• TSRデータインサイト

信用保証協会の「100%保証融資」、約4割が利用 メイン行以外からの調達が約3割、金融機関の距離感に注目

「100%保証融資に関するアンケート」調査


 コロナ禍で急激な業績悪化に直面した企業の39.1%が、セーフティネット4号や危機関連保証など、いわゆる“ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)“の枠組みを活用して資金を調達したことがわかった。
 セーフティネット4号や危機関連保証など信用保証協会が100%保証する融資で、利用した金融機関はメインバンク以外が28.3%にのぼった。コロナ禍では官民金融機関を問わず、幅広い窓口で資金ニーズを支えた構図が裏付けられた。

 コロナ禍で矢継ぎ早に打ち出された資金繰り支援のうち、信用保証協会の100%保証の枠組みの利用状況を探るため、10月2日~10日にかけてアンケート調査を実施した。
 100%保証融資の利用率(企業規模問わず)は39.1%で、ほぼ4割に迫った。業種別の最多は、タクシー業を含む「道路旅客運送業」で70.0%に達した。また、100%保証融資の調達先について「メインバンク以外」が約3割にのぼった。緊急避難的な資金ニーズに「面」で対応した状況がうかがえる一方、100%保証融資が金融機関には新規開拓のツールになった可能性もある。
 コロナ禍で資金調達により急場を凌いだ企業は「自立・自走」が重要になる。これを支える金融機関の役割が重要になるが、100%保証融資をメインバンクから調達した企業の83.1%、メインバンク以外から調達した企業の73.6%が、資金調達の前後で金融機関の対応に差を感じないと回答した。現時点ではすべての企業で返済が始まっておらず、今後の注目点になるだろう。
 コロナ禍では、企業は100%保証融資を通じてメインバンク以外の金融機関と接する機会が増えており、金融機関の伴走支援への本気度が問われることになる。

※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。このため、信用保証協会が対象とする(中小企業信用保険法で定める)定義とは異なる。
※本調査は、2023年10月2日~10日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,902社を集計・分析した。


Q1.コロナ禍(概ね2020年2月)以降、信用保証協会が100%を保証する融資を調達しましたか?(択一回答) 

中小企業の43.3%が「調達した」
 信用保証協会が100%保証する融資で資金を「調達した」との回答は39.1%(4,902社中、1,918社)、「調達していない」は60.8%(2,984社)だった。中小企業では「調達した」が43.3%(4,285社中、1,856社)、「調達していない」が56.6%(2,429社)だった。
 「調達した」と回答した企業の業種(全企業、業種中分類、母数10以上)で最も構成比が高かったのは「道路旅客運送業」、「調達していない」では「政治・経済・文化団体」だった。

中小企業の43.3%が「調達した」

Q2.Q1で「調達した」と回答された方に伺います。その融資を調達した金融機関はコロナ禍の直前時点で貴社のメインバンクでしたか?(択一回答)

コロナ禍前も「メインバンクだった」は7割
 「メインバンクだった」は71.6%(1,887社中、1,352社)、「メインバンクではなかった」は28.3%(535社)だった。新たな取引先の開拓を進める金融機関は、100%保証融資を積極的に活用してアプローチしていた可能性がある。
 「メインバンクだった」と回答した業種(全企業、業種中分類、母数10以上)の上位は給与水準の業界平均が比較的低位だったり、コロナ禍の影響を受けやすい先が目立つ。金融機関はコロナ禍初期に業種や企業ごとに緊急度を判断して支援したことが影響した可能性がある。

コロナ禍前も「メインバンクだった」は7割

Q3.Q2で「メインバンクだった」と回答された方に伺います。当該融資(信用保証協会が100%保証する融資)の調達後、メインバンクの対応に変化はありましたか?(択一回答)

「良化した」は13.6%、「悪化した」は3.2%
 回答で最も多かったのは、「特に差は感じない」で83.1%(1,343社中、1,116社)だった。「かなり」と「若干」を合計した「良化した」は13.6%(183社)、「悪化した」は3.2%(44社)だった。業種別(業種中分類、母数10以上)では、「飲食料品小売業」が「良化した」でトップ。「悪化した」は「家具・装飾品製造業」がワーストだった。

「良化した」は13.6%、「悪化した」は3.2%

Q4.Q2で「メインバンクではなかった」と回答された方に伺います。当該融資(信用保証協会が100%保証する融資)の調達後、その金融機関の対応に変化はありましたか?(択一回答)

「良化した」は16.3%、「悪化した」は4.3%
 トップは、「特に差は感じない」の73.6%(532社中、392社)。「かなり」と「若干」を合計した「良化した」は16.3%(87社)、「悪化した」は4.3%(23社)だった。
 業種別(全企業、業種中分類、母数10以上)では、「技術サービス業」が「良化した」でトップ。「悪化した」は「生産用機械器具製造業」がワーストだった。

「良化した」は16.3%、「悪化した」は4.3%

Q5.Q1で「調達していない」と回答された方に伺います。コロナ禍以前と以後で融資取引のある金融機関の対応に変化はありますか?複数から資金を調達している場合は金額が最大の金融機関を念頭に回答ください(択一回答)

「良化した」は10.5%、「悪化した」は4.8%
 「特に差は感じない」が84.6%(1,799社中、1,523社)だった。「かなり」と「若干」を合計した「良化した」は10.5%(189社)、「悪化した」は4.8%(87社)だった。
 業種別(全企業、業種中分類、母数10以上)では、「不動産取引業」が「良化した」でトップ。「悪化した」は「宿泊業」がワーストだった。

「良化した」は10.5%、「悪化した」は4.8%

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ