• TSRデータインサイト

忘・新年会「実施予定率」は54.4% 企業の「忘年会離れ」が顕著

2023年「忘・新年会に関するアンケート」調査


 ことし5月に新型コロナウィルス感染症が5類に移行してから、初めての年末年始を迎える。コロナ禍で自粛が広がった忘・新年会だが、今シーズンの実施予定率は54.4%にとどまることがわかった。都道府県別では、最高は沖縄県の78.7%、最低は埼玉県で41.1%だった。
 企業主導の忘・新年会は参加人数が多く、客単価も高額になりやすく、二次会需要も期待される。実施動向は飲食店や食材、酒類の卸売など、関連業種の経営だけでなく、地域経済にも波及しかねない。本格的なシーズンを前に、飲食店や関連業種は、例年以上に地域動向や常連先の動きの見極めが欠かせない。

 企業の「忘・新年会離れ」が進んでいる。「コロナ禍前は実施していたが、コロナ禍の今回は実施しない」と回答した企業は21.8%にのぼった。その理由について、「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」が42.2%に達し、「忘・新年会が労働時間としてカウントされる恐れがあるため」も10.0%あった。
 コロナ禍で定例イベントが再考されたことに加え、ワークライフバランスやコンプライアンス意識の高まりも実施率に影響しているようだ。行動様式の変化や多様性、法令順守の意識は、企業や働く人の間で広がりをみせている。飲食店や関連業種もこうした世の中の変化を受け止め、新たな需要を呼び込む努力も求められている。

※ 本調査は、2023年10月2日~10日、企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,747社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.貴社は、2023年末の「忘年会」、または2024年初の「新年会」を開催しますか?コロナ禍前(2019年末の「忘年会」、または2020年初の「新年会」)との比較で回答ください(択一回答) 

◇今シーズンの忘・新年会 「実施する」は54.4%
 最多は、「コロナ禍前も実施しており、今回も実施する」の36.2%(4,747社中、1,721社)。また、「コロナ禍前は実施していなかったが、今回は実施する」は18.2%(865社)で、これを合わせた今シーズンに忘・新年会を「実施する」は54.4%と、かろうじて過半数を超えた。
 一方、「コロナ禍前は実施しておらず、今回も実施しない」は23.6%(1,122社)、「コロナ禍前は実施していたが、今回は実施しない」は21.8%(1,039社)で、今シーズンは「実施しない」は45.5%だった。
 規模別では、大企業の「実施する」は57.8%(596社中、345社)、中小企業は53.9%(4,151社中、2,241社)だった。

今シーズンの忘・新年会 「実施する」は54.4%

Q2.Q1で「コロナ禍前も今回も実施する」と回答された方に伺います。実施する理由は次のどれですか?(複数回答)

◇「従業員の親睦」が約9割
 コロナ禍前から変わらずに実施する理由を聞いた。
 最多は「従業員の親睦を図るため」の87.0%(1,716社中、1,494社)。次いで多かったのは「従業員の士気向上のため」が53.2%(913社)と半数を超えた。 
 過去の流れを踏襲する「会社の定番行事のため」は31.9%(548社)と3分の1に満たず、時代の変化がうかがえる。
 規模別では、「従業員の士気向上のため」と「会社の定番行事のため」が、大企業より中小企業が高かった。
 「その他」は、「協力会社との交流」(管工事、資本金1億円未満)、「OBの方々への状況報告もかねて」(紙製品製造、資本金1億円未満)など。

「従業員の親睦」が約9割

Q3.Q1で「コロナ禍前は実施、今回は実施しない」と回答された方に伺います。実施しない理由は次のどれですか?(複数回答)

◇「開催ニーズが高くない」が53.8%
 コロナ禍前から一転し、今シーズンは実施しない理由を聞いた。
 最多は「開催ニーズが高くないため」の53.8%(1,003社中、540社)。次いで、「参加に抵抗感を示す従業員が増えたため」の42.2%(424社)だった。
 規模別では、開催ニーズや従業員の抵抗感を挙げる割合は、中小企業より大企業が高かった。一方、費用面を理由とする割合は中小企業が高かった。
 「その他」では、「コロナまたはインフルエンザに感染する可能性がある」(ソフトウェア開発、資本金1億円未満)など、感染症への懸念を示す声も多く寄せられた。

「開催ニーズが高くない」が53.8%



 忘・新年会のシーズンを迎える。だが、実施予定の企業は54.4%と半数にとどまった。参考値ながら昨年同時期の実施予定は38.6%(2022年「忘・新年会に関するアンケート」調査、2022年10月28日公表)だったことから、新型コロナの5類移行で忘・新年会は復調しているようだ。
 一方、「コロナ禍前は実施したが、今回は実施しない」との回答は21.8%で、「コロナ禍前は実施せず、今回は実施する」と回答した企業の18.2%を上回った。コロナ禍を経て、徐々に企業の「忘・新年会離れ」が進んでいることも明らかになった。
 「コロナ禍前も今回も実施する」企業の9割近くが「従業員の親睦」を挙げたが、社員の意識の変化もあり、忘・新年会を親睦の行事とするのは早晩限界を迎えそうだ。円滑なコミュニケーション、仕事のモチベーションアップを目論む「飲みニケーション」は、岐路に立っている。



人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

銀行員の年収、過去最高の653万3,000円 3メガ超えるトップはあおぞら銀行の906万円

国内銀行63行の2024年度の平均年間給与(以下、年収)は、653万3,000円(中央値639万1,000円)で、過去最高となった。前年度の633万1,000円(同627万5,000円)から、20万2,000円(3.1%増)増え、増加額は3年連続で最高を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

タクシー業界 売上増でも3割が赤字 人件費・燃料費の高騰で二極化鮮明

コロナ禍を経て、タクシー業界が活況を取り戻している。全国の主なタクシー会社680社の2024年度業績は、売上高3,589億5,400万円(前期比10.6%増) 、利益83億3,700万円(同11.1%増)で、増収増益をたどっている。

3

  • TSRデータインサイト

「調剤薬局」 中小・零細はリソース不足で苦戦 大手は戦略的M&A、再編で経営基盤を拡大

 調剤薬局の大型再編が加速するなか、2025年1-8月の「調剤薬局」の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期と2024年同期の22件に迫る多さだった。今後の展開次第では、年間初の30件台に乗せる可能性も高まっている。

4

  • TSRデータインサイト

りそな銀行、メイン取引先数が増加 ~ 大阪府内企業の取り込み加速 ~

関西や首都圏で大企業から中堅・中小企業のメインバンクとして確固たる地位を築くりそな銀行。「2025年全国メインバンク調査」ではメインの取引社数は3メガバンクに次ぐ4位の4万511社だった。東京商工リサーチが保有する全国の企業データを活用しりそな銀行がメインバンクの企業を分析した。

5

  • TSRデータインサイト

メインバンク調査で全国5位の北洋銀行 ~圧倒する道内シェアで地域経済を牽引~

「2025年全国メインバンク調査」で、北洋銀行(2万8,462社)が3メガ、りそな銀行に次ぎ、調査開始の2013年から13年連続で全国5位を維持した。北海道に169店舗、都内1店舗を構え北海道内シェアは約4割(37.9%)に達する。

TOPへ