• TSRデータインサイト

2025年の「焼肉店」倒産 46件 年間最多を更新 値上げ・高級化で客離れ加速、低価格チェーンとの競争激化

 輸入牛肉や野菜の仕入価格の上昇や光熱費、人件費などのコストアップで、焼肉店の倒産が年間最多を更新した。2025年は10月30日(速報値)までに46件に達し、年間最多だった2024年の45件を上回った。

 大手牛丼チェーンが値下げに踏み切るなか、焼肉店は値上げと消費者離れの板挟みで苦境に陥っている。
 コロナ禍では、ラーメン店や喫茶店などの飲食店の倒産が相次ぐなか、焼肉店は高い換気能力で集客力を高め、倒産が大幅に減少した。焼肉業界は、2011年の大規模な食中毒事件で客離れが起きたが、信頼の回復後は一人焼肉や希少部位の人気、低価格チェーンの広がりで右肩上がりで成長していた。
 だが、コロナ禍が落ち着くと、円安に伴う輸入牛肉の価格高騰に加え、野菜や人件費、光熱費が上昇が収益を圧迫。価格転嫁を迫られているが、値上げが客離れを呼ぶ悪循環に陥り、一方で大手チェーン店が安価な価格で攻勢をかけており、街の焼き肉店は冬の時代を迎えている。

 2025年(10月30日時点)の「焼肉店」の倒産(負債1,000万円以上)は46件に達し、2009年に統計を開始以降、年間最多を更新した。2024年もコスト増と新規参入組も参戦した大手チェーンとの競争激化で、倒産は2023年の27件を上回る45件に急増した。2025年に入っても、牛肉価格の高騰や光熱費、人件費の上昇が止まらず、大手安価チェーンとの競合で2年連続で倒産が最多を更新した。

 46件の倒産を分析すると、原因別では「販売不振」が39件(構成比84.7%)で最も多い。値上げが顧客離れを起こして売上が落ち込む負のスパイラルに嵌る焼肉店が多かった。従業員別では、10人未満が42件(同91.3%)と9割を超え、小規模な焼肉店が大半を占めた。

 一人焼肉や個室焼肉、ブランド牛などの高級焼肉、食べ放題など、店独自の差別化も進行している。その一方で、コスト削減には限界があり、利益の確保には値上げか、お客を増やすか量を減らすか、質を落とすかの選択肢を迫られている。だが、相次ぐ値上げで、街の焼肉店の高級化が進み、消費者離れに繋がっている。品揃えや味、店の雰囲気だけでなく、大手チェーンとの価格による熾烈な競争も続き、疲弊した焼肉店が倒産に追い込まれいる。
 街には焼肉店の新規開店を見かけるが、さらなる競争を呼び込み、2025年は焼肉店の倒産が初めて年間60件に乗せる可能性も出てきた。

※ 本調査は、日本産業分類(小分類)の「焼肉店」を抽出し、統計開始の2009年から2025年10月30日までの倒産を集計、分析した。

「焼肉店」の倒産 年次推移(速報値)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ