全国企業倒産状況

2024年6月の全国企業倒産820件

6月の企業倒産 件数が27カ月連続で増加、9年ぶりに800件台に


 2024年6月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が820件(前年同月比6.4%増)、負債総額は1,098億7,900万円(同27.2%減)だった。
 件数は、2022年4月から27カ月連続で前年同月を上回ったが、増加率6.4%増は2022年8月の5.5%増に次ぐ低水準となった。6月の800件台は、2015年(824件)以来、9年ぶり。
 負債総額は、4カ月連続で前年同月を下回った。これは負債10億円以上が16件(前年同月18件)、同5億円以上10億円未満が13件(同14件)とそれぞれ減少し、同1億円以上5億円未満が156件(同168件)にとどまった。一方で、同1億円未満が629件(76.7%)と、小・零細企業を中心にした推移を反映している。
 産業別では、5産業で前年同月を上回った。建設業155件(前年同月150件)が16カ月連続、サービス業他286件(同255件)が22カ月連続と、それぞれ前年同月を上回った。

 円安に伴う物価高、人件費の上昇などのコストアップが中小企業の収益を苦しめている。政府の資金繰り支援策は、経営改善や事業再生にシフトしており、コロナ禍で過剰債務に陥った企業、業績回復が遅れた企業は自立を迫られている。資金需要が活発になる秋口以降、資金調達が困難な企業を中心に、倒産を押し上げる動きが強まってくるとみられる。

企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が737件で、構成比は89.8%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが26都道府県、減少16府県、同数5県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比76.7%、100億円以上が2カ月連続で発生なし
・業種別件数:情報サービス・制作業、学術研究,専門・技術サービス業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比89.6%、13カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は3カ月連続で100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、5産業で前年同月を上回る

 2024年6月の産業別件数は、5産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の286件(前年同月比12.1%増)で、22カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は34.8%(前年同月33.1%)だった。
 このほか、慢性的な人手不足に加え、資材価格の上昇が続く建設業が155件(前年同月比3.3%増)で18カ月連続、円安による仕入コストの上昇が続く卸売業が105件(同17.9%増)で9カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
 また、製造業81件(同2.5%増)と情報通信業46件(同76.9%増)が、それぞれ3カ月連続で前年同月を上回った。
 一方、農・林・漁・鉱業が8件(同11.1%減)で2か月ぶり、金融・保険業が2件(同50.0%減)で3カ月ぶり、不動産業15件(同42.3%減)と運輸業38件(同11.6%減)が4カ月ぶり、小売業が84件(同5.6%減)で5カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2024年6月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 倒産件数、5地区で前年同月を上回る

 2024年6月の地区別件数は、9地区のうち、5地区で前年同月を上回った。
 関東292件(前年同月比15.4%増)が、2020年5月より26カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿219件(同6.3%増)が19カ月連続、中国44件(同57.1%増)が14カ月連続、九州85件(同1.1%増)が8カ月連続、北海道25件(同13.6%増)が3カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。一方、東北40件(同25.9%減)が8カ月ぶり、中部85件(同7.6%減)が3カ月ぶり、四国16件(同5.8%減)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 北陸は、前年同月と同件数の14件だった。

2024年6月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。

東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)個別指導塾スタンダード/福岡県/学習塾経営/83億2,400万円/民事再生法
2.(株)カイロス/大阪府/持株会社/81億8,200万円/特別清算
3.(株)暁建設/埼玉県/建築工事/51億8,100万円/破産
4.(株)SCホールディングス/福岡県/持株会社/44億4,100万円/民事再生法
5.三基システムエンジニアリング(株)/東京都/パチンコ関連システム開発/43億1,400万円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

M&A総研の関わりに注目集まる資金流出トラブル ~ アドバイザリー契約と直前の解約 ~

東京商工リサーチは、M&Aトラブルの当事者であるトミス建設、マイスHD、両者の株式譲渡契約前にアドバイザリー契約を解約したM&A総合研究所(TSRコード: 697709230、千代田区)を取材した。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業、中高年の活用に活路 「早期・希望退職」は大企業の2.8%が実施

 「早期希望・退職」をこの3年間実施せず、この先1年以内の実施も検討していない企業は98.5%だった。人手不足が深刻化するなか、上場企業の「早期・希望退職」募集が増えているが、中小企業では社員活用の方法を探っているようだ。

3

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

4

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

5

  • TSRデータインサイト

2023年度「赤字法人率」 過去最小の64.7% 最小は佐賀県が60.9%、四国はワースト5位に3県入る

国税庁が4月に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2023年度の赤字法人(欠損法人)は193万650社だった。普通法人(298万2,191社)の赤字法人率は64.73%で、年度集計に変更された2007年度以降では、2022年度の64.84%を下回り、最小を更新した。

TOPへ