• TSRデータインサイト

船井電機「破産開始」への対抗、天文学的な成功率

「破産取消率」は0.015%

 船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)の破産手続きが混沌としている。
 10月24日に東京地裁へ準自己破産を申請し同日、開始決定を受けた船井電機の破産手続きに対抗する動きが明らかになった。東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、複数の関係者は「民事再生に向けた具体的なプランがある」と打ち明ける。
 だが、開始決定を受けた破産手続きに対抗するのは容易でない。
 TSRの調査によると、2019年1月~2024年10月までに破産開始決定が取り消されたケース(株式・有限・合同の会社形態)は5件しかない。この間の破産件数は3万2998件で、「破産取消率」は0.015%と天文学的な低さだ。

 また、法的手続きを競合させることで、破産開始決定に対抗することは可能だ。会社更生と民事再生、破産のそれぞれの手続きは、要件を満たしている場合、前者から順に優先される。
 TSRのデータベースによると、暗号資産取引の(株)MTGOX(TSR企業コード:298819350)や紙製品製造の(株)近澤製紙所(TSR企業コード:830027858)が破産開始決定後、民事再生に移行している。
 MTGOXは不正アクセスでビットコインが流出し、約65億円の負債を抱えて2014年2月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請したが棄却され、4月に破産開始決定を受けた。だが、その後の暗号資産の急激な値上がりで換価の前提となる資産価値が破産開始時と大きく乖離し、2017年11月に一部債権者が東京地裁へ民事再生法の適用を申請。2018年6月に民事再生開始決定を受けた。このケースでのポイントの1つは、破産開始時は「債務超過」だったものの、その後「資産超過」にバランスシートの実態が変移したことだ。
 また、近澤製紙所は同業他社との競合や大口顧客との取引解消、コロナ禍の影響などで約27億円の負債を抱えて2023年9月、高知地裁から破産開始決定を受けた。しかし、その後の財産処分の過程で、資産の個別売却を上回る金額で事業一体を他社に承継する目途がついたため、2024年4月8日に高知地裁に民事再生法の適用が申請され、同月26日に開始決定を受けた。このケースでは、蓋然性の高いスポンサーの存在と一般債権者への配当原資の増額が民事再生手続きの中で強調された。

 船井電機の場合、破産開始時点から保有資産の著しい値上がりは期待薄で、清算価値を上回る弁済計画を立案できるかも不透明だ。固定資産の一部には所有権移転請求権仮登記や根抵当権の設定があり、固定資産の換価に重きを置いた弁済計画では、弁済率の向上に限界がある。このため、将来キャッシュフローにも着目した弁済原資の確保が必要になるが、すでに従業員は解雇され、レピュテーションにより事業価値の毀損が進んでいる恐れもある。
 こうした状況下で裁判所と債権者に訴求できる対抗案を導き出せるのか。道は限りなく険しい。

船井電機の東京本社

船井電機の東京本社

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

塗装工事業の倒産が急増、ナフサ供給の陰で ~ 1-4月の倒産、1989年以降で過去4番目 ~

塗装工事業の倒産は、2026年1-4月累計で48件(前年同期比26.3%増、前年同期38件)に達した。1989年以降、2002年の49件に次ぐ4番目の高水準だ。

2

  • TSRデータインサイト

居酒屋の倒産が過去最多ペース、1-4月は5割増 ~ 宴会・飲み放題の価格上昇、客離れ誘発も ~

2026年1-4月の「居酒屋」倒産は88件(前年同期比54.3%増)と急増した。1989年以降、同期間の倒産は2024年の59件を大きく上回り、最多を更新した。東京商工リサーチの企業データベースから1-4月の「居酒屋」倒産(負債1千万円以上)を抽出し、分析した。

3

  • TSRデータインサイト

2026年4月の「税金滞納」倒産40件 中堅以上の企業で増加、破産が9割超

2026年4月の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、40件(前年同月比100.0%増)で、1-4月の累計は70件(前年同期比12.9%増)となった。コロナ禍で、納税猶予などの措置があった2021年1-4月の8件の8.7倍と大幅に増加した。

4

  • TSRデータインサイト

あいちFGと三十三FGが統合に向け基本合意 メインバンク取引企業数が国内16位の金融Gに

金融グループの統合が加速してきた。あいちFG(あいち銀行、1万1,302社)と三十三FG(三十三銀行、7,544社)が経営統合に基本合意したと発表した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

TOPへ