全国企業倒産状況

2023年10月の全国企業倒産793件

10月の企業倒産 19カ月連続で増加、前年の年間件数を超える

 2023年10月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が793件(前年同月比33.0%増)、負債総額は3,080億1,000万円(同254.0%増)だった。
 件数は、2022年4月から19カ月連続で前年同月を上回った。また、5月から700件台で推移して、1-10月累計は7,073件に達し、前年の年間件数(6,428件)を超えた。
 負債総額は、2カ月連続で前年同月を上回った。10月度では2010年の5,200億5,000万円以来、13年ぶりに3,000億円を超えた。負債100億円以上が6件(前年同月1件)、同50億円以上100億円未満が7件(同1件)と大型倒産が大幅に増加し、負債を押し上げた。
 「新型コロナウイルス」関連倒産は263件(前年同月比12.3%増)で、2023年1-10月累計は2,623件(前年同期比42.9%増)と前年同期の1.4倍と大幅に増加した。

 アフターコロナを迎え、コロナ禍で傷んだ企業はゼロゼロ融資の返済や過剰債務の解消、新たな資金調達、物価高、人手不足など、重い経営課題が山積している。
 業績の二極化が拡大するなか、業績不振から抜け出せない企業の自助努力には限界があり、支援の網から漏れた企業は資金調達も難しくなっている。資金需要が旺盛になる年末を控え、こうした企業の「息切れ」を中心に、企業倒産はさらに増勢を強める可能性が高まっている。

企業倒産月次推移



・形態別件数:破産が707件。法的倒産の構成比は95.9%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが30都道府県、減少17県、同数0
・負債別件数:負債1億円未満の構成比74.0%、100億円以上は今年最多の6件
・業種別件数:印刷・同関連業、汎・生産・業務用機械器具製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比89.4%、5カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)は99.8%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 2カ月ぶりに10産業すべてで前年同月を上回る

 2023年10月の産業別件数は、10産業すべてで前年同月を上回った。10産業すべてが前年同月を上回るのは8月以来、2カ月ぶりで、今年2度目。
 最多はサービス業他の255件(前年同月比32.1%増)で、14カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は32.1%(前年同月32.3%)だった。
 次いで、資材価格の高止まりが続く建設業が164件(前年同月比76.3%増)で10カ月連続、ウクライナ情勢や円安の影響による仕入コストが上昇している製造業が103件(同27.1%増)で15カ月連続で、それぞれ前年同月を上回った。
 このほか、情報通信業27件(同35.0%増)が13カ月連続、小売業81件(同1.2%増)が6カ月連続、運輸業34件(同17.2%増)が5カ月連続、不動産業27件(同35.0%増)が3カ月連続、農・林・漁・鉱業11件(同175.0%増)と卸売業89件(同17.1%増)、金融・保険業2件(前年同月ゼロ)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 10産業すべて1-10月累計でも前年同期を上回っている。また、10月までに農・林・漁・鉱業、卸売業の2産業を除く8産業は前年の年間件数を超えており、ほぼすべての産業で倒産は増勢を強めている。

2023年10月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移

主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 東北、北陸、九州を除く、6地区で前年同月を上回る

 2023年10月の地区別件数は、9地区のうち、6地区で前年同月を上回った。
 関東323件(前年同月比57.5%増)が、2022年5月より18カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿196件(同45.1%増)が11カ月連続、中部92件(同6.9%増)と中国40件(同73.9%増)が6カ月連続、四国18件(同100.0%増)が5カ月連続、北海道28件(同40.0%増)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、北陸8件(同38.4%減)が2カ月連続、東北33件(同29.7%減)が7カ月ぶり、九州55件(同5.1%減)が16カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 1-10月累計では9地区そろって前年同期を上回っている。四国の前年同期比64.2%増を筆頭に、中国の同56.1%増、中部の同45.4%増と大幅に増加し、北陸を除く8地区はすでに前年の年間件数を超えた。都道府県別でも1-10月累計は、43都道府県で前年同期を上回った。

2023年10月 都道府県別倒産


※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)ガイア/東京都/パチンコ店経営/943億5,500万円/民事再生法
2.(株)MG建設/東京都/建築工事/214億5,000万円/民事再生法
3.(株)MG/東京都/パチンコホール/174億8,800万円/民事再生法
4.(株)ガイア・ビルド/東京都/建築工事/155億1,600万円/民事再生法
5.(株)トポスエンタープライズ/千葉県/物流倉庫事業/115億4,100万円/民事再生法

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【解説】秀和システムの法的整理、異変察知は「船井電機より前」

(株)秀和システム(TSRコード:292007680、東京都)への問い合せは、船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の破産の前後から急増した。ところが、あるベテラン審査マンは「ERIが弾けた時からマークしていた」と耳打ちする。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月27日時点) 上場企業「役員報酬1億円以上開示企業」調査

2025年3月期決算の上場企業の多くで株主総会が開催された。6月27日までに2025年3月期の有価証券報告書を2,130社が提出した。このうち、役員報酬1億円以上の開示は343社、開示人数は859人で、前年の社数(336社)および人数(818人)を超え、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

1-6月の「訪問介護」倒産 2年連続で最多 ヘルパー不足と報酬改定で苦境が鮮明に

参議院選挙の争点の一つでもある介護業界の倒産が加速している。2025年上半期(1-6月)の「訪問介護」の倒産が45件(前年同期比12.5%増)に達し、2年連続で過去最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

船井電機の債権者集会、異例の会社側「出席者ゼロ」、原田義昭氏は入場拒否

破産手続き中の船井電機(株)(TSRコード:697425274、大阪府)の第1回債権者集会が7月2日、東京地裁で開かれた。商業登記上の代表取締役である原田義昭氏は地裁に姿を見せたものの出席が認めらなかった。会社側から債務者席への着座がない異例の事態で14時から始まった。

5

  • TSRデータインサイト

1-6月の「人手不足」倒産 上半期最多の172件 賃上げの波に乗れず、「従業員退職」が3割増

中小企業で人手不足の深刻な影響が広がっている。2025年上半期(1-6月)の「人手不足」が一因の倒産は、上半期で最多の172件(前年同月比17.8%増)に達した。

TOPへ