• TSRデータインサイト

丸住製紙、上限15億円の当座貸越枠 ~ 「自主再建・リスケ」の私的整理、成立も延命できず ~

 2月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した丸住製紙(株)(TSRコード:810006448、四国中央市)の債権者が約1000名に上ることがわかった。


丸住製紙の本社(TSR撮影)
丸住製紙の本社(TSR撮影)
 

 東京商工リサーチが入手した「民事再生申立書」によると、「総債権者数 約1000名」、「負債総額 約530億円+額未定」と記載されている。労働債権額が未確定のため、負債総額が確定できていない。

 丸住製紙は、支払い遅延などの信用不安が広がる中で、商取引債権者に明確な説明をしてこなかったことに批判の声があがっている。今年2月17日に一部取引先に用紙事業からの撤退を伝え、わずか10日余りの短期間での民事再生に疑問を呈する取引先もある。
 申立書には、再建に向けて奔走する丸住製紙の状況が記されている(以下要約)。


 2023年4月に事業再生ガイドラインに準じた私的整理手続きに入り、借入先(16先)へ元本返済の猶予などを要請した。その後、「自主再建・リスケ」を柱とする再生計画を策定し、対象債権者全ての同意により2023年12月に成立させた。ただ、用紙需要の減少が続いたことに加え、原材料の高騰などで再生計画を履行できなかった。


 規模が大きな企業の私的整理では、経営責任に踏み込んだ上で金融債務をカットする「抜本再生」を軸に調整するケースが少なくない。債権者が広範に渡り、地域経済への影響も懸念されることを踏まえると、自主再建・リスケ型の計画策定は正しかったのか。客観的な検証と丁寧な説明が必要だろう。
 また、私的整理手続き以降の資金調達(DIPファイナンス)に関する記述もある(同)。


 2023年5月に借入額トップ6行より運転資金として50億円、同年12月に43億円を調達した。また、前記6行を含む9行のシンジケート団より、2023年5月~12月にかけて合計47億円を調達した。さらに、2023年12月以降、2行より上限15億円の当座貸越枠の設定を受けた。


 申立書からは、メインバンクとの関係性は読み取れない。また、3月3日の債権者説明会では債権者から今後の資金繰りに関する質問がなされた。丸住製紙は、「スポンサー探索中の資金繰りは持つ」と回答したが、当座貸越も加味して日繰り表を作成しているとみられる。収支状況の明確な説明を求める声もあり、安定した取引継続には一層の情報開示が必要だろう。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2025年3月7日号掲載「取材の周辺」を再編集)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ