が696件(構成比73.0%)と、引き続き小・零細企業を中心とした推移が続く。
 産業別では、8産業で前年同月を上回った。建設業が194件(前年同月比31.0%増)で19カ月連続、卸売業が102件(同32.4%増)で10カ月連続と、それぞれ前年同月を上回った。

 物価高や人件費高騰(人手不足)などのコスト増、借入返済や納税などの資金繰り負担に加え、今後は金利上昇も収益を下押しする。このため、過剰債務や稼ぐ力が見劣りする中小企業を中心に、秋口以降の企業倒産は増勢局面に入ることが懸念される。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が860件で、構成比は90.2%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが31道府県、減少13都県、同数3県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比73.0%、100億円以上が3カ月ぶりに発生
・業種別件数:宿泊業や汎・生産・業務用機械器具製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比89.1%、14カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は4カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

10産業のうち、8産業で前年同月を上回る

 2024年7月の産業別件数は、10産業のうち、金融・保険業と運輸業を除く8産業で前年同月を上回った。建設業と製造業、小売業の3産業は、今年最多となった。
 最多はサービス業他の310件(前年同月比18.3%増)で、23カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は32.5%(前年同月34.5%)。
 次いで、建設業が194件(前年同月比31.0%増)で19カ月連続、製造業が116件(同43.2%増)で4カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
 このほか、卸売業102件(同32.4%増)が10カ月連続、情報通信業37件(同12.1%増)が4カ月連続、農・林・漁・鉱業11件(同22.2%増)と小売業109件(同37.9%増)、不動産業29件(同26.0%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、金融・保険業1件(同50.0%減)が、2カ月連続で前年同月を下回った。運輸業は前年同月と同件数の44件だった。

2024年7月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移


主なサービス業他 倒産状況


主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、関東を除く8地区で前年同月を上回る

 2024年7月の地区別件数は、9地区のうち、8地区で前年同月を上回った。
 近畿261件(前年同月比50.8%増)が、2022年12月より20カ月連続で前年同月を上回った。このほか、中国53件(同76.6%増)が15カ月連続、九州91件(同35.8%増)が9カ月連続、北海道34件(同41.6%増)が4カ月連続、東北54件(同35.0%増)と中部128件(同30.6%増)、北陸17件(同30.7%増)、四国17件(同13.3%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。関東は前年同月と同件数の298件だった。
 北海道、中部、近畿、中国、九州の5地区は、今年最多の件数だった。

2024年7月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.MSJ資産管理(株)/愛知県/航空機開発製造/6,413億円/特別清算
2.アサヒフードクリエイト(株)/東京都/飲食店経営/89億9,700万円/特別清算
3.ALV(株)/埼玉県/自動車販売、不動産賃貸/70億円/破産
4.ACAO SPA&RESORT(株)/静岡県/リゾート施設運営/63億円/民事再生法
5.大日本交通事業(協)/大阪府/事業資金貸付ほか/58億円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

債権譲渡・動産譲渡登記の設定は「危ない会社」か?

東京商工リサーチ(TSR)には、「取引先に債権譲渡(または動産譲渡)登記が設定された。どう判断すればいいか」という問合せが増えている。債権譲渡・動産譲渡が設定された企業の業績はどう変わったか。国内最大級のTSRデータベースを活用して分析、検証した。

2

  • TSRデータインサイト

代表者が高齢の企業ほど財務内容が悪化 黒字企業率は40代78.7%、70代72.7%

代表者が高齢になるほど業績は悪化する傾向が強いことがわかった。黒字企業率は40歳未満が78.2%、40歳代は78.7%に対し、70歳代は72.7%、80歳以上は68.8%と下がってくる。代表者が高齢になるほど業績が伸び悩む傾向が表れ、早期の事業承継への取り組みが重要になる。

3

  • TSRデータインサイト

企業のカスハラ対策に遅れ、未対策が7割超 「カスハラ被害」で従業員の「休職・退職」 13.5%の企業で発生

近年、不当な要求など迷惑行為のカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化している。東京商工リサーチが8月上旬に実施した企業向けアンケート調査で、「カスハラ」を受けたことがある企業が約2割(19.1%)あることがわかった。「宿泊業」、「飲食店」が上位に並んだ。

4

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均は1ドル=143.5円 3期連続で最安値を更新

株式上場する主要メーカー109社の2024年度決算(2025年3月期)の期首の対ドル想定為替レートは、1ドル=145円が54社(構成比49.5%)と約半数にのぼることがわかった。 平均値は1ドル=143.5円で、前期から14.5円の円安設定だった。期首レートでは2023年3月期決算から3期連続で最安値を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

もしトランプ氏就任なら、業績予想は「マイナス」? 米国大統領選は、「為替」と「地政学リスク」に注目

2024年11月、米国大統領選挙が行われる。 東京商工リサーチは2024年8月、もしトランプ氏が米国大統領になったらどのような影響があるか企業向けアンケート調査を実施した。

TOPへ