• TSRデータインサイト

企業倒産は11年ぶりの年間1万件をにらむ=2024年を振り返って(2)

 2024年の全国の企業倒産は、1-11月累計で件数が9,164件(前年同期比16.2%増)、負債総額は2兆1,495億800万円(同6.5%減)だった。
 四半期ごとの件数推移は、第1四半期(1-3月)が2,319件(前年同期比18.5%増)、第2四半期(4-6月)が2,612件(同25.2%増)、第3四半期(7—9月)が2,483件(同10.9%増)、第4四半期(10‐11月)は2カ月で1,750件(同9.3%増)と増勢をたどり、2013年(10,855件)以来、11年ぶりに年間1万件超えも視野に入ってきた。

 負債1億円未満が7割超(構成比74.7%)を占め、小・零細規模の企業倒産が圧倒的に多いのが特徴だ。だが、大型倒産も発生している。7月には一時、日本中の期待を担った“日の丸ジェット”(スペースジェット)の夢が潰えた。航空機開発製造のMSJ資産管理(株)(旧:三菱航空機(株)、TSR企業コード:402666453)が負債6,413億円を抱えて特別清算を申請した。10月には融資・投資事業のエクシア合同会社(TSR企業コード:014686724)が債権者(被害者)9,000名を巻き込んだあげく債権者から破産を申請され、負債850億円を抱えて破産開始決定を受けた。また、10月には海外で「FUNAI」ブランドで知られた家電品メーカーの船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)が準自己破産を申請され、負債469億円を抱えて破産した。このように負債100億円超の大型倒産も11月までに11件発生しており、負債額は二極化が鮮明になった。
 11月には、電解銅箔メーカーの日本電解(株)(TSR企業コード:018404014)が負債147億円)を抱えて民事再生法の適用を申請した。同社は東証グロースに株式上場しており、2024年では初の上場企業倒産となった。

 2023年5月、新型コロナが5類移行した時期に合わせたように円安が加速し、賃金引き上げのニュースが連日テレビ、新聞を賑わせた。そして、インバウンド需要の急回復もあり、輸出関連を中心に企業業績の好転も話題になった。だが、その一方で流れに乗れない企業との格差が際立つ一年だった。内需依存の中小企業は、鈍い業績回復に物価高が襲い掛かり、価格転嫁に苦慮した。さらに、コロナ禍で背負った過剰債務やゼロゼロ融資の返済負担、人手不足、そして人件費上昇などの複層的な経営リスクが高まり、中小・零細企業の倒産を押し上げた。

倒産件数・負債総額 年間推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ