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膨らむ債務、しぼむ想像力=2024年を振り返って(4)

 大手行を中心に金融機関は、さらなる倒産増加への準備を着実に進めている。審査や稟議でのAI導入やこれまで活用していなかった指標を加味した与信先の一括見直し、多様な情報源から寄せられる定性情報を共有する体制の強化、目利き力向上に向けた他行やファンドへの出向など、取り組みは多方面に及ぶ。
 背景には、すでに生じた痛手と危機感がある。ある金融機関の担当者は、「グループの中核行が与信先の異変を感知して融資を引き上げたにもかかわらず、グループ内の別の金融機関で融資を実行し、焦付が発生したことが悔やまれる」と語る。また、別の金融グループでは、営業店の与信先のうち窮境度が高い企業を定期的に本部に報告させ、協力関係にあるファンドを活用した抜本再生の可能性を探っているという。スキームを統括する担当者は、「(営業店から)トスアップされる企業はすでに手遅れになっているケースが多い。ゼロゼロ融資で与信先が増えたことも背景にあるが、実効性を確保するために仕組みの改善を急いでいる」と語る。どちらの事例も現場を巻き込んだ「与信体制の高度化」が念頭にある。
 こうしたなか、事業会社の審査担当者の「信用情報を読み解く力の低下」を嘆く金融機関は少なくない。金融機関の直接の与信先が健全でも、その企業の審査体制が脆弱だとボディーブローのように財務健全性を削ぐ恐れがあるからだ。

 最近では、船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)が引き合いに出される。10月24日の準自己破産を申請後、12月2日に民事再生が申請される異例の展開をたどっている。「船井電機の民事再生では世論を誘導するような発言や報道もみられた。これに踊らされる審査マンは実態を理解していない」、「関係先も含め取引内容を徹底的に洗い出した。本来、こうした作業は商取引債権者でも必要なはずだが、危機感が薄い与信先もある」など、金融機関は事業会社の審査体制に懸念を示す。
 船井電機の準自己破産の申請代理人は奥野総合法律事務所、破産管財人は阿部・井窪・片山法律事務所だ。奥野総合は(株)日本リース(TSR企業コード: 291155308、1998年9月会社更生、負債2.1兆円、商号は当時)の保全管理人、阿部・井窪・片山は(株)日本航空(TSR企業コード: 295556064、会社更生、グループ含め負債2.3兆円)の管財人をそれぞれの筆頭弁護士が担った「倒産村」の超一流事務所だ。ベテラン審査マンはこの情報だけで多くを感じ取る。また、準自己破産にも関わらず、申請日に破産開始決定がなされ速やかに従業員へ解雇予告がなされている。司法も含めた綿密な事前調整が伺われ、入り組んだ利害関係と全体像の大きさを突きつける。

 何が起きているのかを想像する力は一朝一夕では養うことはできない。金融機関の懸念はコロナ禍で膨らんだ与信先の債務だけではない。


船井電機の本社(TSR撮影)

船井電機の本社(TSR撮影)



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