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2023年「税金滞納」関連倒産 55件に急増 前年の3.0倍増、納税に寄り添った支援も求められる

 2023年(1-12月)「税金滞納」関連倒産


 2023年に「税金滞納(社会保険料を含む)」を一因とする関連倒産は、55件(前年比205.5%増)と前年の3.0倍に増加した。政府はコロナ禍の支援として納税猶予や資金繰り支援を進めるなか、「税金滞納」が引き金になった倒産は2020年28件、2021年17件、2022年18件と低水準にとどまっていた。だが、支援策が終了・縮小し、猶予期間の終了や手元資金が枯渇した企業を中心に2023年は急増が際立った。

 企業などが一定期間、税金を滞納すると金融機関や取引先(販売先など)に取引照会通知が届き、税金滞納が知られてしまう。これに伴い取引先は、取引の先行きや債権回収を不安視し、取引の抑制や解消に動く可能性が高まり、滞納企業のレピュテーションリスクが広まりやすい。
 コロナ禍から経済活動が本格再開するなか、ゼロゼロ融資の返済開始や物価、人件費など企業のコストは上昇し、収益が悪化している。税金の滞納や遅延が続く企業は、もともと資金繰りに余裕を欠いた企業が大半なだけに、納税がより資金繰りをひっ迫させる要因ともなりかねない。
 最近は社会保険料の滞納も目立つ。借入返済より納税を優先する企業も多いため、借入返済はリスケで対応するが、社会保険料は金額が嵩むだけに対応に苦慮する金融機関もある。
 納税は国民の義務だが、税金を滞納している企業の納税意思や実現性、納税方法をいま一度、確認し寄り添った支援も重要だろう。

※本調査は、「コンプライアンス違反」関連(建設業法、貸金業法などの業法違反や金融商品取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給など)のなかから、「税金滞納」関連をまとめて集計・分析した。

「税金滞納」関連倒産推移(1-12月)


✔産業別は、10産業のうち、金融・保険業を除く9産業で前年を上回った。最多がサービス業他の17件(前年比183.3%増、構成比30.9%)。次いで、小売業の8件(前年ゼロ)、卸売業(前年比16.6%増)と運輸業(同250.0%増)が各7件と続く。

✔業種別は、一般貨物自動車運送業が6件(同200.0%増)で最も多い。燃料費の高騰や「2024年問題」を間近に控えドライバー確保のための人件費が上昇しているが、価格転嫁が進まず納税資金の確保も難しいようだ。以下、労働者派遣業4件(同33.3%増)、土木工事業とエステティック業、訪問介護事業が各2件(前年ゼロ)の順。

✔形態別は、最多が破産の51件(前年比92.7%増)で、2年連続で前年を上回った。構成比は9割(構成比92.7%)と、「税金滞納」関連倒産のほとんどを占めた。このほか、民事再生法(前年1件)と取引停止処分(同ゼロ)が各2件だった。

✔資本金別は、1千万円未満が31件(前年比210.0%増、構成比56.3%)。このほか、1億円以上4件(前年比300.0%増)、5千万円以上1億円未満2件(前年ゼロ)。

 「税金滞納」関連倒産は、資金力の乏しい中小・零細企業が多い。コロナ禍からの業績回復が遅れ、物価高で資金繰りが厳しさを増している。そのため、売掛債権などが差押えられた場合、すぐに事業継続が困難になる。また、取引先等への財産調査は、企業のレピュテーションリスクを引き起こしかねず、倒産の増勢に拍車を掛ける一因にもなっている。

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