• TSRデータインサイト

「飲食業」は客足とインバウンド需要で明暗分ける 2024年度の倒産は1989年度以降、最多更新へ

2024年度(4-2月)の「飲食業」倒産


 食材費や人件費、光熱費などの物価高が直撃する飲食業が苦境に直面している。2024年度(4-2月)の飲食業の倒産(負債1,000万円以上)は907件(前年同期比7.7%増)で、同期間では初めて900件台に乗せた。1989年度以降の36年間で、年度最多の2023年度の930件を上回ることが確実になった。 
 特に、負債1億円未満の小・零細事業者が9割(90.1%)を占め、「バー,キャバレー,ナイトクラブ」、焼肉店、居酒屋・焼き鳥などの「酒場・ビヤホール」などの飲食業で倒産が目立つ。
 一方、街に人出が戻り、インバウンド需要が好調なすし店、ラーメン店、喫茶店は減少に転じている。
 
 飲食業の倒産は、最多が日本料理店や焼肉店などの「専門料理店」の224件(前年同期比10.3%増)だった。「バー,キャバレー,ナイトクラブ」は80件(同45.4%増)で、すでに2023年度の件数を超えた。

 資本金別では、1千万円未満が812件(同10.4%増)と、小・零細事業者が約9割(89.5%)を占めた。形態別では、破産が860件(前年同期比7.9%増)で構成比は94.8%に達し、業績不振の小・零細事業者の再建が難しいことを示している。
 「物価高」倒産は64件(前年同期54件)。「人手不足」関連倒産は21件(同17件)発生した。

 飲食業は、コロナ禍の各種支援策が終了と同時に、物価高と人手不足に見舞われて厳しい状況が続いている。価格転嫁は来店客数の減少リスクもあり、容易ではない。コロナ禍で膨らんだ過剰債務の解消も遅れており、倒産や休廃業が増える懸念が高まっている。
※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2024年度(4-2月)の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。

飲食業の倒産 年度推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

2

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均1ドル=141.6円 前期比1.9円円高を想定、4期ぶり円安にブレーキ

主な株式上場メーカー98社の2025年度決算(2026年3月期)の期首ドル想定為替レートは、1ドル=140円が48社(構成比48.9%)と約5割にのぼった。平均値は1ドル=141.6円で、前期に比べ1.9円の円高となった。

3

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

日産自動車の役員報酬1億円以上開示は5人 内田前社長の報酬額は3億9,000万円

 経営再建中の日産自動車が、2025年3月期決算の有価証券報告書を提出した。報酬額1億円以上の個別開示の人数は5人で、前年と同数だった。

5

  • TSRデータインサイト

2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分

2024年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、189件(前年比8.0%増)で、漏えいした個人情報は1,586万5,611人分(同61.2%減)だった。 事故件数は調査を開始した2012年以降、2021年から4年連続で最多を更新した。

TOPへ